atopic掲載記事

「女のしんぶんI(アイ)」 2010年4月25日掲載(全文)

縁あって「atopic」(注)が主催する、治らないアトピー性皮膚炎で悩む人や家族に向けた講演会を聞きに行った。

食事が心と身体を作る

3月21日の午後、一人で参加する20代・30代や子どもを連れた母親・夫婦などで満席の千葉市生涯学習センター大研修室では、やわらかい空気の中でプログラムが展開された。講師は佐藤健二さん。阪南中央病院皮膚科部長で、「ステロイドを使わない・保湿しないことで治療できるアトピー性皮膚炎がある」と確信して治療に携わる医師である。もう一人の講師は堺市で開業する小児科医の佐藤美津子さん。「食事が身体と心も創る。アトピー性皮膚炎の乳幼児にも美味しく味付けした食事を食べさせよう」と語った。

治療体験や苦難報告

この企画は患者とその家族が手弁当で進めており、今回は9回目。「苦しんだ末にこの治療方法に出会えた幸運を実感している自分たちが、これを未だ知らない患者さんに伝え、早くよくなってもらいたい」との思いで、日本各地で年に数回実施している。

講演の後、患者自身や幼・小児患者の保護者による体験報告があり、聞き入る参加者の真剣な眼差しが印象的だった。自らのアトピー性皮膚炎の発症、治療の変転、苦悩、改善などの実体験報告が関心ある人々を引き付けるのは当然であろう。

治療する医師にも要望

「atopic」の運動の重要な目的はもうひとつ。日本皮膚科学会およびアトピー性皮膚炎の治療に携わる医師に対する要望を掲げ、これを実現させることである。

「標準治療を中止して良くなるアトピー性皮膚炎があること」「ステロイド、プロトピック、保湿剤に対する依存症が存在すること」「小児に対するステロイド治療を可能な限り避けること」などを皮膚科学会の示す「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」と「標準治療」の中に記載することを求めている。治療に当たる医師に対しては、ガイドラインと標準治療だけに固執せず、脱ステロイド・脱保湿によって良くなる患者が存在することを認め、その治療を採用してもらいたい、と切望している。

小児アトピー性皮膚炎患者の多数が2歳までに自然治癒する、にもかかわらずステロイドを使わせ続ける医者は多い。それがステロイド依存症の成人患者を生み出しているのではないかとの問題提起の背景には、治療を受けた患者の治癒実績があった。

「標準」「基準」「ガイドライン」は絶対ではないのに、これに固執する人は少なくない。大方の医師もそうなのだろうかと思いながら話を聞いた。

私はこの日、自分の生活に精一杯であっても他人のために何かをしようとする人々がここにもいる、と気持ちを明るくして会場を後にした。

※次回開催は5月29日(土)13時35分から。新潟大学駅南キャンパスA・B
定員110名、先着順(予約不可)参加費無料、の案内があった。(門川淑子)

(注 アトピック 治らないアトピ-性皮膚炎に対する脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿を広げる会)

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