脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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世界で最も権威のある教科書の一つであるアメリカの皮膚科学教科書「一般医学の中の皮膚科学」第7版の「予後と臨床経過」の中に次のような記述があります。
「臨床経過:
 この病気は若い小児において一般的により重症でより持続する傾向にある。昔の研究では、84%近くの小児は成人までにアトピー性皮膚炎がなくなる。より最近の研究では、乳児から成人まで経過を見た小児の20%でアトピー性皮膚炎は消失するが、65%で症状の強さの程度ががよりましになる。」(教科書)
 これから判断すると、記載がなく経過の不明な15%の人は除いて、昔は85%の人は成人までに治っていたが、今は成人になっても20%の人しか治らず、65%の人は何らかの形で病気を持続させている。この65%の人が治らないでいる理由は何かが問題となる。少なくとも、昔の治療状況に比べて今の治療が旨く行っているとはいえないということである。これが有病率の増加として現れている。
 同じ教科書には「1960年代以降、アトピー性皮膚炎の有病率は3倍以上に増加している」と記されている。
 有病率は発症率とは別です。今、確実に増加していると言われているのは有病率です。
 発症率は、例えば、2008年に生まれた子供のうち何人の人がアトピー性皮膚炎になるかという率です。例えば10000人生まれて2000人病気になれば、発症率は20%です。有病率はある時点でアトピー性皮膚炎の病気を持っている人の率です。だから、Aと言う病気とBと言う病気の発症率が同じでも、病気が治るまでの期間がAでは1年Bでは2年とすると、有病率ではBはAの2倍になります。昔、大阪府で行われたアトピー性皮膚炎の発症率は変わっていないという結果があります。昔と今で発症率が同じで有病率が今のほうが高いとなれば、治るのが遅くなっていると言えます。なぜ治りが遅くなっているのかが問題となります。
 その答えはステロイド外用剤の使用だと言ってもほとんど間違いありません。なぜなら、ほとんどの人にステロイド治療がなされ、ステロイド治療で治らない人に脱ステロイド治療をするとほとんどの人が良くなるからです。

アメリカ研究皮膚科学会の雑誌の最新号に出ていた論文の紹介
「アトピー性皮膚炎:自然免疫の生涯によって起こっている病気?」
Atopic dermatitis: A disease caused by innate immune defect?
Benedetto AD et al: Journal of Investigative Dermatology 2009; 129: 14-30
 アトピーはこの半世紀間、有病率が増えている。アトピー性皮膚炎の発症と重症度に自然免疫の障害が影響している事を示唆する研究結果が増えている。自然免疫とは、皮膚で作られる抗菌作用のある蛋白質の分泌、皮膚への白血球やリンパ球(NK cell)などの補充、白血球が細菌を食べる能力などです。これらの機能が落ちることによって黄色ブドウ球菌や単純ヘルペスの感染症が起こりやすい、またこれらの病原性微生物によって元々バリアー機能が落ちている皮膚が傷害され、更に細菌やアレルゲンが皮膚を通り易くなって皮膚の障害が起こり、皮膚炎が起こる。またIgEの産生が増え、アトピーが悪化する。
 このように説明しようとしています。
 このような理論だと、黄色ブドウ球菌や単純ヘルペスが感染するとアトピー性皮膚炎の全体がひどく悪化してもよさそうなのに、感染部分だけが悪くなり、感染が治癒すると元の湿疹の状態になります。
だから、アトピー性皮膚炎の悪化と皮膚感染症の悪化とは別のものと考えるべきだと思います。
 個々の引用論文を調べたわけではないのでなんとも言いようがないのですが、人を対象として調べた場合、多くの人はステロイド外用歴のある方だと思います。すると、ステロイドの影響はどのように除外したのかが問題になります。影響を除外できるかどうかも問題です。だから、自然免疫にステロイド外用剤が与える影響をきちんと検討しないと何を調べているのか分からないことになります。
 研究は皮膚しか見ていません。ステロイド外用により生じてくると考えられる内分泌異常、生理不順、発汗異常、抗利尿ホルモン分泌異常などもアトピー性皮膚炎患者の重要な問題点です。これは、皮膚だけを見ていても全く解決しません。また、アトピー性皮膚炎が大人になるまでに治っていくという経過についてはこの説でどのように説明するかは全く取り付く島はありません。依然として、私の本の中で述べたように、アトピー性皮膚炎の原因についての研究はまだほとんど信頼できるものはないといえるでしょう。

会員ブログの利用方法

2008年12月27日 | Posted by 佐藤 健二 in その他 - (0 Comments)

atopic 会員によるブログがほとんど記事がありません。どのように使うのがいいのでしょう?

関西で忘年会、関東では女性だけの忘年会と自由参加の新年会など、徐々に広がり始めましたね。他のアトピーの会も何となく活気が出てきたように思います。今年はatopic の皆さんのご努力で大きな一歩が踏み出されました。来年は更に大きな一歩だけでなく、二歩、三歩−−−と行きたいですね。皆様、お疲れ様でした。来年も頑張れたらと思います。良いお年をお迎えください。そして、少しでも良くなってください。
 来年の私のテーマの一つは、脱ステロイド脱保湿をした後にどういうことが更に出来るかを考え始めることです。じっくりと考えないと思いがけない落とし穴にはまりそうなので、慎重にしたいと思います。