Q1. 患者の傾向について
質問者: 男性
「脱ステロイド脱保湿を行う場合、こういうタイプは治療が長くかかる、こういうタイプは比較的初期に治りやすいという傾向があれば教えてほしい。」
※自分の娘も現在脱ステ5~6か月だが、わりと手こずっているようだ。
A1. 佐藤先生
どこの場所がどういう状態というデータはまだない。今までに分かっているのは、先ほど話した安藤(直子)さんの調査でステロイドを使わない医者のとこにかかっている人を中心とした1000人くらいのデータの中においては、長期にステを使っている人の方が治りにくいという結果が残っているということ。自分の経験の中で治癒期間と相関のある検査データはないが、ステロイドをやめる時にそれまで連続してどれくらいの強さのステをどれくらいの期間使っていたかというのは関係があるようだ。長期・広範囲の人の方が治りにくい。また、最近はプロトピック使用者は長引く傾向がある。自分のところの患者の平均入院期間は45日だが、プロトピック使用者は平均で5日ほど長引いている。LDHの改善経過をみると明らかに統計的な差があり、治りにくいということが分かる。
atopic水島:生活の状態によって治りにくいという例もあるが、(質問者の)娘さんはどういう状態?
質問者:妊娠中。今までは仕事を毎日していたがパートに変わった。週1~2で人前にでる。マスクをしながらでなきゃ人前には立てない状態。
参加者女性(A1補足 妊娠中の脱ステについて):自分は去年8月に2か月くらい入院していて9歳と来年5歳の子供がいる。自分は小さいときからずっとステロイドを使用しており、妊娠を機にやめようと思った。しかし妊娠中は妊娠していないときよりもストレスがかかるし仕事もあったので、生活ができなくなって脱ステを断念した。子供は2人とも3ヶ月くらいからひどい湿疹になったが、自分が小さいときから苦しんでいたので使わずに耐えたら、6ヶ月くらいからきれいになった。妊娠中の脱ステは本当に大変なので、場合によっては今はステロイドを使うのも選択肢かもしれない。子供が生まれてから湿疹ができてもその時ステを使わなければいいのではないか。
atopic水島:脱ステを行う時期というのは大切。ステロイドが悪だと自分は思っていない。それのおかげで青春を楽しめ進学して就職も結婚もできた。ステロイドを塗らずアトピーが酷いことで不登校になったりする場合もあり、タイミングというのが大事だと思う。自分が入院していた時も妊婦はいて、痒みで眠れないから睡眠薬がほしいと先生にいったらお腹に赤ちゃんがいる状態では処方できないと言っていた。普通の薬(妊娠していなければ服用できる薬)も使えないから大変だとは思う。ステロイドを使って死ぬわけではないので使うのも選択肢、ただパートも行けている今の強い精神力があるのなら大丈夫かもしれない。いけるような気もする。先生の考えは?
佐藤先生:自分の本にもあるが妊娠中の脱ステは勧めていない。が、水島の言っている通り仕事に行けているのであれば、自分たちが見ている酷い患者さんほどの症状ではないのかもしれない
質問者:娘の状態は講演で出てきたスライドの写真とまったく同じ状態。
佐藤先生:それでも5~6ヶ月経っているのであればその他に治癒を遅らせる原因がある可能性もある。単純に妊娠が悪化原因になる人もいる。今はある意味決断の時期かもしれない。
Q2. 保湿について
質問者: 女性
「ステロイド未使用者のアトピー患者では“保湿は正しい治療”とあるが、ステロイドを一度でも使った患者は一度脱ステしてステロイド成分が体内から抜けたとしても保湿ではコントロールできないのか?」
A2. 佐藤先生
脱保湿後、長く経過した場合はできる場合もある。退院後5ヶ月くらいして化粧など(の保湿になる行為)をしても全く悪くならない人もいる。しかしやってみないとわからない。はじめは結婚式などどうしても化粧したい時にやってみて、その後2~3日様子を見て悪化したりカサブタがポロポロ落ちたりということがあればやってはダメだが、大丈夫なら様子を見ながら少しずつ試していくと良い。保湿は絶対にダメということではない。
