脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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安藤直子、「世界」論文について

10月 16th, 2009 | Posted by 佐藤 健二 in 医学論文

以下の文章を岩波書店、雑誌「世界」編集局へ送りました。
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雑誌「世界」安藤直子論文(深刻化・長期化・難治化するアトピー、求められる患者主体の医療、世界、2009年10月号、210-219頁)を読みまして感じたことを書いてみました。ご一読ください。
安藤直子氏の雑誌世界に掲載された論文(深刻化・長期化・難治化するアトピー、求められる患者主体の医療、世界、2009年10月号、210-219頁)が大きな注目を集めることは、アトピー性皮膚炎に関して大変な問題が存在することを意味する。そして、この問題はそのほとんどがアトピー患者により何年も前から発せられている。安藤氏の場合でも、ステロイドを止めることによって、すなわち脱ステロイドをすることによってよくなっており、日本皮膚科学会の治療ガイドラインに大きな問題点のあることを指摘していると私は考える。
日本皮膚科学会は2008年、2009年と2年連続で「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」(以下、ガイドライン)を日本皮膚科学会雑誌に掲載した。上記問題に対して日本皮膚科学会がどのように反応したかを見るに、これを正面からは全く取り上げておらず、唯一、ガイドラインの「はじめに」の中に「アトピー性皮膚炎は‐‐‐患者への十分な説明や治療へのコンプライアンス・アドヒアランスを考慮すべき疾患」と述べているにすぎない。なぜこの表現が皮膚科学会の反応であると言えるかは、「患者への十分な説明や治療へのコンプライアンス・アドヒアランスを考慮すべき」なのはすべての疾患において言えることであり、わざわざこのような表現を取らなければならなかったことは何らかの事情が存することを暗に認めているが故なのである。しかし、「治療へのコンプライアンス・アドヒアランス」とは、私なりに訳してみれば治療の承諾と継続であり、ガイドラインを認める治療を行うかどうかそれを続けるかどうかを問うているだけであり、「はじめに」の終わりに「患者の意向を考慮して」とは述べているが、患者の意見を聞く意思は全くないことを意味している。そのことは、2009年ガイドラインの「図3 アトピー性皮膚炎:治療の手順」の中に「保湿性外用薬、外用法の具体的な説明、適正治療に向けての患者教育」と記されており、ステロイドを使わない治療を希望するかどうかを患者には全く問わず、ガイドラインに沿った治療を推し進める教育のみが考えられている。勿論、この治療の手順の中には脱ステロイド療法は全く含まれていない。そのかわり、ガイドラインの「Ⅴ.治療」の第6項目の「その他の治療法」中に名指しではないが、脱ステロイド療法は「科学的に有効性が証明されていないものが多く‐‐‐むしろ、その健康被害の面に留意すべきである」と述べ、脱ステロイドは排除すべき治療に含まれているのである。
ではステロイド治療が根拠あるものであるかどうかについてガイドラインはどのように述べているであろうか。ガイドラインで治療方法の第一番に述べられている言葉は、「現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に沈静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏である。」と有効でかつ安全であると断言している。しかし、文献はまったく引用されていない。治療における証拠はインターネットに出していると述べてはいるが、上記断言のところには引用文献を示していない。このことは有効性と安全性について自信を持って示しうる根拠を持ち合わせていないということである。
安藤氏の論文は、内容的には、一方で、不確かであるステロイド治療を最大限に持ち上げ、他方で、苦しい中多くの患者が自分の体を張って獲得した脱ステロイドによるアトピーからの解放を不適切治療であるとして排除する日本皮膚科学会への痛烈な批判、アトピー治療に関して患者無視の治療を進める日本皮膚科学会への適切な批判である。雑誌世界が権威ある立場の者の文書だけでなく、権威から排除されている立場の者の文書(安藤氏の論文)を公平に掲載された勇断に感謝するとともに、今後も公平な出版活動に邁進されることを期待してお礼の言葉とさせていただきます。
なお、私は成人型アトピー性皮膚炎患者さんを脱ステロイド脱保湿療法によってその疾患から解放することのお手伝いをさせていただいている皮膚科医で、阪南中央病院に勤めております佐藤健二です。私には著書「患者に学んだ成人型アトピー治療、脱ステロイド・脱保湿療法」(つげ書房新社、2008年)があります。

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コメント(3)

  • kodoku

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    先ほど、地域連携室にお電話し、近くなったらまた電話して入院できるか確認することになりました。
    その間娘と楽しく運動します。
    お忙しい中お返事いただき、本当にありがとうござました。

  • 佐藤健二

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    了解いたしました。地域連携室へ連絡を入れておいてください。なお、病院の正月休み中は診察はできないことはご了承ください。

  • kodoku

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    8月4日に佐藤先生の病院に伺った東京の東村山市の者です。
    中2に娘がアトピーで、私は母です。
    あれから2か月以上たちましたが、一向によくなりません。
    ご注意いただいた爪は、2日に一度はやすりで丸くしています。
    学生なのである程度は規則正しく、食事も魚、野菜中心のわりと良いものと思っています。
    でも運動は本人やる気なく、私も忙しさにかまけ見てられませんでした。
    またはがしぐせも治らず、夜中ガーゼや包帯を巻いていたこともありますが、無意識に外しているようで、一時期は私が2時間ごとに起きて巻きなおしましたが、続きませんでした。
    夫には「いつ治るんだ」と言われ、娘は治りたいが努力はしない状態で、私はとても孤独で、ときどき自分の腕をかんだり大きな声を出してしまいます。
    そこで私としては娘を冬休みの期間、阪南病院に入院させていただけないかと思っています。
    もうステロイド治療には戻れないのに、苦しいです。
    本人も了解していますので、どうかお願いします。



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