脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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アトピーとは直接関係ないですが、震災関連の阪南中央病院の広報です。拡めていただければ幸いです。

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被災地でお困りの妊婦さん、出産を当院で!

2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災されました地域の皆様、関係の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

地域周産期母子医療センターを有する当院では、今回の震災でお困りの妊婦の方々に、大阪府や松原市、松原市医師会等の協力を得ながら、安心して出産して頂けるような受け入れ体制を整え、お迎えしたいと考えております。

ご相談に乗りながら病院職員が一丸となって、お手伝いをさせていただきたいと思います。

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詳しくは以下をご覧ください。

http://www.hannan-chuo-hsp.or.jp/news/news-ukeire.html

 

福島原発事故とアトピー患者

この説明を書くにあたって参考にした書物を挙げておきます。一つは、金芳堂の「MINOR TEXTBOOK 放射線基礎医学」(改定第9版第4刷、2002発行)と日本アイソトープ協会の「やさしい放射線とアイソトープ」(初版第2刷、1986年)です。

 

1.原子力発電所から出る放射性物質

原爆のための核実験で地上に降って直接または食物連鎖を経て人が被爆する放射性降下物(フォールアウト)としての核種は、14C(炭素)、137Cs(セシウム)、90Sr(ストロンチウム)、106Ru(ルビジウム)、144Ce(セリウム)、3H(トリチウム)などです。原子力発電所(原発)から出される核種は、85Kr(クリプトン)、3H(トリチウム)、14C(炭素)、131I(ヨウ素)、137Cs(セシウム)、134Cs(セシウム)、34Na(ナトリウム)、60Co(コバルト)などで、放射性降下物と同じように直接または食物連鎖を経て人が被爆します。

既に、福島原発から地上、空、海に大量にこれらの放射性物質が放出されています。放出が減る見込みは全く立っていません。核燃料格納容器爆発の可能性も指摘されています。放射性物質による汚染地域がどんどん拡大しています。飲み水に、野菜に、牛乳に原発由来の放射性物質の存在が確認されています。クリーンで安全という原発のうたい文句は吹っ飛びました。火山や地震の多い日本での原発は大変危険であるという警告を無視した歴代政府の原発推進政策(電源確保を、主として原発に頼っていこうとする政策)の誤りが大変な事態を引き起こしました。福島第1原発事故は人災と言わざるを得ません。

アトピー性皮膚炎患者もこの危機を乗り切っていかなければなりません。アトピー性皮膚炎患者は健常な人に比べて被爆の危険性は高いのでしょうか。検討してみましょう。

 

2.放射線の確率的影響と非確率的影響

後で、直接被爆と食物連鎖による被爆に分けて考えてみますが、その前に、チェルノブイリ原発事故などの過去の事故でどのような問題があったかを放射線防護の観点から考えてみます。被爆で問題となる事柄は、大きく二つに分けられます。非確率的影響(確定的影響とも言われます)と確率的影響です。

非確率的影響は、原発の火事を止めるためにそばまで行かざるを得ず、強い放射線を浴びることによって火傷のような皮膚の損傷などを受けることです。程度がひどければ死に至る強い放射線を浴びます。チェルノブイリでは多数が、1999年の東海村JCO臨界事故でも強い放射線を浴びて二人の作業員が亡くなられました。今回の福島原発事故でも、東京電力の下請け会社の作業員が配線作業の時に高濃度の放射性物質を含んだ水の中を歩いたために起きた火傷も非確率的影響としての放射線障害です。この非確率的影響はある被爆線量を超えないと起こりません。例えば、火傷の反応は平均的には3-4シーベルト(=3000-4000ミリシーベルト)程度の被爆で起こります。

確率的影響は遺伝的影響と発癌の問題です。だから、事故直後ではなく放射性物質が広範にばらまかれた後の問題です。チェルノブイリ原発事故の場合、次のように言われています。体内に取り込まれた放射性物質で大きな影響を与えたのは、137Cs(セシウム137)が全体の約70%、134Cs(セシウム134)が約20%、131I(ヨウ素131)が約6%だったとのことです。福島原発の放射性物質の放出が止まり、この影響のことを心配しなくていい状態に早くなることを祈るばかりです。

 