Q3. アトピーについて
質問者: Q2.同女性
「脱ステはアトピー自体を治すものではないと本に書いてあったが、根本的なアトピーはどうすればよいのか?」
A3. 佐藤先生
できるだけ自分の体を鍛え自然治癒力をあげるしかない。
Q4. アトピーと精神的ストレスについて
質問者:女性
「精神的ストレスはアトピーの悪化や治癒に関係するか?」
A4. 佐藤先生
精神的ストレスで悪化する人は確かにいる。入試で一気に悪化し終わると一気に軽快した患者がいた。どういうメカニズムで悪くなるかはわかっていないが実際にいる。
対処としてはきっちりとした準備(受験勉強など)をしておく、仕事であればなるべくストレスがかからないようにうまくこなしていくしかない。
Q5. 保湿について
質問者:女性
「ステロイドを塗っていなくても保湿を続けることが治癒しない原因になるのか?」 ※息子がアトピー。生後2カ月で首に血のにじむ筋。小児科でステロイドをもらい塗ったらすぐに跡形なく消えたので、効きすぎておかしいと思い塗るのをやめた。その後酷くなったが放っておいたら良くなり、3歳くらいで再発。一時はとびひと合わさり小児科ですごく怒られたがやはりステロイドの効き目が恐ろしく塗らずにいた。色々試したが中学くらいで何にもすまいと諦めた。息子の様子を見ているとストレスがかかると悪化し、楽しいことがあるときは軽くなるようで、ひょっとしたら気持ちの問題じゃないかと思うようになった。なので自分で治してと息子に言い構わずにいるが、会社で壁にぶつかったりすると一気に酷くなりクビになって帰ってきたりするので、知らんぷりではダメなのかもと思うように。何もしないほうが治りがいいのはそうだと思う、気持ちの問題なのではという疑問が少しある、そして今まで保湿だけはさせていて色々な保湿剤をとっかえひっかえ使っていたのでそれが治らない原因だったのだろうか。
A5. 佐藤先生
過去にステロイドを塗ったことのない人では、上手に保湿を続けるといい場合が多い。ステロイドを止めて保湿も止めた人が再び保湿を長い間すると、ある時いきなり悪くなる人が少なくない。精神的なストレスと合わさっているのかも。ちょっとずつやめていく方がが精神的ストレスがかかった時に悪くなりにくいのかもしれない。どういう保湿をしていたか?
質問者:熱いシャワーを20分くらいした後保湿を顔中心にしっかり朝晩塗っていた。
佐藤先生:保湿をしていたのは顔だけでも、ステを止める時と同じように保湿もやめた時は全身が悪化する。話を聞いた状態では保湿をやめていく方法しかないように思う。
質問者:保湿をやめるよう説得するのが難しい。
佐藤先生: 信じてもらうしかない。自分の患者でもステは悪いと思ってやめたが保湿を続けていたら5年間何も変わらず、保湿をやめてよくなった人もいた。その事実を伝えるしかない。
Q6. 季節による悪化と冬の過ごし方について
質問者:女性
「アトピーの悪化に季節は関係するのか?冬に悪化する場合過ごし方のコツはあるか?」
※3歳の子供。3ヶ月くらいから湿疹がでてステロイドを使い、今年6月に脱ステ。現在5ヶ月経つが、3ヶ月で少し回復したものの冬に向けて悪化した。季節は関係するのか?冬の過ごし方は?
A6. 佐藤先生
季節は関係する。夏悪化タイプと冬悪化タイプがいて冬が多いというデータもある。ヨーロッパなんかは明らかに冬悪化タイプが多く、乾燥が原因と考えられる。
ステロイド使用時も冬に悪化したか?
質問者:塗っていた時は特に変化なかったように思う。
佐藤先生:入浴は?
質問者:2~3日に1回
顎が酷いが口の周りはたびたび拭いたほうがいい?
佐藤先生:3食の食事後拭いたり洗ったりするのは問題ない。滲出液が出るから拭くというのは良くない。
質問者:薄着で布団も薄い方がいいというがうちの子は唇が紫になりガタガタしているくらい。それでも放っておくべき?
