atopicとは

「atopic」とは

「atopic」は、アトピー性皮膚炎の患者会であり、これまでに近畿中央病院(兵庫県・伊丹市)と阪南中央病院(大阪府・松原市)において、佐藤健二先生による脱ステロイド・脱プロトピック・ 脱保湿をした患者と、佐藤小児科(大阪府・堺市)を開業されている佐藤美津子先生のもとで脱ステロイド治療をおこなった乳幼児の家族とが中心となって、下記の理由を持ってボランティア活動を行っている団体です。また、患者さんの「不安」や「疑問」を共有し解決の糸口になるようなきっかけを作る「交流会」の運営や、WEB上において、ソーシャルネットワークサービス(※以降、SNSと表記)「mixi」内で“脱ステロイド・脱保湿療法”というコミュニティの運営や「atopic」ホームページや「近畿中央病院・阪南中央病院 アトピー患者の交流の輪を広げよう」の掲示板を開いています。

このような活動を行っているのは次の理由です。現代社会で「アトピー性皮膚炎」が問題となっています。その患者は乳幼児から高齢者に至るまで幅広い年代層にみられます。そのなかで、ステロイドによるいわゆる「標準治療」やステロイドに代わるプロトピックやネオーラルによる治療を長い間受けたにもかかわらず、一向によくならない患者がたくさんいます。治りにくくなった理由は、患者さんの多くが、治療による影響を受けていない「本来のアトピー性皮膚炎」に「ステロイドの副作用」「プロトピックの副作用」とそこに「保湿への依存」が加わり、「ステロイド依存性皮膚症」、「プロトピック依存性皮膚症」、「保湿依存性皮膚病」という副作用の病態に陥っているからだと佐藤健二先生は指摘しています。

この「副作用」を除く療法が「脱ステロイド療法・脱プロトピック療法・脱保湿療法」です。この治療は非常に忍耐と努力が必要ですが、努力の結果によって症状の改善がみられることを患者さんが実体験しています。このことを私たちは多くの皆さんにお伝えしたいと思います。

atopicの活動

  1. アトピー性皮膚炎の患者さんやご家族などに「脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法」を講演会活動を通じて広く伝えること。
  2. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(以降、ガイドラインと表記)(※参照2)で「ステロイド療法・プロトピック療法」が標準治療だと明言している「日本皮膚科学会」に、標準治療で治らない場合はステロイドや免疫抑制剤を使わない治療も治療の選択肢の一つであることを認めるようガイドラインの「改訂」を要求すること
  3. 「ステロイド・プロトピック・保湿剤に対する依存症の存在」を医師が認め、ガイドラインに記載すること
  4. 小児の治療において、「ステロイド・プロトピック」の使用を極力減らすことをガイドラインに記載すること
  5. 患者による交流会や、WEB上のHPによる情報発信と掲示板運営、SNS上のコミュニティを運営をすること

「脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法」の特徴と注意点

1.「脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法」の特徴

上記のとおり、「脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法」は、薬や保湿の副作用を「取り除く」療法です。「治りにくいアトピー性皮膚炎」だと思っていた症状が薬や保湿による副作用であった場合は、この療法により副作用が良くなることと共に「本来のアトピー性皮膚炎が改善」されることがあります。また、本治療を施したのちに、「本来のアトピー性皮膚炎」の症状があらわれることもあります。この症状は自然治癒に向かうようになります。

長年、脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法を行ってきた佐藤健二先生の療法は「自然治癒」を大切にしています。本療法を行う際は、自己流で行わず必ず専門医のアドバイスを受けてください。

