脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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古江論文批判 2

2011年01月24日 | Posted by 佐藤 健二 in 医学論文 - (0 Comments)

古江論文の批判2を書きました。今回はステロイド外用量が中心です。表がずれて見にくいかもしれませんがお許しください。第3弾は副作用について書く予定です。
古江論文批判 2
Furue M et al
Clinical dose and adverse effects of topical steroids in daily management of atopic dermatitis
British Journal of Dermatology 2003; 148: 128-133
アトピー性皮膚炎の日々の治療における外用ステロイドの臨床用量と副作用
1.要約の結論はどう解釈すべきか
 要約の中の結論は「外用ステロイドはアトピー性皮膚炎治療のためには有益であるが、かなりの率の患者は外用ステロイドで満足のいく治療ができない。このような患者のためには外用ステロイドの量や強さの調節と追加の治療が必要である。」と述べている。考察の最終には同じ内容について少し詳しく「結論として、外用ステロイドはアトピー性皮膚炎治療のためには有益であるが、外用ステロイドの塗布を増やしてもアトピー性皮膚炎が重症状態にとどまる亜群があるように思える。このような患者に対しては、例えば紫外線照射、治療に関する教育、心理カウンセリングのような他の治療と共に、外用ステロイドの量や強さの調節が必要であるように思われる。」となっている。
 「外用ステロイドの塗布を増やしてもアトピー性皮膚炎が重症状態にとどまる」との評価は重症あるいは最重症の人々と治療後に増悪した人々に対してであると考えられる。このような評価であれば、増やすのは良くない、すなわち外用量について現状維持か減量が考慮の対象となる、と解釈せざるを得ない。では重症者が一体どの程度のステロイド外用量を示していたのであろうか。そして、現在Furue氏はどの程度の外用量をお勧めなのか見てみましょう。
2.ステロイド外用量はどうであったか
 ステロイド外用量の多少を表現するのに、Furue論文は中央値、第75百分位数、第90百分位数で示している。第75百分位数とは、例えば100人の人がいて、外用量の少ない順に並べ、外用量の少ない方から数えて第75番目の人の外用量ということである。中央値はちょうど真中の人の値である。外用量の少ない人の数が相当多く、外用量の多い人の数が相当少ない場合は、このような表現がしばしば用いられる。しかし、外用量の分布をより正確に理解してもらうためには、平均値を付け加えるか、最低値と最高値を示すレンジ(範囲)を示すべきである。Furue論文の場合、アトピー性皮膚炎の罹患期間についてはレンジを記しており、この論文のタイトルに「外用ステロイドの臨床用量」が入っているのであるから平均値や範囲を示さなかったことはそれなりの意図があると考えられる。おそらく外用量が非常に多いと判断される使用量があったのであろう。そして、それを隠したかったのであろう。しかし、重症例や最重症例および増悪例と外用量最多10%の患者との関係は重要な観点であるから、明らかにされるべきであった。なぜなら、第91番目から100番目までの人の外用量が現在の10倍量であっても90番目の人の外用量は論文中の報告量であるからである。
 さて、外用量であるが、ステロイド外用剤の種類を度外視して、6ヶ月間の外用合計量(体全体に塗った量)の中央値、第75百分位数、第90百分位数は、幼児では25g、42.8g、89.5gであり、小児では45g、80g、135gであり、青年成人では95g、180g、304gである。この値の増加は指数関数的であり図を書いて最高値を推定すると、幼児では150g、小児では190g、青年成人では400gとなる。Furue氏は「調節」症例と「調節不良」症例に分けて中央値、第75百分位数、第90百分位数を示している。この値から最多使用量を推定すると、「調節」症例と「調節不良」症例のそれぞれの値は、幼児で100g、120gであり、小児で170g、300gであり、青年成人では350g、500gとなる。
 この最多外用量が500gであることは、古江氏が自著「ステロイド外用薬アラカルト、−実践への道−」(古江増隆著、株式会社ミット、2005年)に記述されている厚生労働省研究班による重症度の目安と外用量の適量を示した表(40−41頁)との関連で大変重要な意味を持ってくるが、これは後で(7.重症アトピーにステロイドを減らせと言っているか?)述べる。
3.外用量とステロイド強度と患者状態との関連についての評価
