脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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妊婦のステロイド外用が胎児に及ぼす影響

 妊娠中のステロイド外用による胎児への影響についての総説論文が出ました。以下の論文です。
「妊娠中の外用ステロイドについての証拠に基づいたガイドライン Evidence-based (S3) guideline on topical corticosteroids in pregnancy Chi CC et al, British Journal of Dermatology 2011; 165: 943-952」
 注意すべき内容をお知らせいたします。イギリスでの調査では、次のことが行われました。最終生理の85日前から出産あるいは胎児死亡までの間中ステロイドが処方された妊婦とステロイドを使用していなかった妊婦の二つのグループの妊婦から生まれた子供について比較しています。結果は次の通りです。強力なステロイドを外用すると胎児の成長抑制が起こるが、弱いステロイドでは起こらなかった。胎児の口唇顔面裂や早産、胎児死亡は起こらなかった。デンマークでの調査では、妊娠前から妊娠初期3ヶ月の間にステロイドを処方された妊婦とステロイドを外用していない妊婦で比較しています。ステロイド外用と口蓋裂単独との間で相関は無かったが、口唇裂単独か口唇裂に口蓋裂を加えたものについては軽い相関が認められた。しかし、容量・反応関係とステロイド強度・反応関係からみるとこの関係は不確かであった。
 イギリスの調査で問題となるステロイドの強さについては次のように弱いものと強いものとに分類されています。日本で発売されているステロイドのみを記します。一覧表の左側の濃度はChiさんが記したもの(外国では、日本と商品名は同じでも濃度が色々違うのが販売されている)で、右側は日本で発売されている濃度です。

ステロイドの強さ  Chi氏の濃度%   日本での市販濃度%
弱いもの
 アルメタ————-0.05——————0.1
 リンデロン———–0.025—————-0.12
 キンダベート——–0.065 ————— 0.05
 フルコート———–0.00625————-0.025
強いもの
 リンデロンDP ——0.05-0.064——— 0.064
 リンデロンV——–0.1-0.12 ————-0.12
 デルモベート——-0.05——————0.05
 ネリゾナ———–0.1-0.3 —————0.1
 フルコート———0.025—————–0.025
 トプシム———–0.05——————0.05
 ロコイド————0.1——————–0.1
 フルメタ———–0.1———————0.1
 ケナコルトA——-0.1——————–0.1
処方された薬の量が増えると胎児の成長抑制が起こる危険が更に高くなることも認められています。

 胎盤でのステロイドの不活化率と胎児への移行率も記されています。胎盤では11β水酸化ステロイド脱水素酵素によってステロイドの作用が不活化されます。研究結果のあるもののみが表示されています。ヒドロコルチゾン(コーチゾール)が生体のステロイドで不活化されてコルチゾンになります。
                不活化率%      胎盤通過率%
プレドニゾロン————————————–10-12
ヒドロコルチゾン————–85——————-15
ベタメタゾン—————————————–28-33
メチルプルドニゾロン——————————-44.6
デキサメタゾン————————————-67
フルチカゾン——————0
      
佐藤のコメント
 弱いステロイドで薄めずに外用して体重増加抑制の認められなかったのはキンダベートだけです。アルメタは2倍、フルコートは4倍、リンデロンは5倍に薄めたもので初めて体重増加抑制が認められなくなっています。弱いと思われているロコイドやケナコルトAでも体重増加抑制が認められています。また、日本では、ロコイドやケナコルトAはキンダベートと同じⅣ群のマイルド群に分類されているので、キンダベートでも起こる可能性はあると考えるべきでしょう。従って、胎児の体重増加抑制を起こさせないためには、やはりステロイドを外用しない方が良いと言うべきでしょう。
 生体のステロイドであるヒドロコルチゾンでも胎盤で85%も不活化されるようになっていることは、胎盤がステロイドが大量に胎児に届くことを阻止し、胎児を保護していると考えられます。ベタメタゾンはリンデロンですが、かなりの率で胎盤を通過しています。合成ステロイドはヒドロコルチゾンよりかなり作用は強いので問題が起こっている可能性があります。デンマークの結果がそれを示していると考えるべきでしょう。喘息予防のステロイド吸入薬であるフルチカゾン(商品名フルタイド)は全身的にも吸収することは分かっていますし胎盤を通過することも分かっています。フルチカゾンが胎盤を通過した後全く不活化されないことは今後大きな問題を起こす可能性があります。要注意です。

4月から阪南中央病院の皮膚科外来の場所が変わります。以前は2階でしたが、移転したところは1階です。正面入口をはいってすぐ右に向かった突き当たりです。
 産婦人科が以前の皮膚科の前に移転しましたので、待合が狭くなり、移転となりました。ご連絡が遅くなり申し訳ございません。先週はほとんど毎日午後10時を過ぎて病院を出ましたので書き込む余裕がございませんでした。

 阪南中央病院の第102回健康教室で「アトピーはなぜ治りにくくなったか」と題して話をすることになりました。アトピー性皮膚炎のガイドライン(標準治療)で治りにくさが克服できるかを検証します。治りやすくなる方法をご紹介します。
 会場へは、近鉄南大阪線で阿倍野橋から準急行で河内松原駅(250円)まで行きます。駅前に「ゆめニティプラザ」がありますがその3階の「ゆめニティまつばら」で行います。

講演会の日時事場所など
日時:2012年5月12日 午後2時から午後3時半
場所:近鉄南大阪線「河内松原駅」下車、駅前の「ゆめニティプラザ」ゆめニティまつばら3階
無料です。
詳しくは
http://www.hannan-chuo-hsp.or.jp/kanren/class/index.html
をご覧ください。

2012年2月1日から近鉄、河内松原駅から阪南中央病院へ無料バスが運行され始めました。以下をご覧ください。
http://www.hannan-chuo-hsp.or.jp/access/bus.html
ご参考までに:
近鉄、阿倍野橋駅(天王寺)から河内松原(かわちまつばら)駅まで250円、準急で9-10分かかります。
近鉄、阿倍野橋駅(天王寺)から布忍(ぬのせ)駅まで250円、普通各駅停車で18-20分かかります。
河内松原は、阿倍野橋から乗れば布忍より二つ遠い駅ですが、準急行に乗ると時間は早いです。運賃は同じです。重たい荷物をお持ちの場合、歩きにくい場合などは便利かと思います。ご利用ください。

脱ステ入院期間

2012年01月22日 | Posted by 佐藤 健二 in 阪南中央病院 - (0 Comments)

阪南中央病院へ脱ステロイドで入院した場合、入院期間は気になる所だと思います。392人のデータを見ました。中央値は42日です。平均値とその標準偏差は50.7日±38.2日です。中央値は、日数の少ない人から順に並べて、丁度半分の所すなわち196人目の人の入院日数を示します。それが42日だったということです。平均値と8日ほど差があるのは、入院期間のかなり長い人が少数ですが存在したということで生じています。入院時、平均は45日ぐらいですと説明させていただいてましたが間違っていなかったと思います。
 なお、入院の平均年齢は28歳でした。