  • ステロイドやプロトピックなどの外用薬は使用しないことを基本とする。
  • 内服ステロイド、内服の免疫抑制剤ネオーラルも使用しないことを基本とする。
  • 脱ステロイド、脱プロトピックとともに脱保湿も行なう。(ここでいう「脱保湿」とは、単に保湿剤を塗るのをやめるだけではなく、風呂やシャワー、厚着なども同様に皮膚を保湿することと考え、中止や制限することを意味する)。
  • 滲出液対策として水分制限を行なう。
  • 基本的には食物制限はせず、何でもバランス良く食べ、必要十分量の栄養を摂る。
  • 規則正しい生活と適度な運動を心がける
    ※詳細は、『患者に学んだ成人型アトピーと治療、脱ステロイド・脱保湿療法』佐藤健二著(つげ書房新社・2008年)を参照のこと

2. 治癒までの「期間」と治癒にあたえる「影響」

また、薬によって傷つけられた皮膚を薬や保湿を一切使わず、各個人の「自然治癒」力で治していく療法のため、治癒にかかる「期間」は人それぞれです。治癒に影響を及ぼす要因は以下が考えられます。

● 薬や保湿の影響

  1. 薬の使用期間→長いとより治りにくい傾向
  2. 使っていた薬の強度→強いとより治りにくい傾向
  3. 保湿の使用期間と頻度に平行
  4. 個々人の皮膚の違い

● 外的な刺激と内的な影響

  1. 外的な刺激「季節の変動(気温・湿度・気圧の変化)」
  2. 内的な影響「ストレスなど」「運動による健康増進」

3. 療法を行うにあたっての注意点

離脱時は一時的に悪化することが殆どです。外用ステロイドの活性が無くなる期間は1か月といわれていますが、ステロイドの影響が残っているので上記のように様々な要因で悪化しやすく一気に治ることはありません。この療法を行うことを決心された学生や社会人の方は「学業」や「仕事」にも影響することを考え、医師に相談のうえ計画的に行うことが大切です。薬や保湿を少しずつ減らしていくといった段階的に行う方法がありますので、専門医にご相談ください。

「atopic」の基本的な考え方

~治りにくくなっているアトピー性皮膚炎の現状をどう捉えるか~

前述のとおり、今日では、いわゆる標準治療を長い間受けたにもかかわらず、一向に良くならないアトピー性皮膚炎の患者さんがたくさんいます。良くならないだけでなく、少しずつ病変部分が拡がり、より強いステロイド外用剤を使用しなければならなくなることもあります。別の医師にかかっても、治療方針は全く同じで、ガイドラインにしたがって「標準治療」(すなわちステロイド、プロトピック、保湿剤を使用する治療法)が行なわれるだけです。

アトピー性皮膚炎患者さんの多くは、上手な治療をしてくれる医師を求め、よいと言われている医療機関を距離をいとわずいくつも訪れます。そして、それでも治らないとなると、今度は高価な民間療法にも頼ることになるのです。私たちの周囲を見回してみますと、ステロイドやプロトピックから抜け出せなくて困っている人がたくさんいます。アトピー性皮膚炎は怖い病気であるという間違った不安や困惑は今まで以上に拡がっているようです。

このような不思議な現象はなぜ起こってくるのでしょう。私たちは、その一番の原因は、日本皮膚科学会によって作られた「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」であると考えています。そして、いわゆる「標準治療」以外の治療はまやかしであるかのごとく、日本皮膚科学会や一般の皮膚科医・小児科医、マスメディアが宣伝していることが大きな問題だと考えます。

ステロイドや免疫抑制剤を使わない治療も治療の選択肢の一つとして認めてほしいという私たちの声が少しでも大きくなれば、「基本的考え方」に掲げていますガイドラインで「ステロイド療法・プロトピック療法」が標準治療だと言っている日本皮膚科学会を動かす事ができると信じ、また乳幼児から小児に対する早期のステロイド外用剤の使用も見直されると考えています。日本皮膚科学会は、「標準治療を十分に説明し実施すれば問題はなくなる」と説明不足に標準治療の不評の原因を求めていますが、私たちは決してそうは思いません。