 Furue氏は結果の項目で次のように述べている。「外用ステロイドの使用合計量は、調節群より調節不良群で実際に多かった。その統計学的差は小児群より青年成人群でより明瞭であった。興味あることには、幼児群と小児群の調節不良患者はマイルド(中等)とウィーク(弱)ランクのステロイドを有意に多く使用していた。青年成人群では調節不良群は調節群に比べて有意に多量のストロンゲスト(最強Ⅰ)・ベリーストロング(上強Ⅱ)・ストロング(強Ⅲ)ランクのステロイドを使用しているようである。」と。
 問題は「幼児群と小児群の調節不良患者はマイルド(中等Ⅳ)とウィーク(弱Ⅴ)ランクのステロイドを有意に多く使用していた。」の記述である。統計学的に有意差があったからこのことを強調して記述したのであろうが、このことを強調する必要はない。外用合計量が幼児では多い傾向があり、小児では有意に多い状況で幼児と小児でより弱いステロイドの外用量が多かっただけであるからである。実際は次のことを述べなければならなかった。[全身への外用合計量については、幼児では調節群と調節不良群に統計学的有意差はないが調節不良群が多くのステロイドを外用している傾向があり、小児と青年成人では有意に調節不良群で外用ステロイド量が多くなっている。より強いステロイドの使用量とより弱いステロイドの使用量に分け調節群と調節不良群との間で比べてみると、次のようになる。より強いステロイドの使用量を見ると、幼児と小児では調節群と調節不良群との間で統計学的有意差はなかったが、小児群ではすでに調節不良群に多い傾向があった。青年成人群では調節不良群でより強いステロイドの使用量が有意に多かった。また、より強いステロイドの使用量とより弱いステロイドの使用量の年齢別の相対量を見ると、幼児、小児、青年成人と年齢が高くなるにつれて、より強いステロイドの使用量が増える傾向が明瞭であり、青年成人ではより弱いステロイドの使用量は使用合計量のごく一部でしかなかった]、と。
 ではなぜ、「幼児群と小児群の調節不良患者はマイルド(中等)とウィーク(弱)ランクのステロイドを有意に多く使用していた。」の文章を入れたがであるが、「調節不良群でより弱いステロイドを多く使用していた」という点だけを取り上げて理解すると、あたかも[
[弱いステロイドを多く使っていたから調節不良になったのだ、より強いステロイドを多く使っていれば調節できていたかもしれない]と思わせる文章であるからである。統計表をじっくり見てみると事実はこのような理解をすべきでないことが分かる。原因であるか結果であるかは別にして、調節不良群でより多くのステロイドが使用されているのである。
 ここで要約の結論の考え方について再度記しますと、「外用ステロイドの塗布を増やしてもアトピー性皮膚炎が重症状態にとどまる」との評価であれば、増やしても意味がない、すなわち外用量について現状維持か減量が考慮の対象となる、であろう。重症例の場合は少なくともステロイド外用量の維持あるいは減量すべき対象がいるわけで、これは調節不良群、だから、より多くのステロイドを外用している患者が外用量を減らす必要があるということを意味しているのである。
4.6か月の治療で中等症以上である率
 Furue論文では、6ヶ月間のステロイド治療後に最重症と重症である症例と研究開始時点より増悪した症例が「調節不良uncontrolled」例に分類され、6ヶ月間のステロイド治療後に中等症と軽症である症例は「調節controlled」例に分類されている。中等症と軽症の定義を示すと、中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる(炎症皮膚病変が体表面積の10%未満の時)、軽症:面積に関わらず、軽度の皮疹のみみられる(乾燥皮膚、落屑、かすかな紅斑のような、ほとんどが軽度の皮膚病変)、である。熱傷の受傷範囲でしばしば用いられる「9の法則」で判断すれば、頭部全体と同じ程度の皮疹のある場合が中等症の中の最重症症例ということになる。従って、アトピー性皮膚炎でしばしばみられる苔癬化局面のある部位、肘窩、膝窩、手関節、顔面の一部に皮疹のある場合が中等症程度ということになる。
 この程度の皮疹からさらに改善すれば軽症になると思われるが、6か月のステロイド治療で中等症までに留まっている率がどの程度であるかを計算してみた。2歳未満では33%(67/206)、2歳以上13歳未満では65%(343/531)、13歳以上では64%(324/503)である。これでは6カ月のステロイド治療によって好発部位の皮疹は全くよくなっていないことになるのではないのか。そして、「幼児の7%、小児の10%、青年成人の19%は、より多くの外用ステロイドを塗布したにもかかわらず、最重症か重症状態にとどまったか増悪を経験した」のである。
 考察の中に次の文言がある。「多くの患者はこの研究が始まる前にステロイドを使用していたことと、教育、激励、その他の色々な治療をしてきていたことが強調されなければならない。だから、改善上の変化をステロイドだけに帰すことは非常に難しい」。67+343+324/206+531+503=734/1240=59.2%が典型的皮疹にとどまっていて、さらにこのような評価をするならば、なぜ結論の「外用ステロイドはアトピー性皮膚炎治療のためには有益である」と言えるのであろうか。
