2012.7.15レジュメ(佐藤健二)

 

治療成績、今昔

昔:大人までに84%消失

今:大人までに20%消失、65%改善(=治っていない)

ガイドラインは

世界中の医学論文から最も信頼できる科学的根拠・結論に基づいて作成

一般的には医療をあるレベル以上に上げる

型通りの医療を進めよとは言っていない

ある治療法を推奨しても、実際の治療では患者にとって最良の方法を選ぶ検討の叩き台、目安

2009年日皮会アトピーガイドラインの第一選択治療

疾患そのものを完治させうる薬物療法は無い。対症療法を行うことが原則

炎症に対する外用療法:現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス(プロトピック)である

予後(項目さえなし)

一般に慢性に経過するも適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患である

皮膚科専門医のガイドライン認識

指針として扱い自己裁量権あり 86%の皮膚科医

医師による現実の対応

ガイドラインあるいはそれを認めた私の治療に従わないのは良くない患者だ。正しい治療内容を知らない無知な患者は相手にしたくない、しなくていい。従わないなら今後来なくていい。ほとんど診察なし。

古江論文、重症度の変化

Furue M et al, Br J Dermatol 2003; 148: 128-133

6ヵ月のステロイド治療の結果:1240人の重症度変化

改善38%、変化なし59%、悪化3%

1/3改善、2/3不変と悪化、治癒なし

アトピー性皮膚炎、正しい治療がわかる本」(法研、2008年)九州大学皮膚科、古江増隆著

寛解(かんかい):アトピー性皮膚炎では、かゆみや炎症などがほとんどなくなり、日常生活に支障が生じなくなった状態をいいます。この状態が治療の目標となります。

治療計画:治療の終了または継続

①2歳未満:かゆみや皮疹がほとんどなくなり、保湿外用薬だけで過ごせるようになったら、これが寛解です。

②2歳から12歳未満:かゆみや皮疹がほとんどなくなり、保湿外用剤やタクロリムス外用薬だけで過ごせるようになれば寛解です。

③13歳以上:かゆみや皮疹がほとんどなくなり、保湿外用薬やタクロリムス外用薬で過ごせるようになったら寛解です。

自然治癒忌避治療

製薬企業が一番喜ぶ

東大皮膚科外来患者の年齢分布

高度経済成長期の1976年までは変化なし

それ以降強力ステロイド開発期間に劇的変化

治りにくいアトピーが分かったきっかけ

2歳男児、「乾癬」、ステロイド全身外用、激しい落屑、成長障害(低身長、低体重)ステロイドとアズノール軟膏中止で皮疹消失 ステロイド・保湿中止で皮疹が消失

成人型アトピー性皮膚炎(AD)とは

ステロイド未使用の本来のアトピー性皮膚炎に外用ステロイドの副作用である依存症が合併した病態

脱ステロイドで必要なこと

ステロイド離脱(外用、内服、吸入、点鼻、点眼)

保湿離脱(軟膏、水、布団、包帯、晒し、痂取り)

水分制限(食事以外に約1200ml/日水分摂取)

食事制限無し(高蛋白、何でもバランスよく)

理学療法(痛みがなくなれば散歩から速歩へ)

規則正しい生活(起床、食事、学習仕事、就眠)

周囲の人は「掻くな」と言わないこと。爪切り励行

精神的ストレスを減らすこと、別れ話、入学試験

阪南中央病院入院アトピー患者の治療成績

目標:社会復帰(仕事、育児、通学)可能状態まで改善

3歳以上のアトピー360人、ステ再開2人、治療中断7人、脱ステ改善率97.5%

3歳未満のアトピー34人、内ステ歴22人

ステロイド外用後の皮膚内濃度

            0日(%)    4日後(%)

Ⅱ群(very strong)    100      3-13

Ⅳ群(mild)          100      17-30

4日後のステロイド濃度約10%は血液中の約10倍。Strongestのステロイドでは人間の体が作るステロイドの約1000倍の強さ。Strongestの場合、初日のステロイドの強さは 100 x 1000 = 100,000 (十万倍の強さ)

ステロイド外用と脳幹との関連

成長抑制 発汗異常 乳汁分泌異常

抗利尿ホルモン異常高値 生理不順

脱保湿に思い至った症例

全身アトピーにステロイド、改善なく萎縮等の副作用

ステ中止か最強ステ使用?。ステ中止とワセリンを選択

離脱症状の後、紅斑・瘙痒・爪幅掻破痕改善せず

乾燥肌では掻破痕ができにくいことに気付く

乾燥が皮膚を強くするとの期待→脱軟膏→皮膚改善

保湿依存症とは

皮膚を保湿しないと一定の安定状態を保てない

過剰な水分が皮膚に存在する状態が「正常」

ステロイド中止で保湿継続はステロイド外用と同様状態

いろいろな保湿方法

①軟膏、クリーム ②超酸性水、化粧水 ③オリーブオイル、ホホバオイル、馬油 ④全身をガーゼ、包帯、晒しで巻く ⑤常に布団の中に居る ⑥長い頻回の入浴 ⑦化粧、日焼け止め ⑧かさぶたを擦り取ってツルツルにする  ⑨滲出液をぬぐい取る ⑩水分摂取過多

残ったアトピーの改善方法

自然治癒促進

バランスの良い食事を規則正しく、塩分少なめ、夕食は早く翌朝まで飲水なし

1週3回1日30分の運動、リラックス

皮膚のことばかりを考えない、ストレスを集中させない

乳児アトピーの治りにくい要因

1)ステロイド外用治療

2)アトピーのアレルギー(マーチ)原因説

離乳食が怖く食物制限で栄養不足

頻回母乳で母乳不足と母の睡眠不足

低蛋白血症で治癒機転が働かず

3)掻破抑制によるストレス

掻破防御包帯の皮膚圧迫痛と暑さ

4)普通の育児ができない、母子不分離

乳児治療の基本

食事間隔3時間、4か月過ぎればより高蛋白食(ミルクから離乳食へ)、満腹まで食べる、掻破抑制禁止と自己による掻破、保湿は漸減、入浴・石鹸抑制、早期に皮膚感染症に対処、傷にガーゼ保護、眠前に止痒剤内服、運動や外出、母子分離、湿疹のない子として育児

 

患者に学んだ成人型アトピー治療
脱ステロイド・脱保湿療法
佐藤健二 著 つげ書房新社 2000円

ステロイドにNo!を 赤ちゃん・子どものアトピー治療

佐藤健二、佐藤美津子著 子どもの未来社 1500円