脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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atopic 10周年記念講演会報告

 

東京で行われたアトピックの記念講演会は「非ステ・脱ステのアトピー治療には脱保湿と自然治癒力の養成を」と題して行われました。その内容をかいつまんでご報告させていただきます。

 

第一部 乳幼児患者の部

1.アトピック共同代表の菊池さんから参加者への挨拶とアトピックの活動の紹介がありました。

アトピックとは脱ステロイドをした患者と家族の会で、脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピックを拡げる会です。活動内容は講演会、ネット上のコミュニティーの運営、ガイドライン改訂運動、オフ会です。交流から生まれたものとしてぬまじりよしみ作の阪南脱ステ日記があり、ガイドライン改訂運動ではガイドラインに「患者の価値観や治療に対する希望も十分に反映して患者と協働して行わねばならない」を入れさせた。なお、脱ステは副作用に対する治療で、アトピーそのものに対する治療でないことを強調した。

2.4人の医師のリレー講演

①(佐藤健二)「非ステ・非プロトで難治化を防ごう」

アトピーに対する治療は、非ステ・非プロトが勝っていると思われるが、これはステロイド使用者との20年ほどの比較研究が必要である。ステロイドを使用するとステロイドに対する依存性が出現し、依存性を押さえるためにいつまでもステロイド外用を続けなければならないことが難治化の原因である。

②(佐藤美津子)「アトピーサ―ビスと食物アレルギー」

アトピーサービスとは、掻いてあげる、マッサージ、掻きだしたら抱っこやおもちゃであやすなどです。親は子どもの召使になり、振り回されている。0歳から親から離れて寝かし、アトピーサービスを中止すると自由時間ができる。

ピーナツと卵のアレルギーで証明されたが、早くから食べさせる方がアレルギーになることは少ない。湿疹があると経皮感作が多くなると言われているが、ステロイド治療しても負けず劣らずアレルギー感作は起こる。子どもが食物によるアナフィラキシーで死ぬことはほとんどない。

③(藤澤重樹)「食事、蛋白質の重要性」

特に重症時には、蛋白質・脂肪豊富な離乳食がいい。

アトピッ子の離乳食は4か月から、こうするとアレルギーと喘息の罹患率が減る報告もある。

ケトン体生活、すなわち糖質制限で蛋白質を多く摂ると、特に重症時には傷を治す材料であるアルブミンが多く摂られ治り易い。

食物繊維を多く摂り、それを腸内細菌が発酵させることにより短鎖脂肪酸を多く生み、エネルギー源となり皮膚にいい影響。

④(水口聡子)「幼児期の治療」

赤ちゃんの時にステロイドを外用し、幼児になって脱ステロイドを知った患者についての治療を述べる。食事は食べられるようになっているため、低蛋白や電解質異常、体重の低下などは心配しないでいい状態となる。食べることで皮疹が良くなることが理解できる。問題点は個別的:食べ方が下手。断乳の遅れと母子分離の不完全さ、運動不足。食物アレルギーがある子どもでステ使用者は対応が難しい。アレルギーはないがあると思っている子どもに対しては、救急病院内で食べさせて見る事を試しても良いし、何をもってアレルギーとするかを説明し、親のアレルギーに対する考え方を是正する。

(④の追加発言) 埼玉アトピッ子家族の会natureのKさん

6ヶ月からステロイド治療、3歳で脱ステロイド開始。保湿をしていたが、水口先生にかかり脱保湿追加。しかし色々民間療法を試す。良くならず、水口先生の「体重が増えたら良くなる」との言葉を思い出し、食べることに重点を置くと良くなり始めた。湿疹を子ども自身が治すようになるためには、親が肌のことを気にしない・何も塗らない・夜は別室で寝る・たくさん食べて体重を増やすことが大切。

スピーチ1 アトピっ子育児の会Iさん 「脱ステを通じて学んだこと」

ステロイドを止めたいと思った理由は、効きすぎる不安、医師によって違う使用方法への不信感、ステロイドでコントロールできずにいる成人アトピーの方々の存在でした。阪南中央病院に入院してしたことは、早期の離乳食開始とミルク摂取、症状に合わせた入浴、普通の育児でした。脱ステを通じて学んだことは、アトピーにとらわれない普通の育児をする大切さです。人には治癒力がある、赤ちゃんのアトピーは少しずつ良くなります。何が原因でアトピーになったかと考ええる必要はないです。生活に制約ばかりが増え親子ともども暮らしにくくなる。