3.アトピー患者の直接被爆について

福島原発の爆発事故の直後には、周辺住民に対して避難勧告が出されました。最近では20-30km圏の人々に自主避難を勧める声明が政府より出されました。自主避難を勧める理由が、その地域にいた人々が避難し市民生活が正常に行えないためだとのことです。これでは自主避難を勧める声明を出さなければならなくなった責任は避難した住民にあるということになります。責任転嫁も甚だしすぎます。

避難時に政府が勧めた行動は、できるだけ体を服などで隠すこと、顔にはマスクをすること等です。このような事をする理由は放射線被爆を減らすということですが、それ以上の詳しい説明は述べられていませんでした。セシウム137とセシウム134、ヨウ素131はベータ崩壊(ベータ壊変)し放射性電子を放出するとともにガンマ線も出します。皮膚に直接付けばこの二つの放射線で皮膚を障害します。セシウムは細胞膜を自由に通過することができます。ヨウ素も皮膚に簡単に付着します。だから皮膚に付かないために皮膚を直接大気に出さないようにすることが必要との意味で、服で体を隠す、顔にはマスクをすることが勧められたのです。アトピー患者と健常者とで放射性物質が直接付着する率が違うかというと、その違いはありません。セシウムもヨウ素も反応性が高いので、アトピーであろうとなかろうと同じように皮膚に付着します。だから、この意味でのアトピー患者の不利はないと言えます。

なお、できるだけ服を着るようにとの指導には次の意味もあります。ベータ崩壊ででる電子は薄いアルミニウム板や1㎝程度のプラスチック板で遮蔽することが可能なので、少しでも服を着て障害物を作るようにする方がいいという意味も含まれています。

揮発性や浮遊している放射性物質は呼吸で肺に吸収されます。この場合も、説明の必要もないと思いますが、アトピー患者で吸収の確率が高くなることはありません。

 

4.アトピー患者の食物連鎖による被爆

ホウレンソウや牛乳に放射性物質が含まれていることが報道されています。大気中や海に放出された放射性物質は、色々な動植物に取り込まれます。人間が放射性物質を含んだ食物を食べればその物質の特徴に従って体内に分布します。セシウムは筋肉と腎臓に多く存在します。ヨウ素は甲状腺にあります。これらの部位でベータ線やガンマ線を出してその部位にある細胞やDNAを傷め、最終的には悪性腫瘍を発生させます。ヨウ素131の物理的半減期(放射線の強さが半分になるに要する期間)は8日です(生物学的半減期は138日)。だから、ヨウ素被爆をした場合や被爆する可能性のある場合に普通のヨウ素を多く摂取すると甲状腺に放射性ヨウ素が集まらずに甲状腺がんを起こす確率が減ります。セシウムの半減期は134で2.5年、137では30年です(生物学的半減期は成人で50-150日、子どもで44日)。これだけ長期に体内に存在すれば放射性物質が入った部位に悪性腫瘍のできる確率は非常に高くなります。

このような食物連鎖の過程を通った被爆は、アトピー患者と健常人では全く違いはありません。アトピー患者だから多くホウレンソウや牛乳を摂取することはないでしょう。単に好みの問題があるだけです。

「傷から放射能が入り、体内被曝する可能性は0ではない」との報道があったとのことです。上記書物「やさしい放射線とアイソトープ」の「体内照射に対する防護」の項に「アイソトープが体内に入る経路にはつぎの3つがある。(1)呼吸器を通しての摂取 (2)口、消化管を通しての摂取 (3)皮ふ、とくに傷口を通しての摂取」とあります。(3)の説明の図を見ると、実験動物を片手に持っていて、もう一方の手で放射性物質の入った注射器を持っています。その動物に注射しようとした時、おそらく、動物が嫌がってもがき、手元が狂って自分の手に放射性物質を注射してしまった状況が描かれています。もしこの本のようなものから文章だけを取り出して報道したとすれば、正しい報道とは言いにくいように思います。

 

5.自然放射線

現在、福島原発事故で原発から放出される放射線が問題になっています。報道ではしばしば、この程度の放射線では人体に影響はありません、という表現がしばしば出ています。非確率的影響では確かに影響はほとんどない程度のものです。しかし、確率的影響にとってはそうではなくて、少しでも放射線が増えれば悪性腫瘍を発生する人は増えるのです。だから、「安心安心」と吹聴することを報道機関や政府は慎むべきであると思います。

人間がどうしても避けられない放射線もあります。それが自然放射線です。これは、1年間に一人の人間では約2ミリシーベルトあります。内訳は、宇宙から来る宇宙放射線が0.3ミリシーベルト、地球の大地に含まれる放射性物質から来るものが0.35ミリシーベルト、人体内に存在する放射性物質が1.35ミリシーベルトです。体内のものの大部分は空気中にあるラドン等の吸収による1ミリシーベルトと食物に由来するカリウム40などが0.35ミリシーベルトです。

日本では医療被曝が年間2.25ミリシーベルトと高いですが、世界の平均では医療被曝は0.6ミリシーベルトとかなり低いです。医療での放射線被爆を減らす必要があるように思います。そのためには放射線診断での不要な検査を減らす必要があるでしょう。

 

6.結論

アトピー患者は、病気の状態や治療の違いに関わらず、健常人と同じように放射線防護をしておればよいということです。

 

脱ステロイド中の被災アトピー患者さんなどへ

2011年3月23日 阪南中央病院 皮膚科 佐藤健二

東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、この震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたします。

 

mixi「脱ステロイドしました」コミュニティー管理人「すぱのり」様から、「被災されているかもしれない、または直接被害が無いけれど脱ステ継続に支障をきたしている方々に向けて、何かアドバイスなど」はないでしょうかとのご連絡をいただきました。私は関西在住のため何不自由なく生活しておりますので気付きませんでした。ただ、ステロイドなどで治療をされておられる方にステロイドなどが届かないことになれば大変だな、という話は高知講演会参加者で話し合っておりました。

遅ればせながら、脱ステロイドをされておられる方に対してお伝えすれば少しでも気持ちが楽になっていただけるかなと思うことをいくつか書いてみました。参考にしていただければ幸いです。

1.日本だけでなく、世界の人々が皆様の支援に立ち上がり始めていますので、どうぞお気持ちを強く持たれて、精神的に落ち込まれないようにしてください。

2.水や食料の不足している方がおられると思います。脱ステロイドをするときは、水分は適度に制限(軽く口渇を感じる程度)する方が楽に生活できます。また、断食療法で食事をあまり摂らないでも皮疹は良くなる場合があります。だから、水分や食物が不足していてもあまり焦らない方がいいと思います。水や食物が本当になくて大変困っておられる場合もあるでしょう。その場合はインターネットなど何らかの方法で連絡をとり、支援を受けられるようにして下さい。

3.入浴もままならない場合も多いと思いますが、脱風呂療法で良くなられる方もおられます。また、風呂にしばらく入らなくても簡単に皮膚の感染症にかかるわけではありません。今しばらく、入浴無しの脱風呂療法を試してみてください。

4.東北地方はまだ冬の気温です。霜焼けや凍傷などは皮膚に良くありません。可能な限りこのような状態にならないようにお気を付け下さい。寒い季節は、反面、痒みが起こりにくくなります。だから、寒さ対策をしつつも、適度な涼しさを維持される方が痒みには良いと思います。

5.服や下着も不足していると聞きます。子どもさんの脱ステロイドをする場合、下着は2-3日連続して着ていただくことをお勧めしています。皮脂が取れないようにする対策です。着替えが少ないことは辛いことだと思いますが、皮膚表面の脂があまり取り去られないようにすると痒みがましになる、と考えて我慢してください。

 

ステロイドなどで治療を行っておられるアトピー患者さんへも一言

1.手持ちのステロイドやプロトピックが少なければ最も重症の部分のみに外用し、薬が届くまで頑張ってください。

2.どうしても薬が手に入らずどうしようもなく悪化されておられる方は何とかインターネットなどで連絡を取って薬を得るようにして下さい。

3.薬が届かず脱ステロイド状態になってしまわれた方は、一週間後頃が一番しんどい状態になりますが、それを過ぎると少しずつ良くなり始めます。焦らずに支援物質の到着をお待ち下さい。

 

皆様ができるだけ早く良くなられることを祈っています。

 

4月23日(土)第91回阪南中央病院健康教室 アトピー性皮膚炎の治療について

場所:松原図書館 集会室(2階)松原市田井城1-2-23

定員80名(予約不要)、参加費:無料

お問い合わせは、阪南中央病院 総務課 072-333-2100

講演者: 佐藤健二

http://www.hannan-chuo-hsp.or.jp/kanren/class/class91.pdf

 

古江論文批判 4 (主として副作用について)

