脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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アトピーの原因について、まだまだ不明

2月 1st, 2009 | Posted by 佐藤 健二 in その他

アメリカ研究皮膚科学会の雑誌の最新号に出ていた論文の紹介
「アトピー性皮膚炎:自然免疫の生涯によって起こっている病気?」
Atopic dermatitis: A disease caused by innate immune defect?
Benedetto AD et al: Journal of Investigative Dermatology 2009; 129: 14-30
 アトピーはこの半世紀間、有病率が増えている。アトピー性皮膚炎の発症と重症度に自然免疫の障害が影響している事を示唆する研究結果が増えている。自然免疫とは、皮膚で作られる抗菌作用のある蛋白質の分泌、皮膚への白血球やリンパ球(NK cell)などの補充、白血球が細菌を食べる能力などです。これらの機能が落ちることによって黄色ブドウ球菌や単純ヘルペスの感染症が起こりやすい、またこれらの病原性微生物によって元々バリアー機能が落ちている皮膚が傷害され、更に細菌やアレルゲンが皮膚を通り易くなって皮膚の障害が起こり、皮膚炎が起こる。またIgEの産生が増え、アトピーが悪化する。
 このように説明しようとしています。
 このような理論だと、黄色ブドウ球菌や単純ヘルペスが感染するとアトピー性皮膚炎の全体がひどく悪化してもよさそうなのに、感染部分だけが悪くなり、感染が治癒すると元の湿疹の状態になります。
だから、アトピー性皮膚炎の悪化と皮膚感染症の悪化とは別のものと考えるべきだと思います。
 個々の引用論文を調べたわけではないのでなんとも言いようがないのですが、人を対象として調べた場合、多くの人はステロイド外用歴のある方だと思います。すると、ステロイドの影響はどのように除外したのかが問題になります。影響を除外できるかどうかも問題です。だから、自然免疫にステロイド外用剤が与える影響をきちんと検討しないと何を調べているのか分からないことになります。
 研究は皮膚しか見ていません。ステロイド外用により生じてくると考えられる内分泌異常、生理不順、発汗異常、抗利尿ホルモン分泌異常などもアトピー性皮膚炎患者の重要な問題点です。これは、皮膚だけを見ていても全く解決しません。また、アトピー性皮膚炎が大人になるまでに治っていくという経過についてはこの説でどのように説明するかは全く取り付く島はありません。依然として、私の本の中で述べたように、アトピー性皮膚炎の原因についての研究はまだほとんど信頼できるものはないといえるでしょう。

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