脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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 NHKテレビが2009年9月5日午後9時にアトピー性皮膚炎について放送しました(すくすく子育て、アトピー性皮膚炎とのつきあい方)。どこかの小児科の先生が解説されてました。原因はアレルギーとバリア機能異常で、食事アレルギーとアトピー性皮膚炎は重複して罹患している患者もいるが一部であると言われてました。ここまでは当たり障りのない話でした。食事アレルギーを強調されなかったのは良かったかな、と思います。治療になると突然変わり、ステロイドを上手に塗れば何ら怖くない、このように、はじめはきっちり良くなるまで塗って、よくなれば間をあけて塗ればよい。怖がって症状が治まらない間に止めるからうまく治療できないのです。そして、体をきれいにするために一日に2-3回石鹸でしっかり洗って、その後でしっかり保湿剤を塗ればよろしい。そうすればここに出ていただいている患者さんのようにこんなにきれいになります、とのことでした。
 患者さんの皮膚をよく見ると、かすかに委縮が認められました。また、ステロイドをつけて起こってくるピンク色の白色皮膚描記症が額に見られました。ああ、この子はこの後どうなるのかな、と大変かわいそうに思いました。
 脱ステロイドについて皮膚科学会のお偉方はエビデンスがないとしばしば批判されておられますが、先日、2008年に皮膚科学会から出された「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を見ますと、「その他の特殊な治療法については、一部の施設でその有効性が強調されているのみであり、科学的に有効性が証明されていないものが多く、−−−その健康被害の面に留意すべきである」と述べ、直接脱ステロイドとは言わずに婉曲に責任を追及されないように脱ステロイド療法を批判されてます。それではこのNHKで推奨されているステロイド外用剤はどうかと見てみると、「現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に沈静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏である。」と有効でかつ安全であると言いきっています。科学者なら誰でも「ではどのエビデンスで?」と思うでありましょう。私も引用文献を探しました。しかし、まったく引用されていませんでした。ということは有効性と安全性を証明する根拠エビデンスはないということです。自信を持って述べている内容を証明する文献がないのです。私はやはり私が考えていたことが当たっていたと自信を深めるとともに、学者としては「こんな学問的に恥ずかしいガイドラインを皮膚科学会は作らないでほしい」と強く思うとともに、皮膚科学会会員の一員として悲しくなりました。
 話を小児科の先生に戻しますが、小児科の先生方は自分たちがステロイドで治療した患者が20年後にどのようになっているかはほとんど知る方法がないと思います。皮膚科医はそれを見ています。小児期に「ごく軽いアトピー性皮膚炎だからステロイドを塗っても将来大丈夫」と太鼓判を押されてステロイドを塗った人が大人になって全身真っ赤なステロイド依存症になって苦しんでおられるのです。子供のアトピー性皮膚炎を治療するお医者さんはまずはステロイドを使わないで治療をするように努めていただければありがたいです。
 湿疹のあるお子さんをお持ちの親御さんは、まずステロイドを使わずに治療していただくようにお医者さんにお願いしましょう。その時には、このブログの2009年6月6日の(患者から提出するアトピー性皮膚炎治療のインフォームドコンセント)を利用してください。これをコピーして診察の前に医師と看護師に必ず見せてください。最近、お医者さんには話をしても、処置室へ行くと看護師さんが問答無用でステロイドを塗られているという話をしばしば聞くようになりました。ぜひ自分たちの納得のいく治療をしていただけるようにしましょう。そのためには少しの勇気が必要です。ステロイド外用薬の有効性と安全性は特に長期にわたる外用についての根拠はないのです。短期間できれいになることの誘惑に負けないようにしましょう。
 そうそう、NHKテレビすくすく子育て、アトピー性皮膚炎とのつきあい方に出ていた男性俳優ショウエイさんの表情が大変気になっていました。お医者さんのお話に相槌を打っておられましたが、常に何かに遠慮するような何かを気にしているような表情でした。この男性俳優さんは本当のところを御存知なのかもしれません。真実を覆い隠すための放送にはやはり問題を感じておられるのでしょう。私の受け取り方は間違っているでしょうか。