 「調節不良uncontrolled」群が全体で13%(164/1240)存在する。6カ月ステロイド治療してこの状態であることは、ステロイド治療がどういう意味を持つのかが問われる必要があるだろう。不思議なことに、この調節不良群のステロイド外用量は記述されていない。ステロイドを使っての治療で、よくならない症例がどの程度ステロイドを使っていたかは、群としての多い少ないと共に、個々の患者でどの程度使用していたかを記述するのは一般臨床家にとって非常に重要な参考資料となるであろうに、その値を示してはいないのである。隠したかったのであろう。
5.ステロイドで上手く調節されているか
 考察の項目中で「これまでの治療で大部分の患者は上手く調節されている(下線は佐藤による);しかし、幼児の7%、小児の10%、青年成人の19%は6カ月の治療後に最重症あるいは重症にとどまっている、あるいは増悪を経験している。外用ステロイドの総量はウイルソン等やムンロとクリフトによって報告された量よりはるかに少ない」と、言っている。結果の項では、「調節されている」という表現であったが、考察になって突然「上手く調節されている」に変わっている。根拠は、おそらく外国人の報告にあるステロイド外用量に比べてFurue氏らの研究では外用量がはるかに少ないということなのであろう。この二つの論文は1973年印刷の論文である。この頃、論文を書き始めて印刷になるまでには1年ほどかかると考えれば、まだⅢ群(強)以下のステロイドで治療されている時期の報告である(添付資料「日本で有名なステロイド外用剤の発売開始年月とステロイドの強さ」参照)。30年後に書かれているFurue論文では強力なステロイドが広範に使用されている。特に青年成人患者に対するステロイドでは、ⅣとⅤのステロイドはほとんど使用されていない。このように30年近くも離れた治療状況の違いを無視して、外用量の比較をすることは適切であるとは言えない。30年前では効果の弱いステロイドが量的に多く使われていて当然である。だから、上記二つの論文を根拠に上手く調節されているというのは言い過ぎである。従って、「調節されている」を「上手く調節されている」に変えることはやってはいけないことであろう。
 青年成人患者の調節不良群は調節群よりより強いステロイドを多く使っていると述べた後で、「成人のアトピー性皮膚炎の再発皮疹は、局所治療に抵抗すると報告されているので、青年成人群では外用ステロイドに抗炎症効果に対してより反応しないのかもしれない。」と言っている。高年齢患者により強いステロイドを多量に外用していたことの言い訳を得たいがためにこの報告を引用したのである。しかし、この報告は1936年のものであり、ステロイド外用剤の全くない時代の外用剤への反応を示している。強力なステロイド外用をしても治らなくなった皮疹と全くステロイドを塗ったことのない皮疹の治りにくさを比較することには無理がある。成人重症アトピー患者が脱ステロイドをすると良くなっていくという情報が頭にあり、この情報を少しも入れないで自分の考えを無理やりとおすためには、比較すべきでない情報を比較するという無理をしているのである。ステロイドによって毛細血管拡張や皮膚萎縮のあるような皮疹とステロイドの副作用のない皮疹を同じように考えることは科学者のすることではないように思われる。勿論Furue氏はこのようなことは分かっているが黙して語らない。
6.阪南中央病院入院患者の治療成績
 私の病院に入院される患者さんは、①ステロイドを使いながら、②保湿剤のみを使いながら、③ステロイドを止めた後悪化した状態で、④保湿剤を止めた後で悪化した状態で、⑤ステロイドも保湿も止めた後で悪化した状態で、入院される。この患者さんの約半分は紅斑部分が全身の皮膚の90-95%を超える紅皮症状態である。この人々のほとんどが、嘘だと思われるが2−3カ月で中等症程度に改善する。その方法がいわゆる「脱ステロイド・脱保湿」である。すなわち、ステロイドを中止し、保湿も中止する。その他にすることは水分制限、止痒剤内服、入浴の調節、ガーゼ保護等のスキンケア、ある程度下肢に痛みがなくなれば散歩などの運動(理学療法)である。その一部は好発部位の皮疹も消失するのである。少なくとも重症例についての改善率は明らかに脱ステロイド脱保湿が優れている。この比較についてのいくつかの留保条件を述べておくと、一つは皮疹の評価の基準がFurue論文には詳しく書かれていないので同じ重症度評価をしているかどうかが決められないことである(勿論、皮膚科学会の重症度分類に則ったものであろうが、双方が同じ基準を作ることはなかなか難しい)。もう一つは、Furue論文に出ている患者の皮疹はステロイドを外用している皮疹であるが、私の患者の皮疹はステロイドも保湿もしていない皮疹であることで、同じ重症度の評価でも同じ性格の皮膚であるとは言えないことである。
7.重症アトピーにステロイドを減らせと言っているか?