Furue M et al
Clinical dose and adverse effects of topical steroids in daily management of atopic dermatitis
British Journal of Dermatology 2003; 148: 128-133

アトピー性皮膚炎の日々の治療における外用ステロイドの臨床用量と副作用

 

1.副作用関連の本文記述

Furue論文にある副作用に関しての記述は次の通りである。

論文の要旨の項には次のように記されている。「副作用については、頬の毛細血管拡張の発症率は、より罹病期間が長い、6か月の治療期間中に顔面に20g以上を塗布した患者において増加する傾向があった。ステロイドで作られた、肘窩膝窩の萎縮は、女性より男性で高頻度に存在した。」とある。

はじめにの部分では「外用ステロイド、保湿剤、内服抗ヒスタミン剤が第一選択薬としてアトピー性皮膚炎に用いられているが、外用ステロイドの長期使用の怖さは、世界中で多くの患者に外用ステロイド恐怖症を生んでいる。しかし、診療所で治療されているアトピー性皮膚炎患者に対する外用ステロイドの臨床用量と副作用についての情報はほとんどない。これらの点を明らかにするために、我々は少なくとも6ヶ月間経過を追われてきた1271人のアトピー性皮膚炎患者の臨床データを分析した。」と述べている。

材料と方法の項では「頬の毛細血管拡張、肘窩・膝窩の皮膚萎縮、痤瘡と毛嚢炎、多毛、細菌感染、皮膚真菌症、酒皶様皮膚炎、外用ステロイドによる接触皮膚炎、ステロイドによる線条皮膚萎縮症」を調べたとある。統計分析には次のように記されている。「性別、年齢、罹患期間、外用ステロイド6ヶ月間塗布総量、異なる強さのステロイド6カ月塗布量(最強+上強+強と中等+弱)が3つの主要な副作用に与える影響を断片化線形モデルを用いた逐次ロジスティック回帰分析(訳者注:この訳でいいかどうか不明。また、内容も訳者には理解できない)で解析した。罹患期間と6カ月の塗布量は断片化線形変数として取り扱い、これらの変数に対して、それぞれ1年と10gの間隔で一つの変化点を持つ替え玉変数が解析に用いられた。各変化点に対する替え玉変数は最大値(0、本来の変数―変化点)と定義された。」

結果の項目には、「外用ステロイドの副作用」と題して以下の記述がある。「外用ステロイドを塗布すると、皮膚で、多毛、毛細血管拡張、皮膚萎縮のような軽い可逆性の副作用が起こる。高度の皮膚萎縮があると、ときにより重症の不可逆的副作用である線条皮膚萎縮症が起こる。これらの副作用の累積発症率は、累積ステロイド塗布量に相関すると想像されたが、各患者で発症後の累積ステロイド塗布総量を知ることは困難である。しかし、我々は、6か月の外用ステロイド量と累積総量の間に相関があると推測した。副作用の累積発症率を評価した(表5)。予想した通り、副作用の累積発症率は、幼児アトピー患者より青年成人アトピー患者ではるかに高かった。頬の毛細血管拡張、肘窩の皮膚萎縮、膝窩の皮膚萎縮は、しばしば観察される副作用である、なぜなら、アトピー性皮膚炎の好発部位は顔と屈側領域であるからである。次に我々は、上で述べた3つの主要な副作用に対して、断片化線形モデルを用いた逐次ロジスティック回帰分析を使用して、性別、年齢、罹病期間、6か月の外用ステロイドの総量、および6か月の異なったランクのステロイド量(最強+上強+強と中等+弱)のオッズ比を解析した。頬の毛細血管拡張については、我々は次のことを見出した。ⅰ.発症率は、患者の年齢が高くなると高くなる傾向であった。すなわち、幼児<小児<青年成人である。ⅱ.発症率は、罹病期間最初の6年間、オッズ比は毎年1.8倍増加したが、6年以降は増加が止まるか低下さえした。ⅲ.発症率は、顔面に塗布される外用ステロイドの量が6カ月で20gを超えると徐々に増加した。肘窩の皮膚萎縮については、我々は次のことを見出した。ⅰ.発症率は、患者の年齢がより高くなると増加する傾向であった。すなわち、幼児アトピー<小児アトピー<青年成人アトピーである。ⅱ.発症率は、罹病期間初期9年間、オッズ比は毎年1.2倍増加したが、9年以降は増加が止まるか低下さえした。ⅲ.発症率は女性より男性で高かった。ⅳ.発症率は、体幹と四肢に塗布された”最強+上強+強”のステロイド量が6ヶ月間で500g以上だと徐々に増加した。膝窩の皮膚萎縮については、我々は次のことを見出した。ⅰ.発症率は、罹病期間初期9年間、オッズ比は毎年1.3倍増加したが、9年以降は増加が止まるか減少さえした。ⅱ.発症率は女性より男性で高かった。ⅲ.発症率は、患者の年齢が高くなると増加する傾向であった、すなわち、幼児アトピー<小児アトピー<青年成人アトピーであった(表6:省略)。」

 

表5 外用ステロイドの副作用(%)(訳者にて改変:表2の患者数をもとにそれぞれの副作用の群別と全患者の数を計算で出した。)

幼児     小児      青年成人   合計

年齢群        <2歳   2歳≦ <13歳  13歳≦

患者数           210      546       515      1271

% (実数) % (実数)  %  (実数) %  (実数)

多毛         0.5  1  1   5     2.7  14   1.6   20

頬の毛細血管拡張   0      2.3  13    13.3  68   6.4   81

肘窩の皮膚萎縮    1.5  3   5.2  28    15.8  81   8.8   112

膝窩の皮膚萎縮    1.9  4   4.1  22    9.8  50   6.0   76

線条皮膚萎縮症    0      0        1   5    0.4   5

痤瘡と毛嚢炎     0      1.3  7     8.2  42   3.9   49

細菌感染       1.4  3   2.1  11    2.5  13   2.1    27

真菌感染       1.9  4   0.6  3     1.2  6   1.0    13

ステロイド誘発皮膚炎 0      0.4  2     3.1  16   1.4    18

接触皮膚炎      0      0.4  2     0.8  4    0.5   6

 

考察の項目では以下の記述がある。「外用局所で活性のあるステロイドの臨床的有用性は、その抗炎症活性に照らして、また経皮吸収から起こる全身的副作用だけでなく好ましくない局所の副作用を起こす性質に照らして評価されなければならない。外用ステロイドは、色々な臨床的重症度の慢性アトピー患者に広範に用いられている。患者は、病気がほど良く調節されている状態の時より、ひどく悪化している時の方がより多くのクリームや軟膏を使用するようである。従って、病院や診療所で普通に処方される、色々な量のステロイド製剤の効果と副作用を研究することは重要と思われる。これまでの研究では、副腎系の抑制は普通量の外用ステロイドを用いている外来患者では重要でないことが示されている。

外用ステロイドは、毛細血管拡張、皮膚萎縮、多毛、色素減少、口囲皮膚炎、真菌・細菌・ウイルス感染、線条皮膚萎縮症のような外用局所皮膚での種々の副作用を生む。線条皮膚萎縮症を除いてこれらの副作用は基本的には軽症で可逆的なステロイドの副作用である。しかし、長期間の外用ステロイド塗布によって起こされた、局所の副作用発症率は知られていない。

この研究で、我々は、外用ステロイドの臨床用量と副作用を調べた。多くの患者はこの研究が始まる前にステロイドを使用していたことと、教育、激励、その他の色々な治療をしてきていたことが強調されなければならない。だから、改善上の変化をステロイドだけに帰すことは非常に難しい。

………

この研究では、患者のアトピーの罹患期間は1カ月から79年で、その中央値(第25百分位数、第75百分位数)は3.0年(1.1年、7.0年)であるので、患者は長期に外用ステロイドを塗布していたと思われる。この推測を支持するように、ステロイドで作られる毛細血管拡張や皮膚萎縮の発症率は、患者の年齢が高くなると多くなる。局所的皮膚萎縮や毛細血管拡張のような副作用を持つ患者は、率は少ないが認めうる程度には存在した。これらの副作用の発症率は、年齢、性、外用ステロイドの強さと量で予測することができるかもしれない。」以上で古江氏の記述は終わりである。

 

