脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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2018アトピーガイドライン批判

11月 26th, 2018 | Posted by 佐藤 健二 in 医学論文 | 学会

皆様

2018年版アトピーガイドラインが出ました。特に気になる所について調べてみました。ご一読ください

佐藤健二

2018年11月26日に日本皮膚科学会雑誌12月号が届いた。その中には日本皮膚科学会ガイドラインとして「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」が掲載されている。これは「アトピー性皮膚炎の患者の診療に関わるすべての医師、医療従事者を対象」としている。これの全般的評価は後日に行うとして、当面私の関心のあった点について見てみた。全体を見ていないので見逃して評価が誤っているかもしれない事を断っておく。間違いが分かれば後日訂正したい。

私の関心があったのは次の3点である。1.我々が2016年に発表した6カ月間ステロイドを使わない治療の成績をどう扱ったか、2.脱ステロイド治療がどういう扱いを受けているか、3.ステロイドとプロトピックの治療が有効で安全であるというガイドラインの評価にエビデンスがついたかどうか、である。

1.については次のこのことが分かった。「はじめに」の中に「国内外で発表されたアトピー性皮膚炎に関する新しい知見を加えて作成された」ことと「現時点における日本国内のアトピー性皮膚炎の治療方針における目安や治療の目標など診療の道しるべを示す」事が述べられ、注として「原則として2015年12月末まで」と記されている。我々の論文は2016年に発表されている。だからこの論文を対象として議論することはないことを暗に示している。

ではどの程度原則として2016年以降の論文が省かれているかを調べた。主文が入っている第1章の引用論文は227編である。不明を除いても2016年以降の論文は19編ある。8.4%、約1割である。最も新しいのは2018年の論文である。この事は明らかにガイドライン作成者にとって都合のよい論文を2016年以降から取っていることを示している。すなわち、我々の論文を拡めさせたくないことを意味している。有効で安全であるという薬物治療を勧める医師が、薬物を使わない治療と比較することが怖くて論文を引用することができないのである。なんと情けないことか。

2.「3.3薬物療法」「(1)抗炎症外用薬」「1)ステロイド外用薬」「d)ステロイドに対する不安への対処、不適切治療への対処」の中に次のようの述べられている。「ステロイド外用薬に対する誤解(ステロイド内服薬との混同、およびアトピー性皮膚炎そのものの悪化とステロイド外用薬の副作用との混同が多い)から、ステロイド外用薬への必要以上の恐怖感、忌避が生じ、アドヒアランスの低下によって期待した治療効果が得られない例がしばしばみられる。また不適切な使用により、効果を実感できない事でステロイド外用薬に対する不信感を抱くこともある。その誤解を解くためには十分な診察時間をかけて説明し指導することが必要である。」と。ステロイドが効かないのは患者の治療態度が悪いからという論法である。未だに世界中で困っている多くのステロイド依存性患者の言うことを信頼できない医師の発想である。多くの科の医師がステロイド依存状態から脱ステロイドで回復してきている現実があるのである。同じようにステロイドを使っていても効かなくなってきた、という患者の絞り出すような訴えをもういい加減認めてはどうなのであろうか。

3.「3.3薬物療法」「(1)抗炎症外用薬」に引用文献は一つ示されている。2000年印刷の論文である。そして文章は次のとおりである。「ステロイド外用薬の有効性と安全性は多くの臨床研究で検討されている。」2016年版のガイドラインには次のように出ており、引用文献は無い。「現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静するための薬剤で、有効性と安全性が科学的に十分に検討されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏である。」要するに、有効性と安全性は検討中だということである。有効性と安全性がまだ分かっていないものが「標準治療」として大手を振って歩いているのである。恐ろしいことである。2017年に皮膚において皮膚だけでステロイドが作られることが証明された。ステロイド外用を皮膚で行えば、当然ステロイド外用に抑制がかかる可能性が考えられる。この事については何も語られていない。

以上を見てみるとやはり安心のできるガイドラインでないことは明白である。患者に説明・説得することよりも、まずは患者の訴えを真摯に聞くことから始めるべきである。

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