プロトピックや保湿剤はステロイドの代わりにならない

プロトピックは、ステロイドでは良くならないアトピー性皮膚炎の治療薬として1999年に日本で開発されました。しかしながら、このプロトピックは「プロトピックで治らないアトピー性皮膚炎」を作っただけでした。効果は中程度のステロイドと同じですので、プロトピックのみで何とか症状を抑えることが出来ているか、ステロイドの助けを借りて症状を抑えているだけです。

次に「保湿」についてですが、ほとんどの病院では、アトピー性皮膚炎の治療には保湿が重要であると指導しているので、脱ステロイド療法はしても保湿を続けている人が多いようです。けれども、ステロイドを中止しても保湿を続けていると一向に良くならないことが多く、次第に保湿の回数を増やさなければならなくなる人もいます。このようにして、脱ステロイド療法はしたが保湿治療をした結果、以前よりもひどい悪化を経験して、脱ステロイド療法を続けるかどうか迷いながらも標準治療に戻ることにも踏み切れず、今後どうなっていくのかの見通しも立たず悩んでいる人が相当いらっしゃるようです。

何が変わればよくなるのか

私達の仲間の中には何年何十年とアトピー性皮膚炎で苦しんできましたが、「脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法」を行うことによって、辛い皮膚の症状が消えた人がかなりいます。しかし、なかには薬の副作用から十分抜けきれず皮膚の症状が安定しない人もいます。また、海外においても、患者は多く存在しています。アメリカの「ITSAN」(※参照3)というステロイドの危険性を訴えている患者団体が主催する掲示板には、世界中からステロイドの副作用による皮膚症状に悩み苦しんでいる人が、脱ステロイドを試みるために日夜質問を繰り返しています。その様子は、日本の患者の症状や苦しみと何もかわりません。

日本のみならず、海外においてもステロイドの被害に多くの人が悩み苦しみ、脱ステロイドを試みている様子を見ていると、標準治療で治らず困っておられるアトピー性皮膚炎患者に対して、どのようにすれば「アトピー性皮膚炎に関する問題が改善されるのか?」、という問いに対しての答えは明白です。

具体的には、ガイドラインが正しく改定される必要があると思いますが、ここで一番重要な点は、「ステロイド・プロトピック・保湿剤を中止することによって良くなるアトピー性皮膚炎の患者がいること」、つまり「ステロイド・プロトピック・保湿剤に対する依存症の存在」を医師が認め、ガイドラインに記載することだと思います。つまり、ステロイドなどを減量(あるいは中止)することによって皮膚が悪化する場合も、本来のアトピー性皮膚炎の悪化ではなく、依存性からの離脱症状の場合があることを認めることです。

それは起こったとしても一時的なものであり、減量・中止を続ければ皮膚は良くなっていくことを医師が実際に観察し、認めることが重要なのです。この考えが正しいことは私たちの会の存在はもちろんのこと、世界中にいる患者の「声」そのものが証明しています。そして、医師は、このような患者にはそれまでの外用治療を中止する必要のあることを伝えるとともに、適切に外用治療を中止する知識と技術を持っていただく必要があるのです。(この知識と技術のためには『患者に学んだ成人型アトピーと治療、脱ステロイド・脱保湿療法』佐藤健二著(つげ書房新社・2008年)が参考になります)。

次に、アトピー性皮膚炎の鑑別診断に「ステロイド・プロトピック・保湿剤依存症」の項目を入れ、これらの薬剤の依存症になっている患者を、依存症の無いアトピー性皮膚炎と区別してアトピー性皮膚炎の治療に関わるように医師に注意を喚起することが重要であると思います。なぜなら、依存症の有無で、その後の治療方法が全く異なるからです。

乳幼児から小児に対する早期のステロイド外用剤の使用について

乳幼児期にアトピー性皮膚炎になった子供たちの中には、ステロイドを中止してすぐに良くなり、それ以後も順調に生育している例がたくさんあります。重症であっても、一度もステロイドを使わずにきれいになった子供たちも多数います。

