脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
Header

古江論文批判 3

2月 6th, 2011 | Posted by 佐藤 健二 in 医学論文

古江論文批判 3
Furue M et al
Clinical dose and adverse effects of topical steroids in daily management of atopic dermatitis
British Journal of Dermatology 2003; 148: 128-133
アトピー性皮膚炎の日々の治療における外用ステロイドの臨床用量と副作用

「調節controlled状態」の欺瞞
1.会社お勧めの皮膚科医のアトピー治療
先日、ある患者が、会社の産業医にアトピー性皮膚炎の治療の相談に伺った。その患者は、ほとんど全身に紅斑のある最重症症例である。産業医は有名な皮膚科医受診を勧めた。その皮膚科医を受診し、「自分はステロイドを中止できるような治療を希望するがどのような治療をしていただけるのか。」と尋ねた。その医師は、「ステロイドを用いた標準治療で行います。」との返事であった。「いつまで外用を続ければ良いのか。」と質問すると、「一生です。」との返事が返ってきた。2009年版日本皮膚科学会のガイドラインには、予後について、「一般に慢性に経過するも適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患である。」とある。この正直な皮膚科医は、ガイドラインが控えめに表現している本当の中身を教えてくれたのである。要するに、ステロイドやプロトピックを外用して、「神様まかせ」で自然寛解を「期待」はするが、自然寛解が「起こる」と断言できないのである。標準治療とはそのような治療なのである。

2.Furue論文で重症度変化無しの率
自然寛解が「起こる」と断言できず、コントロールされた状態に維持されればよいと考える原因は、Furue論文の重症度の変化の無い率を見れば理解できる。6か月のステロイド治療で重症度が全て低下したのは、幼児の最重症2例のみで、幼児のその他の重症度や小児例や青年成人例では、全て出発時点と同じ重症度の患者がいる。増悪した症例(幼児7例、小児16例、青年成人12例、合計35例)を除いて、重症度の変化の無い患者の率を計算してみた。幼児では125/204=61%、小児では302/531=57%、青年成人では305/503=61%であり、合計では732/1238=59%である(ちなみに増悪例を含めると62%となる)。59%という数字は、ほぼ5人に3人は良くならないということを意味する。少し臨床経験を積んだ皮膚科医は、半年ほどステロイド治療をして良くならない症例は、おそらくアトピー性皮膚炎以外の疾患でも、6カ月を超して治療しても良くならないと考えるであろう。

3.患者は「調節controlled」状態に満足できるであろうか
上記皮膚科医に代表される医師は、悪くならなければ(重症度が増加しないなら)治療を続けていて意味があると考えている。患者はそれで満足であろうか。患者は、何も治療しない状態で日常生活できることを望む。毎日、朝や朝夕、全身に塗り薬を塗ることの手間や、塗った後のヌルヌル感は、医師が考える以上に耐えたくない事柄である。患者が望む状態にならないことに皮膚科学会は責任を感じるべきであるのに、「良くなるかもしれませんね(=自然寛解も期待される)」と無責任に言い切って平然としていることは、私には理解できないことである。

4.1カ月弱で社会復帰可能状態に
上記患者は、一生塗り続けなければならないとの返事に落胆して阪南中央病院を受診した。ステロイドを含め全ての外用を中止して、平均より早く、ほぼ一ヶ月で痒みと色素沈着は残るものの社会復帰しうるまでの状態に改善してしまった。産業医は、自分の指示と全く逆の治療で良くなってしまったことに驚きを感じると共に、自分の考えの間違いを事実でもって証明されたことへの反発、屈辱感は相当大きいと推察される。

5.65%の人が完治する治療を探すべきである
昔の研究では成人までに84%の人が完治していた。最近では20%の人しか完治せず65%の人は改善状態にとどまっている。改善状態とは、表現は良さそうに感じるが実際は治っていないことである。患者は完治することを願っている。それは何も治療しない状態で生活できることである。「調節controlled状態」で満足することではない。65%の人を完治に持って行くには、控えめな表現をするなら、私が提案している脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿は試してみていい方法であろう。しかし、古江氏が2005年に著した書物の中に記されているような、10倍量のステロイドを塗るという治療法(「古江論文批判 2」を参照)でないのは明瞭であろう。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 You can leave a response, or trackback.

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA