脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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Author Archives: 佐藤 健二

第24回アトピック講演会報告

9月 23rd, 2013 | Posted by 佐藤 健二 in 講演会 - (0 Comments)

第24回アトピック講演会(東京)報告

佐藤健二

 台風18号の日に行われた講演会でしたが、朝からフェイスブックなどで開催の有無の問い合わせが殺到しました。東京の皆さんにはやきもきさせましたが、大阪から参加の菊池代表、佐藤美津子、佐藤健二は40分遅れで会場になんとか到着しました。さすがに第1部の乳幼児編では参加者が少なかったですが、第2部ではかなりの参加があり、結局参加者は230人を超えました。ありがたいと思うと同時に問題の広さと危機感の多さに身が引き締まる思いでした。

 第24回の東京講演会は幾つかの意味で画期的でした。一つは代表が替わり、新しく二人の代表になったことです。お二人は新しい息吹をもたらすことのできる技能をお持ちで、前代表が築き上げられた成果を発展させることのできる能力をいかんなく発揮されたと思います。

 開演は5分遅れましたが、その冒頭に、バックグラウンドミュージックの流れる中、アメリカのITSAN(国際ステロイド外用剤依存ネットワーク:International Topical Steroid Addiction Network)が作り、新代表の訳した字幕が出るステロイド依存とその治療を示すアニメのさわりが映されました。そののち、新代表の挨拶とアトピックについての説明がなされました。子どもたちがステロイドで困らないために使用を控えることと、ステロイド依存の人には脱ステロイド・脱保湿を勧めることが説明されました。これらを実現するために、患者がステロイドや免疫抑制剤を使わない治療を選択できるようにすること、ステロイド・プロトピック・保湿剤に対する「依存症の存在」を認めること、小児の治療において「ステロイド・プロトピック」の使用を極力減らすことを求める署名活動の開始(2013.9.15から2014.9.14まで)を発表されました。

 第1部は藤澤先生(ステロイドはなぜいけないのか?エビデンスから解るその理由)と隅田先生(乳幼児の体重増加とアトピーの治療)、佐藤美津子(赤ちゃんのアトピーは自然に治ります)の講演で、子どもにステロイドを使わない方が早く良くなることが説明されました。お二人の感動的な乳幼児体験談の後、今回の講演会で初めての試みとして、パネルディスカッションが行われました。テーマは自由に掻かせるのが本当に良いのかという問題と食物アレルギー検査陽性の子どもに食物を食べさせることについて話がなされました。講演会中に集めた質問の中から多かったものについての質疑応答が少しありました。

 第2部の初めには再度新代表の挨拶があり、アトピックの目的や署名活動について説明がありました。そして、ISTANのアニメが終わりまで流されました。次に佐藤健二(難治アトピーに脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿)と藤澤先生(ステロイドを止めて自然治癒を得るにはどうするか)、水口先生(ステロイドによるアトピーの経過と問題点一脱ステロイド療法の成功のカギー)の講演があり、わかりやすいが感動的なお二人の成人患者体験談をお聞きした後で、前もって記入いただいた質問票を中心に質疑応答が行われました。質疑応答はポイントが絞られているためわかりやすい内容であったと考えます。

 閉会時にはビデオ画像が映されバックグラウンドミュージックが流れるなかで、幾つかの説明がなされました。11月23日の伊勢(三重)講演会、そして忘年会の開催予告もありました。12月14日(土)に大阪で、12月21日(土)に東京です。

 懇親会では、何人かの人に話していただきましたが、ぜひお知らせしなければならないことは、この講演会に参加するためにわざわざイギリスから来られ、懇親会にも参加された方がおられたことです。この方は佐藤健二の「患者に学んだ成人型アトピー治療、脱ステロイド・脱保湿療法」(つげ書房新社、佐藤健二著)を英語訳してくださる方です。ご自分も脱ステロイドをされ、ITSANに投稿されておられます。その中で、脱ステロイド・脱保湿の話をすると大変興味を持たれる方が多かったので、翻訳しようということになりました。ステロイド依存で困られておられる方は世界中におられます。国際的な活動が行えるならば必ずやアトピックの目的が達成できるだろうと考えます。その目的のため、アトピックのホームページも近々英語版ができることになっています。

 このように、新生アトピックは並々ならぬ決意で自分たちの目的を達成しようと頑張っています。皆様のご支援ご鞭撻があればさらに良い活動ができると考えます。私も一緒に頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

皆様

毎日新聞に安藤直子さんの体験談や著書の説明などが連載されています。ぜひお読みください。そして、標準治療でこれほど困っている人間がいることを示すために、毎日新聞に対して、安藤さんの記事について意見や感想を送ってくださればありがたいです。
安藤さんの記事は以下で読めます。「生ける物語:届け1000人の声」の欄です。
http://mainichi.jp/search/index.html?q=%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B%E7%89%A9%E8%AA%9E&r=reflink
またご意見感想は下記にお送りください。
「意見や感想、病気にまつわる体験談を募集しています。〒100?8051毎日新聞科学環境部(住所不要)「生きる物語」係。メールtky.science@mainichi.co.jp。ファクス03・3212・0768」

 私は以下のメールを送っておきました。

毎日新聞 大場あい 様

 私は、大阪府松原市にある阪南中央病院皮膚科で働いている皮膚科医です。以前、安藤様の調査に協力させていただきました。その頃も行っておりましたが、現在でも毎日20名を超える脱ステロイド・脱保湿を希望される入院患者さんの治療をしております。最近も、入院されておられたある患者さんが、「何十年間もステロイド外用剤や保湿剤を塗り続けてきたが、すべての外用剤を中止したら一カ月で良くなってしまった。いったいこの何十年間の治療は何だったのか?」と憤りとあきらめの混ざった口調で述べられておられました。
 最近、多くのマスメディアが、「アトピー性皮膚炎に対する標準治療はよく効いて、医師の指示に従っておれば全く問題は起こらない」旨の宣伝ばかりをしています。しかし、現実には、上記のようなことや安藤さんの記事にあることが広範に起こっています。赤ちゃんや子どもに対する、標準治療を超えるような大量のステロイド外用治療を勧める説には大変な危機感さえ感じます。毎日新聞が掲載している安藤さんの記事は、日本皮膚科学会や製薬企業からは好まれない記事ですが、真実を伝えることがマスメディアの倫理規範ではないかという考えからは、全く勇気あるいい記事のように思います。ぜひこのような真実を伝える記事を多く掲載していただくことをお願いいたします。

佐藤健二

8/17アトピー講演会、阪南中央病院健康教室

8月 12th, 2013 | Posted by 佐藤 健二 in その他 - (0 Comments)

皆様

開催日が近くなりましたので、再度掲示させていただきます。拡げていただければありがたいです。

暑い日が続いています。熱中症にお気を付けください。
さて、
2013年8月17日(土曜) 14:00~15:30頃まで(受付開始13:30)
阪南中央病院健康教室として
「アトピー性皮膚炎は自然治癒を目指そう」と題して講演会を開きます。
演者:佐藤健二
場所は昨年度と同じ「ゆめニティプラザ(ゆめニティまつばら3階)」(近鉄南大阪線、河内松原駅前)です。
参加費:無料
参加可能人数:約130名
連絡先:阪南中央病院 総務課 電話 072-333-2100

暑い中、またお盆休みの最後頃ではありますが、皆様ふるってご参加ください。

米教授、rebound flare(リバウンド悪化)に言及

7月 17th, 2013 | Posted by 佐藤 健二 in 学会 - (0 Comments)

2013年6月15日、第112回日本皮膚科学会総会の「土肥記念交換講座2」において、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科教授、Peter M. Elias先生は招聘講演をされた。アトピー性皮膚炎の治療についてである。内容の多くは、論文Epidermal Barrier Dysfunction in Atopic Dermatitis(アトピー性皮膚炎における表皮バリア機能障害)、Cork MJ, J Invest Dermatol 2009; 129: 1892-1908に沿ったものであった。講演の最後近くで、ステロイド治療に関して、「ステロイド外用はrebound flare(リバウンド悪化)が起こるので、使用を減らすべきである」旨の言及をされた。アトピー性皮膚炎に対してのステロイド外用治療について類似の言及が、この論文には含まれている。アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用には問題がありそうだというのが現在のアメリカの考え方のようである。これに関連して、日本のある皮膚科教授は、「Corkのこの論文は脱ステ派に有利な論文ですね」と述べられた。情勢は少しずつ変わってきている。

 2013年6月14-16日に第112回日本皮膚科学会総会が開かれた。14日のイブニングセミナー5で「経皮感作とアレルギーマーチ」と題して島根大学医学部皮膚科教授、森田英伸先生が講演された。講演抄録には、「最近、Lackらにより食物アレルゲンの経皮感作が食物アレルギーの発症に重要であることが提唱され、加えてアトピー性皮膚炎患者でフィラグリンの異常が見いだされたこと、加水分解小麦含有石鹸の使用で小麦アレルギーが多発したことから、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症には皮膚バリアの障害が根本であると考えられるに至った。」とある。
 アトピー性皮膚炎患者は皮膚バリア機構が障害されているから、一般人より経皮感作が高頻度に起こるであろうと多くの学者が考えている。上記学会でもこの考え方に沿って幾つかの発表があった。そして、バリア機構を正常に復するためにはステロイド外用剤を使用して皮膚の傷を治さなければならない、放置していればアレルギーマーチが進行して種々のアレルギー疾患を獲得することになると主張されている。この考え方は、茶のしずく石鹸でアレルギーを獲得した人の中で、アトピー性皮膚炎のない一般人よりアトピー性皮膚炎患者において小麦アレルギーの発症頻度が高い場合に初めて主張できる考え方である。このイブニングセミナーの座長をされた京都大学医学部皮膚科教授、宮地良樹先生は講演が終わった後で次の質問をされた。「小麦アレルギーを発症した1800人ほどの患者さんの中でアトピー性皮膚炎患者さんは何パーセントぐらいですか」と。森田教授の答えは次のような内容であった、「小麦アレルギーを起こした患者さん1800人ほどの10%ぐらいです。一般の人口中のアトピー性皮膚炎患者さんの比率はだいたい10%ですので同じくらいの頻度です。」と。この数値から確実な見解を出すには、アトピー性皮膚炎患者とそうでない人の二グループ間で、石鹸使用頻度の差、アレルゲン(あるいはハプテン)の違いによる差、アジュバントの働きの違い、ステロイド外用の影響などを検討しなければならないが、少なくとも森田教授が示した数字からはアトピー性皮膚炎患者において経皮感作が高いとは言えないことを示している。
 一般に、角層は低分子量の脂溶性ハプテンを透過させるが水溶性で大きな多糖タンパク質を通さないと言われている。今回問題になっている加水分解小麦のグルパール19sは6万以上という分子量でありこのような大きな分子量をもつものでも差がなかったということであるならば、アトピー性皮膚炎患者にとって経皮感作は一般人と同じ程度に心配すればよいということになる可能性も秘めていると言えよう。また、アトピー性皮膚炎の悪化にIgEが関係するという説も怪しいものであり、この点からも経皮感作を重大視する必要はない。いずれにせよ、現段階でアトピー性皮膚炎患者に、アレルギーマーチが進行するからステロイドを塗って傷を早く治せという治療方針は説得性がないことは明らかである。