スピーチ2 成人患者Maさん 「アトピっ子をもつお父さん・お母さんたちへ」

大人になったら治るからと言われステロイドを使い続けたが大人になっても治らなかった。薬を塗り続けることに疑問を持ち、20歳代終盤に脱ステロイド実施、運動の習慣化に取り組み数年で良くなった。40過ぎに仕事のストレスなどで再悪化しプロトピック使用。しかし、皮疹は全身に拡大。前回より激しい離脱症状に不安障害も出現。阪南中央病院に入院したが治りが遅く、綺麗になるまで居座ると開き直ると良くなっていった。今考えるに、1歳半の時にステロイドを使わなかったら40歳までステロイドプロトピックを使わなくて済んだのではないか。この症状は薬の副作用だろうと思う。

お父さんお母さんに伝えたいことは以下です。今の親御さんは脱ステの情報が得られてラッキーです。子どもがアトピーになったことを親の責任だと自分たちを追い詰めないでほしい。そして、孤立せず仲間と共に頑張ってほしい。

公開ディスカッション「あとぴっこ育児の小枝を集めよう」を企画し、①食事について②痒みについて③薬について④付き合いについて医師とスタッフより意見を出し合った。

まとめ アトピック共同代表遠藤 「私達ができること」

情報過多の中で何が正しいのかと迷っておられる方がおられると思います。そんな中で最終的に大切なのは、たくさんの情報の中から親御さんが選んでいく力をつけること。問題となる項目と関連のある事項をえらび、アトピー育児に与える影響を評価し、我が子にとってより良いと考える方を選択してほしいです。

アトピッ子は、決して不幸ではありません。「かわいそう」というフィルターを勝手にかけないように。お子さんがお母さんにしてほしいと一番望んでいることは、アトピーを治すことではなく子どもに笑いかけてくれることだと思うので、自分が子どもにその苦痛を与えてしまったとの罪悪感意識を手放してほしい。

atopicではステロイド依存性皮膚症を防ぐためには子どもの頃の治療法が大切だと主張していますが、その選択がしやすくなるよう、患者家族だけでなく、周りへ働きかけも重要だと考えその実現を目指して頑張っています。

終わりに 佐藤健二

この10年間でのアトピー関連での重要な発見は、皮膚だけでステロイドホルモンができることが分かったこと、食物アレルギーは除去しない方が起こり難い、皮膚を通した食物アレルギー感作があること、ステロイドを使わない治療が使う治療より成績が良かったことが分かったことである。

治療に関して重要なことは、いつまでも母乳のみの養育で悪化する、アレルギー検査だけで除去し栄養状態の悪化をきたす、1日に数回の入浴で皮膚を傷つける、湿疹にばかり気を取られ普通の養育ができないことである。

ステロイドやプロトピックを使わない治療を拡める為に幾つかのグループができている。きらきらぼし、アトピッ子育児の会、nature、アトピッ子ニコニコの会などである。その他に我々に必要なものは、非ステ医との連携、仲間との連携、社会への情報発信、近隣医師への直接説得、看護士、保育士への働きかけなどである。

2歳を過ぎても治り難い小児の治療方法の確立や、喘息などに対する非ステロイド治療の普及のための活動も必要。

 

第二部 青年成人患者の部

1.1.アトピック共同代表の菊池さんから参加者への挨拶とアトピックの活動の紹介がありました。内容は第一部を参照。

2.講演1 佐藤健二 「なぜ脱ステ脱保湿が必要なのか」

難治化アトピー患者はステロイド依存性皮膚症を合併したアトピー性皮膚炎であるので、ステロイドの副作用であるステロイド依存性皮膚症を治療するためには脱ステロイドをするしかない。最近、ネズミで皮膚だけでステロイドホルモンが作られることが分かった。ステロイド離脱症状は、副腎でのステロイド産生減少ではなく、皮膚だけのステロイド合成低下によるホルモン不足状態による病状と考えられる。強いステロイドを十分にぬると、皮膚でのステロイドホルモンの強さは正常血液中のステロイドの十万倍の強さがある。時々、脱ステロイドをして本来のアトピー症状が現れず、出ていた症状は副作用だけであった方もいる。悲しき事である。

スピーチ1 Hさん「体験者より」

15歳から8年間ステロイド外用。2013年阪南中央病院入院。この5年間激悪化は無し。心がけていることは、傷の乾燥、蒸らさない、水分制限だが、首にタオルを巻いていた事で気づく。脱保湿は軟膏を塗らないということだけではない。治りきっていない瘡蓋剥がしも保湿。一見保湿とは関係ないように見えることでも保湿となることがあるので注意。

講演2 水口聡子 「脱ステ中の経過・離脱後の悪化因子」

昔は自然治癒が多かった。ステロイド外用治療が主流となり、患者増加。自然治癒を示唆する報告あり。ステロイドで治りにくくなる根拠。ステロイド外用が効かない重症患者のリンパ球にはステロイド作用を弱める糖質コルチコイド受容体βの上昇、長期のステロイド外用で表皮細胞はコルチゾール産生を抑制する。脱ステロイドの始まりは脱保湿も始める時。ステロイド外用中止で生じる症状はその副作用で、ガイドラインが無視する。悪化因子の重要なものは、外用剤、ステロイド少量使用、エステ、化粧、日焼け止め、運動不足、水分過多、通院間隔の拡大。前者によるスイッチリバウンド。同居者にステロイド使用者がいれば、色々なルートでステロイドを塗っていない身近な家族などに届き、空間を超えたステロイド外用となる。

スピーチ2 Aさん 「スイッチリバウンド体験とその克服」

2011-12年に脱ステ、脱保湿で3回入院。以後調子良し。2018年2月から精神的虚脱、不規則労働と運動不足、タバコと喘息用のステロイド吸入、数回のステロイド外用、非ステ外用剤による保湿の上に水分摂取過多にて急激悪化。水分制限を含め脱保湿を完全に実施。2ヶ月で体重は14kg減少、1ヶ月で2万歩歩行可能に。幾つかの理由でスイッチリバウンドが起こるので、保湿剤を使用せず、運動に精出すことが重要で、痒みや痛みがあっても、それを忘れられる楽しみを見つけて生活すること。そうすればスイッチリバウンドは起こり難い。

講演3 藤澤重樹 「離脱後安定期の対応・対策」

健康生活でアトピーを克服するのが基本原則

風呂断ちで皮脂膜を残し、弱酸性にし、バリア構造を残し、自然な保湿力を保持させる。チベットでは入浴回数が月1回で、アトピー性皮膚炎児はいないことでもこの効力が分かる。

日光浴にて中波長紫外線が表皮細胞中にビタミンD3を作成し、ステロイド産生を増加させ、皮膚バリア機能を改善させる。

脱保湿の理解と徹底が重要。表皮はステロイドを産生する。保湿で表皮ステロイド産生低下、乾燥で増加。脱保湿で脱ステロイド成績の向上が見られる。

開き直りでメンタル強化と共同体感覚の育成で気持ちが楽になる。これによるアトピー症状の改善。

スピーチ3 oさん 「肌の安定後に悪化をさせないための対応対策」

阪南への2度の入院経験から肌の安定後に悪化をさせないための対応対策は次のことと考える。

保湿は色々な事で起こる。最重要は入浴。湯船に浸からず短時間のシャワーが良い。長いと皮膚をふやかし、掻き壊しやすい肌になる。

爪の先端を丸くするようにヤスリで削る。悪化につながるひどい掻き壊しが減る。

その他には、外出での行動と遊び、肌について考える時間の短縮、日光を浴びて自律神経を整える、適度の運動習慣を取り入れる。現代はネット社会、SNSなどで仲間を探し悩みを共有して笑いながら乗り越える術を獲得する。