佐藤先生:ガタガタしているくらいならかければいい。いつも厚着という状態でなければ。
佐藤美津子先生:アトピーは不思議。アトピーの世話を親がしてしまう。一度きれいになってそのままいければ万々歳だが子供は特に振幅が激しい。それがだんだん穏やかになるはず。
親に「ジェットコースターに乗るな」と言っているように親が一喜一憂ハラハラしてはいけない。食べこぼしなどでジュクジュクしても(成長と共に)良くなるのであまり必死にならないように。
Q7. 外用薬の使用中止のタイミングと影響について
質問者:女性
「現在弱酸性水とスクワランを使用しており、やめようと思っているが悪化が不安。どのように進めるべきか」
※(娘について)生後1カ月で乳児湿疹。頭皮湿疹で小児科でステロイドをもらい使用していたが、湿疹箇所がだんだん顔に広がり1カ月後にはストロングのステロイドに。アレルギー科に変えて血液検査をし、ステロイドではなく消毒と保湿と食事改善で全身症状は軽快した。しかし今日講演会に参加して自分が使っていた消毒はタチが悪いと知った。8月まで使っていたが皮膚呼吸ができなくなるからと9月から弱酸性水とスクワランに変わった。すると膝の後ろと肘に今まで見たことないくらいの湿疹がでたが続けていると枯れてきた。矢先今日の講演会だったのでやめ時かなと思っているが、やめたら消毒をやっていた時のがどのように悪化するか不安がある。へそや膣、鼻の中などのジュクジュクがどうすればいいか。
A7. 佐藤先生
自分は消毒薬の話はしていない。免疫抑制剤のこと?
質問者:名前分からないが市販されているような物ではなく調合された感じのもの。一緒に行った人が薬の成分を調べてもらったら自分はもう使わないと言ったが自分はステロイドよりマシかなと思って使った。
佐藤先生:液体だったか?色は?
質問者:白い軟膏
佐藤先生:(今の話と自分の講演内容から推測した限り、その消毒と言われていたのは)プロトピックが入った免疫抑制剤だと思う。
質問者:体に残っているのを出るまで時間がかかるのか?
佐藤先生:8月にやめていたら今はもうないと思う。
質問者:弱酸性とスクワランもやめていいか?
佐藤先生:ゆっくり焦らずやめると良い。弱酸性水は今すっぱりやめても大して影響ないと思う。スクワランのみ続け、入浴後すぐ塗っていたのを30分あけ、1時間あけとだんだん間隔を長くして塗らなくていいようにするとしんどくないと思う。
Q8. 乳児のアトピーと食について
質問者:女性
「小麦や卵など検査結果で陽性と出ても食べてもいいのか?」
A8. 佐藤美津子先生
自分のところでは検査をあまりしない。100以上の数値が出ても食べても大丈夫な子がいるが、そう言っても自分の子が試してショックが出ないかと聞かれればあげてみないとわからない。数値が0でも(アレルギー反応が)出る子は出る。したがって昔ながらの「1さじあげて様子を見る」という方法で十分ではないかと思う。血液検査で(アナフィラキシー)ショックを救える子より、検査をしたことで不必要な食事制限をさせられる子の方がはるかに多いと考えている。
佐藤先生:大人が血液検査すると大抵みんな陽性(反応が出る)。しかし食事制限は一切していない。それでも良くなっているので、食事とアトピーは関係ないといえる。
Q9. アトピーではない湿疹への市販薬の使用について
質問者:Q8同女性
「夏に発症するウエスト部分の痒みに市販薬を使っているが、それもやめた方がいいのか?」
※アトピーといわれていないが夏になるとウエスト部分が痒くなりステロイドを処方された。今は市販のものを使っているがそれもやめたほうがいいのだろうか?また、現在甲状腺機能低下症でホルモン剤を使っているがそれとの関係もあるか?
A9. 佐藤先生
(質問者くらいの年齢層の人は)多形慢性痒疹というのに罹る人が少なくない。この場合は抗ヒスタミン剤の服用と薄いステロイドを少し長い目に使うことでしか治らないようだ。できれば非ステの保湿剤で対応できればいいが、ダメならそれを使うしかない。この場合は(症状が治まった後に)ステロイドをやめても、やめたことで全身悪化するということはない。
Q10. 電話相談・診察について
質問者:女性
「何度か受診した後であれば電話で相談にのってもらうことは可能か?」
※3歳の娘がアトピー脱ステ脱保中。なるべく掻くなと言わないようにして市販の保湿などで対応しているが、近所に先生のような指導をしてくれる人がいない。
先生のところを一度受診しても定期的に行くというのは難しい。何度か受診した後電話で相談させていただくことは可能か?
A10. atopic水島
申し訳ないが電話での対応はやめている。(皮疹の解釈の違いなどによる)誤解を防ぐため。症状を見ながら診察するようにしている。
Mixi内の“子供の脱ステ脱保湿”トピで同じような状況のお母さんたちが書き込みをして情報交換しているのでそれも参考になると思う。書き込み内容に不適切なことがあれば先生からatopicに指摘がきてその情報をまた流すような形をとっている。