脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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阪南中央病院皮膚科 佐藤健二 2014.6.9

  厚生労働省は、一般急性期病床を日本全体で9万床(現在ある病床数の約四分の一)減らす方針です。これを可能にするために、入院患者さんの在院日数を減らそうとしています(急性期病院では病院全体で平均18日以内)。その方法は、厚生労働省が決めた入院期間を超えての入院では、病院が赤字になるまで入院診療費を極端に下げ、その入院期間を超えて患者さんの入院を継続しにくくする方法です。当院での「アトピー性皮膚炎」患者さんの場合、その決まった日数は21日か24日です(病名によって若干違います)。
  以前に行った当皮膚科での調査によると、「アトピー性皮膚炎」患者さんはその9割の方が80日以内に退院されておられます。一般急性期病棟への20日余りの入院では十分な治療を行えません。そこで別の入院方法を考える必要があります。今回の医療制度の変更には新しい病棟制度の設置があります。急性期を脱しても直ぐに自宅へ復帰できない患者さんを受け入れるための地域包括ケア病棟が新設されました。阪南中央病院も地域包括ケア病棟を作ることにしました。この病棟では最長60日の入院期間があります。この病棟に一般急性期病棟から移る(移動日は、地域包括ケア病棟の空きベッドの有無によって、22日や25日から少しずれることはあります)ことによって、ほとんどのアトピー性皮膚炎患者さんの治療が可能となります。
  このような方法を取るに当たっていくつかの問題点がありますが、この問題点を抱えながらでないと入院治療ができないことを入院患者さんにはご了承いただく必要があります。その一つは、二つの病棟を利用するに当たって、主治医は変わりませんが、決まった入院期間が過ぎると一般急性期病棟から地域包括ケア病棟へ移動していただく必要があります。もう一つの問題は、地域包括ケア病棟移動後は、入院診療費の計算方法がかわり、患者負担が増えることがあります。三つ目は、「アトピー性皮膚炎」患者さんの入院期間は80日余を超えることは困難なことです。日本で数少ない脱ステロイドができる病院を守るために、ご理解とご協力をお願いいたします。なお、医療費については高額医療制度を利用できるように、入院前に手続きをお願いいたします。

12月13日現在、阪南中央病院の皮膚科入院は、成人男子、小児、成人女子ともに若干名ですが入院待ち無しに入院が可能です。冬休み中も間欠的に医師の診察はあります。

1.皮膚科の学会(2012年3月24日)で発表した資料で、脱ステロイド入院をした人の数とその成績です。

 阪南中央病院へ移ってからの調査で、2008年4月から2011年10月(43ヵ月)の間に入院された患者さんを対象としました。再入院の追跡は2012年1月までです。

 3歳以上のアトピー性皮膚炎患者さんは360人で、全て脱ステロイド目的です。症状の重い方が多く、全身の90%以上が赤くなっている紅皮症の状態の患者さんは53%に達しました。
 入院の目標は、社会復帰(仕事、育児、通学)可能状態まで皮膚を改善することです。360人の内、2回入院された方が28人、3回入院された方が5人です。だから、複数回入院された患者さんの率は9.2%、大まかには10人に一人の人が複数回入院されておられます。再入院までの期間の調査はまだしていません。
 入院中にステロイドを再開された方は2人です。その内1人の方は再脱ステロイドに成功されてます。このお二人は共に3回入院された方です。
 治療を中断された方は7人です。ステロイドを再開した方2人を入れて360人中9人の方が治療に失敗したと考えると、(360-9)/360=351/360=0.975となり、入院目標に成功された方は97.5%となります。従って、入院治療の成績は非常に高いと言えると思います。

2.外来患者さんの統計はできていません。

 外来通院の方は経過を追いにくいので調べていません。脱ステロイド治療は大変厳しい治療ですので、入院するほどの意気込みで腰を据えて治療に向かわないと成功しないことがあります。外来での説明で「脱ステロイドは大変しんどい治療ですよ」と説明を受けても、実際にひどい状態になると不安になり、ステロイド治療をされる先生の所に駆け込まれる場合は有ります。このような場合「脱ステロイドをする医師はひどいことをする」とお叱りを受けますが、ステロイドを止めてひどい症状が出るのはステロイドを塗ってきたからです。ステロイドを塗らずにワセリン程度で治療してきた場合は、ワセリンを中止しても急な皮疹の悪化はほとんど起こりません。しかし、ステロイドを塗ってきた場合は急激な悪化はほとんど必発です。この違いを理解されないお医者さんが多いですね。「脱ステロイドをする医師はひどい」のではなくて、「ステロイドを塗ってきたお医者さんがひどい離脱反応を起こすようにしてきた」のです。間違っていただきたくないですね。

4月から阪南中央病院の皮膚科外来の場所が変わります。以前は2階でしたが、移転したところは1階です。正面入口をはいってすぐ右に向かった突き当たりです。
 産婦人科が以前の皮膚科の前に移転しましたので、待合が狭くなり、移転となりました。ご連絡が遅くなり申し訳ございません。先週はほとんど毎日午後10時を過ぎて病院を出ましたので書き込む余裕がございませんでした。

 阪南中央病院の第102回健康教室で「アトピーはなぜ治りにくくなったか」と題して話をすることになりました。アトピー性皮膚炎のガイドライン(標準治療)で治りにくさが克服できるかを検証します。治りやすくなる方法をご紹介します。
 会場へは、近鉄南大阪線で阿倍野橋から準急行で河内松原駅(250円)まで行きます。駅前に「ゆめニティプラザ」がありますがその3階の「ゆめニティまつばら」で行います。

講演会の日時事場所など
日時:2012年5月12日 午後2時から午後3時半
場所:近鉄南大阪線「河内松原駅」下車、駅前の「ゆめニティプラザ」ゆめニティまつばら3階
無料です。
詳しくは
http://www.hannan-chuo-hsp.or.jp/kanren/class/index.html
をご覧ください。