講演4-① Kさん 「患者目線で伝えるステロイドの真実と世界の現状」

6ヶ月から全身に最強ステロイド50年。ひどい指の炎症もアトピーと言われ続ける。ステロイドを中止すると想像を絶する重症症状。一度の着替えで瘡蓋は両手にてんこ盛りとなる。下腿は普段の直径の2倍となる。入院のための1時間の飛行中にも汁がだらだら出、靴の中も汁だらけ。入院後、水分制限と脱保湿により3ヶ月で症状軽快。この治療を拡め、同病の患者を励ますためにブログの立ち上げ。そして脱保湿の内容を書いた人気の記事の英語版を出す。シェアに次ぐシェアが起こり世界中で読まれる。外国の患者が記事をもって受診することも起こる。しかし、脱保湿をするなら確固たる決断が必要、自分のアレンジを加えないことが重要。皮膚は年々強くなっていく。

講演4-② Nさん 「阪南脱ステ日記への想い」

自分はアトピーではありません。喘息用のステロイド吸入を始めて5年たつと手足の皮膚がもろくなりステロイドの外用を始めた。しかし、すぐに効かなくなりどうしようもなくなった。何をしても良くならない。1年後に脱ステを始める。ひどい状態になり、また入院は1ヶ月ほど待たなければならなかったので大変しんどかった。入院後もしばらくは大変だったが、頑張ったせいで何とか退院できた。ステロイドの詳しい知識は無いが、これに合わない患者もいることを医師は認めてほしい。効かない患者がいたら、効かないと認めて、ステロイドの処方を止めて苦しい離脱症状を支えるサポートをしてほしい。この様な気持ちで同病の仲間を助けたいと思い「阪南脱ステ日記」を書いた。その後も喘息がひどくなり、ゾレアという生物学的製剤を使用したが、途中で使えなくなった。この系統の薬も要注意です。(メモを取っていなかったので、うろ覚えで掻きました)

補足 佐藤美津子 「成人の患者さんたちへ」

あなたたちが親になった時に、ステロイドを使わない治療を選んでください。母乳を止めてミルクにする決断、離乳食を早く始める、自由に掻かせる、別室で寝ることが重要です。非ステを拡めればステロイド依存は激減します。命の危険があってステロイドを使っても、危機を脱すれば止めてください。使わない治療を選択できるように拡めてください。

ワーク 公開討論 事前と当日に質問を受け付け、それの一部に対する回答を行った。

一番難しい質問のみ記しておきます。

Q:脱ステ後の長期経過についての印象を聞きたい

A:以前調べた退院後の再入院率は1割程度です。悪くなって再入院したくなくなった人は何人かおられるだろうが、その率の調査はできていないし難しい。ただ最近に再入院する人は繰り返し入院が多く、多くは同じ問題で再入院する。受診しない人の問題も同じではないかと思う。治りが遅い理由の一つとして、新しい特殊な皮疹の人もいる。顔一面の黄色痂皮形成、発疹性丘疹結節皮膚症の出現、指末節背側の湿った湿疹、手掌のしわに一致して滲出液がでるびらん性皮膚炎の出現などです。新しい皮疹に対する対策はなかなか立てにくい。

まとめ アトピック共同代表 菊池 「atopicが目指す患者の生き方とこれからの活動」

ステロイド・プロトピックを使用せず、脱保湿も継続する。デュピクセントはステロイド、プロトピックとの併用である。脱ステロイド成功の目安は「社会復帰して日常生活ができること」である。引きこもりや寝たきりの人も多いが少しずつもどって行く。良くならないには何か理由がある。これを発見すること。

アトピックの今後の活動:講演会は年3回ペースで残りの10県を。子どもでは地域の活動グループを盛り上げ、増加するよう支援する。成人では交流会などを撮影し映像にし雰囲気を知ってもらう。SNSの更なる利用強化。講演会のネット投稿を検討。atopic

でのアカウントを共有し拡めてもらう。

アトピーにとらわれない人生を歩んでほしい。諦めずに自分らしく過ごしてほしい。

おわりに 佐藤健二

10年間で37都道府県で講演会を行い、脱ステロイド、脱プロトピック、脱保湿の考えを拡めてきた。その過程で、幾つかの脱ステロイドのグループができてきた。脱ステの理論をわかり易く阪南脱ステ日記に書いていただいたり、徳子氏のブログで世界に広めていただくなどして、今ではこの活動は世界的になっている。この活動を続けて、アトピー性皮膚炎の治療のガイドラインにステロイドを使わない治療を入れさせるための活動の一つとして今後も頑張っていきたい。