2.重要な補足説明

「ⅰ.発症率は、患者の年齢が高くなると高くなる傾向であった。すなわち、幼児<小児<青年成人である。ⅱ.発症率は、罹病期間最初の6年間、オッズ比は毎年1.8倍増加したが、6年以降は増加が止まるか低下さえした。」この関連を理解するには、3次元のグラフを書くと分かりやすい。横軸に年齢、縦軸に患者数、奥行き軸に罹病期間を取る。まず横軸と縦軸だけを見て、幼児群・小児群・青年成人群に分けて副作用発症者をみると、青年成人群で非常に多くなっている。そこで、各群の奥行き軸に手前から罹病期間1年目の副作用発生患者数、2年目の副作用発生患者数、3年目の副作用発生患者数—-と奥に向かって罹病期間別に患者数を振り分けてみると、頬の毛細血管拡張では6年目までは順調に増加するがそれ以降、罹病期間が長くなると患者数が減り、肘窩・膝窩の皮膚萎縮については9年目を境に増加から減少に変わるということである。この変化は青年成人群で最も明瞭に出ているであろう。

 

3.補足説明の重要さについて

古江氏は、副作用の発症では、主として頬の毛細血管拡張と肘窩・膝窩の皮膚萎縮に絞って検討している。彼は、副作用の累積発症率は累積ステロイド塗布量に相関し、6か月の研究期間に使用したステロイド量は各患者が発症から使用してきたステロイドの累積総量と相関があるという前提に立っている。アトピー性皮膚炎は幼少期から発症することが多いので、年齢が高くなれば累積外用量も多くなるのは当然である。このことを示すように、研究結果は、幼児・小児・青年成人と大きく群として分ければ予想通り高年齢群で副作用の発症率が高かった。もしこれだけのデータであればその通りの内容を書くだけで十分であろう。しかし、問題がある。年齢群別に分ければ高齢者で多いが、同じ年齢群の患者だけを取り出し(合計で見ても同じ結果であるが)発症後の罹病期間別に発症率を見れば、頬の毛細血管拡張と肘窩・膝窩の皮膚萎縮の発症率は、毛細血管拡張で発症から6年、皮膚萎縮で発症から9年経つと低下することである。ある年齢を過ぎてまだ、病気が続いているのであるから、外用量も増え、発症率は増加しなければならないにもかかわらず、減少しているのである。この結果は予想と違っているわけであるから、自分の前提的考え方との違いを説明あるいは弁明しなければならない。これについては論文中には見当たらない。逆に、要旨には結果と矛盾するような内容が記述されている。すなわち、「頬の毛細血管拡張の発生率は、より長期の罹病期間を持ちかつ6カ月の治療期間中に顔面に20g以上を塗布した患者では増加する傾向があった。」(下線は訳者。結果の項では患者の二つの条件は並存条件ではなく別々に述べられている。ここでは長期の罹病期間と20g以上という並存条件のある場合のことを述べているので、正しく結果を示しているかもしれない。しかし、結果で述べられている、より長期の罹病期間を持つ患者では発症率が低下することが隠されている。)少なくとも、罹病期間と発症率に関して述べるならば、長期罹病の人では副作用発症率が減少することを述べる必要があった。

外用量が増えれば副作用が増えるのであるから、副作用が減るためには外用量が減らなければならない。罹患期間の長い人の中では副作用の発症が減ったのであるから、外用量を減らしたことになる。外用量を減らすには、症状がよくならなければならない。もしそういう相関が傾向としてでも見られたら記述したであろう。しかし、その記述の無いことをみると、このことは起こっていないと判断しうる。病勢が改善している率は少なく同じ状態で維持されている率が高かったことからもわかることである(治療後の重症度分類が同じである率が非常に高かった)。この二つを合わせて考えれば、副作用が出てきているので外用は減らさざるを得ない、かといって減らせば症状はよくならない、という臨床医の行き詰まり状態を示していると考えるのが現実を正しく示しているであろう。従って、要旨などの「外用ステロイドはアトピー性皮膚炎治療のためには有益である」と言うには余りにも貧相な結果であることの一断面を副作用の経過が示していると言えよう。


これまでの私の見解では、発症率という言葉を、古江氏の使い方通りに使ったが、古江氏の論文の中で発症率(incidence)という言葉はいくつかの意味に使用されている。この説明に入る前に発症率(incidence)と罹病率(prevalence)の意味をいくつかの辞書から引用する。以下に示すように、医学用語として、incidenceは罹病率・罹患率・疾病率・発病率・発症率等と訳され、prevalenceは有病率と訳される。しかし、incidenceは、一般の用語として何かが起こる率を示す「発生する率」としても使用され、prevalenceは頻度が多いという一般的な意味で使用されることがある。

