脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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日本皮膚科学会中部支部学術大会の報告

11月 23rd, 2011 | Posted by 佐藤 健二 in 学会

日本皮膚科学会中部支部学術大会の報告

 2011年11月19日に上記学会で口頭発表をしました。その内容の概略とその後の質疑応答につき報告させていただきます。正確な発言内容を記憶しているわけではないので文責は佐藤にあります。
 学会抄録は以下の通りです。
「脱ステロイド・脱保湿により改善した成人型アトピー性皮膚炎3症例
阪南中央病院 皮膚科 佐藤健二
 日皮会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、ステロイド外用剤とプロトピックの有効性と安全性を立証する文献は不提示である。ガイドラインに影響のある古江氏の論文(BJD, 2003)では、6か月のステロイド治療を行い、治療開始時と終了時の皮疹の重症度比較をしている。重症度が改善した率は38%、変化無しは59%、増悪は3%で、治癒者はなかった。ステロイド治療では治りにくいことが分かる。当院では治りにくい患者に脱ステロイド・脱保湿療法を行っている。その主要な内容は、ステロイド離脱、保湿離脱、水分制限、食事制限なし、運動、規則正しい生活、精神的ストレス削減、掻くなと言わないこと、爪切り励行、止痒剤内服である。脱ステロイド・脱保湿後に一次的な増悪の後、著明な改善がみられた3名の患者の治療経過を供覧する。ガイドラインに、ステロイド外用治療で治りにくいアトピー性皮膚炎患者の治療として、脱ステロイド・脱保湿療法を含めるべきであると考える。」
 話の内容は大体以上の通りに行いました。症例は「第91回 阪南中央病院 健康教室、2011年4月23日、松原図書館2F集会室」で行った講演の症例と同じです。そして、スライドの最後に、「アトピー性皮膚炎のガイドラインには『ステロイド治療で治りにくい患者に脱ステロイド・脱保湿療法は有効な治療である』を入れるべきである」と更に「皮膚科入院施設は脱ステロイド・脱保湿療法を習得すべきである」を入れました。
 発表は制限時間より30秒ほどオーバーしました。
 終わると、会場の中央から一人の先生が意見を述べるために私の真正面のすぐそばにあるマイクの前に出てこられました。何と古江増隆先生(九州大学医学部皮膚科教授、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン最高責任者、上記の古江氏のこと)ではありませんか!。私は古江先生が会場におられることを全く知りませんでした。浜松医科大学皮膚科教授、大阪市立大学医学部皮膚科教授、岐阜大学医学部皮膚科名誉教授の少なくとも3名の方と尼崎医療生協病院皮膚科の玉置先生がおられるのは知っていましたが。
 第一声は「詳しく検討していただいて有難うと言いたいところですが」といつもの紳士的な言い方が終わったとたん、「脱ステロイドとはいったい何ですか、脱保湿とはなんですか」怒鳴りこみの質問と言うか、突然まくしたて始められました。「この論文はアクセプトされるのに3年かかりました。査読者の意見は、『日本のアトピー治療ではステロイド外用量が少ない。だから、成績が悪くて当たり前だ。』というものだ。この論文は治療成績がいい悪いということを言おうとしたものではない。ステロイド外用量の調査をしたのですよ。いいですか、大人や子供では6か月の平均でたった95gや45gしか使ってないんですよ(その場では145gとか言われたように思いましたが、原典を見て95と45にしました)。だから、もっと塗らなくてはならないんですよ。私の論文で成績が悪いと言っているが、ステロイドを塗ったら100%よくなると言う論文ぐらいいくらでもある。あなたは経過はどれだけ追ったのですか。何人の人が良くなったのですか。」と何処で答えを言っていいのやら困るほどに早口でまくしたてられました。入院患者ではですね、と答えようとすると「入院すればだれでも良くなることぐらい知らないのですか。そんなことは1900年の初め頃から分かっていますよ。」と言われたので、ではいったん増悪するのはどう説明したらいいのか、説明できないでしょう、と答えました。答えに窮したためでしょうか、何で言われたのか分かりませんが、「いくら入院患者でどうのこうの言ってもだめですよ。」と言われたので、第1例目は外来患者ですがと答えると一瞬詰まられました。しかし、「ステロイドを止めたらアトピーが良くなると言っているがそんなことはあり得ない。」と言われたので、私はこれまで一度としてストロイドを止めてアトピーが治ると言っていません、ステロイド依存性が治ると言っています、どちらかと言えば逆に、ステロイド依存性が治ればアトピーは出てくると言っているのです、といいました。
 ここで、発表の内容に対する質問で無いので、座長に、私がこのような発言は学会の場ですることではないように思いますが、というと、座長もうなずかれました。が、古江先生は脱ステロイドはけしからんなどと話し続けられました。たまりかねて、玉置先生が割って入るようにして、「わたしもステロイドを使わないでほしいと言われる患者さんにはステロイドを使わない治療をします。ステロイドを使った治療もします」と、言われました。しかし、古江先生は、今度は「脱ステロイドはステロイドを使う皮膚科医の治療を冒涜することだ。けしからん。皆さんそう思いませんか。」と後ろを振り向いて賛同を得ようとしました。しかし、古江先生の期待に反して、賛同の声は一つもありませんでした。私が気付いた範囲では、一人だけ首を縦に振っておられました。古江先生が余りにもまくし立てられたので、ほとんどの聴衆はあっけにとられて返事を忘れたのかもしれませんが、私の感じ方からすれば、ほとんどの人は賛同されなかったような気がしました。座長に促されて古江先生は元の席へ戻られました。
 次に兵庫県立がんセンターのK先生が発言されました。いつも通り声が小さかったのでほとんど聞き取れませんでした。症例を選んで脱ステロイドをするべきであるというようなことを述べられたのかもしれません。
 最後に岐阜大学医学部皮膚科名誉教授が質問されました。その質問は、皮膚科の学会としては本質的に重要な質問でした。「酒皶様皮膚炎ではないのか。言おうとしている皮疹はどんな皮疹なのか。区別して説明してほしい」と。質問が少しわかりにくかったこともありますが、これに対しての私の答えは少しまずかったと思います。次のように言うべきだったと思います。「酒皶様皮膚炎の定義は顔面の皮疹での定義で、顔面のステロイド依存性皮膚症である。酒皶様皮膚炎の場合はステロイドを塗ることによって安定している状態を記述している。ステロイド依存性皮膚症は、酒皶様皮膚炎を含めた概念で、全身の皮膚で起こっている『酒皶様皮膚炎』のことであり、皮疹の形態はどのような形でも存在するので特定の皮疹を示すことはできない」、と。座長が終了を宣言されました。
 机の上にあったタイマーから判断すると、私の発表に関して13分間の議論があったようです。ちなみに規定の討論時間は3分です。  以上。
 簡単な感想ですが、学会側はだいぶ焦っているようですね。だからテレビでプロアクティブ治療を頻回に宣伝するのでしょう。

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