乳幼児期にステロイド外用剤を多く使用した子供たちの何割かは、青年期や成人になってからステロイドに依存性を持つアトピー性皮膚炎となることが推測されています。このような不幸な成人のアトピー性皮膚炎の患者さんをこれ以上出さないためには、小児に対するステロイド(プロトピック)治療を可能な限り避けるようにし、まずは保湿剤などの作用の弱い薬物で治療するようにすることだと思います。なぜなら、多くの小児アトピー性皮膚炎患者は2歳までに自然治癒するからです。ガイドラインにある「ステロイドが第一選択である」旨の記述を訂正することは必要ですが、同時に小児についてステロイド、プロトピックの使用を極力減らすことの記載が必要なのです。

また、皮膚に塗布する外用剤以外にも、喘息に対するステロイドの吸入や、眼科・耳鼻科で使用されるステロイド外用剤も、安易な使用を避けることが重要であると考えています。私たちの経験では、これらのステロイドによって皮疹の改善と、使用中止による皮疹の悪化はしばしば見られる現象だからです。これらの薬物が全身的な副作用を持たないという説には同意することが出来ません。

マスメディアの問題点

「アトピー性皮膚炎」を取り巻く問題は今日でも依然として多くあります。そして、私たちは、その大きな原因の一つは、ほとんどの皮膚科の医師が「治療ガイドラインに沿った治療を行なわないとアトピー性皮膚炎は治らない」とあらゆる所で宣伝するためだと思っています。

また、マスメディアにも問題があります。製薬会社をスポンサーとする多くのマスメディアは、治療ガイドラインに反対する意見をほとんど載せず、皮膚科学会の意見と同じものを載せ、多くの人々の目に入るようにしているのです。

従って、アトピー性皮膚炎の患者さんを守るためには、この大量宣伝に負けずに私たちの考え方を宣伝する必要があると思っています。その一つとして、標準治療を希望されない患者さんご自身が「ステロイドやプロトピックを使用せずに治療してほしい」とお医者さんにお願いし、聞き届けていただくことが重要です。そのために必要な「患者側から提出するインフォームドコンセント」をatopicは作成しました。(※参照4)

もし必要ならば、前記の本『患者に学んだ成人型アトピーと治療、脱ステロイド・脱保湿療法』をお医者さんに読んでもらうように言ってください。この本は、標準治療で良くならない患者さんを実際に治した方法を書いたものです。最近では治療方法などについて医師は患者からインフォームドコンセントを取ることが勧められています。標準治療で治らない人々を治したことが書かれているわけですから、お医者さんに無理強いしているわけではありません。

それでも「ステロイドやプロトピックを使わないと治らない」というお医者さんには、「ステロイド依存症やプロトピック依存症は出ません」という一筆を書いていただきましょう。

最後に~この運動を広げるために~

「脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿療法」をした後でも、皮膚が回復するまでに精神的な要因などから時には悪化する場合もあります。友人関係、恋人関係、家族関係、仕事、学業など数え切れないストレス、また季節の変わり目なども多少なりとも悪化の要因になります。

そこで私たち「atopic」は、治療法を共有したり、症状の悩みやストレスなどを共有することで、解決の糸口を探っていけるような集まりやネット上の掲示板を運営していきます。また、根本的な問題を解決するために、前述の「atopicの活動内容」に記載されておりますガイドラインの改訂を目指して運動活動を続けていきます。そして、多くのアトピー性皮膚炎患者が置かれている現状とその症状を社会的に認識してもらうことで、患者の社会的な立場をよりよいものにしてまいります。

私たちの考えに賛同してくださる方は、活動にご協力いただき一緒に活動をしてみませんか?

  • ※参照2:
    日本皮膚科学会
    →http://www.dermatol.or.jp/
  • ※参照3:
  • ITSAN 国際ステロイド外用剤依存ネットワーク
    →http://itsanjapan.web.fc2.com/(日本語訳版)
    →http://itsan.org/(英語版)
  • ※参照4:
  • 「患者から提出するアトピー性皮膚炎治療のインフォームドコンセント(2012.7.17版)
    →http://atopic.info/informed-consent

TOPへ戻る