# kotobank.jpによれば
罹病率(=発病率):ある期間の疾病発生件数のその期間内平均人口に対する割合(百分率)。ただし、年率の場合は人口1000人当たり、疾病別の場合は人口10万人当たりの数値を用いるのが普通。

有病率:ある時点における病気・けがをしている人の、人口に対する割合

# 大辞林初版によれば
罹患率:一定期間に発生した特定の疾病の新患者数の、その疾病にかかる危険にさらされた人口に対する比率。普通人口10万人当たりの数値で示す。罹病率、疾病率。

有病率:ある時点、ある地域内に存在する全患者数をその地域の人口で割ったもの

# Stedman’s Medical Dictionary (24th Ed)では
incidence: The number of new cases of a disease in a population over a period of time
prevalence: The number of existing cases of a disease in a given population at a specific time

# Webster’s Third New International Dictionaryでは
incidence: the rate of occurrence of new cases of a particular disease in a population being studied
prevalence: the percent of a population being studied that is affected with a particular disease at a given time
と記述されている。

発症率と有病率を私の言葉でいえばこのようになる。発症率とは、生まれたすべての人の中で特定の病気にかかる人の率である。有病率とはある時期に特定の病気にかかっている人の率である。だから、ある病気が途中で治り消えてしまう病気であれば、その病気が何らかの理由で治りにくくなれば、その病気の発症率は同じでも有病率は増加することになる。アトピー性皮膚炎は、昔は85%が成人期には消失していた。だから、発症率と有病率は明瞭に区別して議論しなければならない。

 

4.発症率(incidence)という言葉の使い方

Furue論文の「はじめに」の部分でアトピー性皮膚炎が増えていることを述べているが、古江氏が引用している報告は、有病率(prevalence)が増えていると言っているだけであり発症率(incidence)が増えているとは言っていない。論文の調査方法を見ても、有病率が分かる調査であり、発症率が分かる調査ではない。にもかかわらず古江氏は発症率(incidence)が増えていると述べている。もし単純にincidence とprevalenceの違いを知らなかったというならば、大学教授として問題であるが、古江氏がこの違いを知らないはずはない。わざわざ変える理由は何であるのか。英文チェックの時に変更されてしまったのかもしれない。深くは追及しないでおこう。古江氏は、本論文中では発症率(incidence)について、「はじめに」の部分以外では有病率に近い意味で使用している。すなわち、「ある特定の人々の中で特定の副作用を有する人の割合」という意味に使っている。

なぜこのような使い方をしたかはご本人に聞かなければ分からないが、発症率と有病率を曖昧にし、副作用によって増えていることを初めから除外しようとする考えを入れるための伏線かもしれない。1970年代後半に、ステロイドに対する依存性が外用ステロイドの副作用として報告されている。この副作用はアトピー性皮膚炎と区別がしにくいが、外用を減らせば改善する。現在のアトピー性皮膚炎が増えていると考えられているのはこの副作用がいつまでも残るためである。このことが明らかになることを避けるための一手段と考えることができる。

 

5.ステロイド誘発性皮膚症(steroid-induced dermatitis)の記述

副作用の調査には「酒皶様皮膚炎」が調べられることになっていた。発生していた副作用の表5には、「ステロイド誘発性皮膚症(steroid-induced dermatitis)」とある。考察の項に、一般論として副作用の一つとして「口囲皮膚炎(perioral dermatitis)」が記載されている。少なくとも酒皶様皮膚炎や口囲皮膚炎の二つが調査票に記載されていたために「ステロイド誘発性皮膚症」の表現が用いられた可能性がある。言葉の使い方は問題にしなくてもいい。しかし、もしステロイド誘発性皮膚症(依存性皮膚症)が報告されていてそれを記述していないならば問題ではある。

ここでは、ステロイド誘発性皮膚症の治療について何も記述されていないことである。この副作用名が出ればステロイドを中止することが治療の第一歩である。それを旨く出来たかどうかが皮膚科の臨床レベルの評価基準となるであろうが、それについての記述が無いため評価ができない。

 

論文を評価してきての短い感想

「外用ステロイドはアトピー性皮膚炎治療のためには有益である」と自信を持っているかの如く主張されておられるが、重症度分類で改善したのが38%しかない治療成績では、私ならそのようなことはよう言わんな、というのが感想である。まら、論文は良く考えられていて、自分たちの主張に合わない点は巧妙に避けて記述されている、という感も強い。