 古江氏は、2005年に株式会社ミットから、「ステロイド外用薬アラカルト、—実践への道—」と題する本を出版した。その「Ⅴ.ステロイド外用薬の使用法、Q28 塗布量の目安について」(40-41頁)の中に「全身にくまなく外用すると成人では25gが必要です。幼少児ではおよそ15g、乳児ではおよそ10gが必要です」と、述べている。そして、「厚生労働省研究班による重症度のめやすと外用量の適量」を表に示しています。その表は「1回の外用量はどの程度が適量か?」と題して、軽症はごく少量、中等症(体表面積の10%未満に皮疹)には5gチューブで1/2本以内、重症(皮疹面積10-30%)には3/2本以内、最重症(皮疹面積30%以上)には全身に塗るには4-5本必要と記してある。アトピー性皮膚炎患者が6ヶ月間(180日)、毎日あるいは隔日にステロイドを塗るとすると一体何グラムになるか計算しよう。6カ月はFurue論文での治療期間である。
皮疹面積1日量g 6カ月隔日g 6カ月毎日g
成人 幼少児 乳児
10% 1/2 x 5 = 2.5 225 450 270 180
30% 3/2 x 5 = 7.5 675 1350 810 540
全身 3/2÷3/10 = 25 2250 4500 2700 1800
これが現在のお勧めの外用量である。この批判文の「2.ステロイド外用量はどうであったか」には、青年成人の調節不良群の最多外用量は500gと推定している。おそらくほぼ全身に皮疹のある症例であったであろう人に500gを外用していたのである。そして、「外用ステロイドの塗布を増やしてもアトピー性皮膚炎が重症状態にとどまる」症例があると言っているにもかかわらず、約9倍の4500g外用することを勧めますと臆面もなく表明することができるのである。ここまで来ると、Furue氏の誠実さを疑いたくなっても多くの人は良しとされるであろう。製薬会社は満足でありましょう、このような研究者が大学におられて。

日本で有名なステロイド外用剤の発売開始年月とステロイドの強さ
(ⅠからⅤは本文中を参照のこと)
発売開始 ステロイド 強さ
1950-1960年代
1958.5 プレドニン眼軟膏 (眼)
1960.5 オイラックスH Ⅴ
1961.7 ネオメドロールEE (眼・耳)
1961.8 レダコートクリーム Ⅳ
1961.9 フルコートクリーム Ⅲ
1962.2 エキザルベ Ⅴ
1963.1 レダコート軟膏 Ⅳ
1965.12 ベトネベート Ⅲ
1966.1 リンデロンA軟膏 (眼・耳)
1966.3 リンデロンV Ⅲ
1967.1 フルコート軟膏 Ⅲ
1967.9 プレドニゾロン Ⅴ
1968.2 グリメサゾン Ⅳ
1970年代
1970.7 リンデロンVG Ⅲ
1972.6 プロパデルム Ⅲ
1972.12 デキサメサゾン Ⅳ
1973.4 ドレニゾンテープ Ⅲ
1975.10 トプシム Ⅱ
1975.10 ロコイド Ⅳ
1979.4 デルモベート Ⅰ
1980年代
1980.12 ネリゾナ Ⅱ
1982.2 ビスダーム Ⅱ
1982.8 リドメックス Ⅳ
1983.2 パンデル Ⅱ
1984.3 キンダベート Ⅳ
1985.9 ジフラール Ⅰ
1986.1 トクダーム Ⅲ
1986.6 ザルックス Ⅲ
1986.6 ボアラ Ⅲ
1986.7 マイザー Ⅱ
1987.1 メサデルム Ⅲ
1987.10 リドメックスL Ⅳ
1987.11 リンデロンDP Ⅱ
1988.5 アルメタ Ⅳ
1990年代
1993.11 フルメタ Ⅱ
1993.11 アンテベート Ⅱ
1997.3 エクラー Ⅲ
1999.3 テクスメテン Ⅱ
備考
1.軟膏、クリームを区別していないのは同時承認あるいはどちらかしか製剤がない場合
2.1960年代は軟膏とクリームは別々に承認。以後は殆ど同時承認
3.1970年代前半までは強さのランクがⅢからⅤ
4.1975年以降にⅡとⅠが出る。しかし、弱いⅣも時々出る。1975-79は1種、1980年以降は3種
5.2000年以降は新しく開発されなくなった。ジェネリックの出現と市場占有率の上昇が見込めなくなったから。
6.眼科用ステロイドが皮膚用のⅢランク以上のものを作らなかったことが明瞭。動物実験で目に大変な副作用が出たに違いないと思われる。たとえば、角膜潰瘍、角膜消失、白内障、緑内障など
7.ステロイドの強さのランク付けは、Ⅰ:ストロンゲスト(最強)、Ⅱ:ベリーストロング(上強)、Ⅲ:ストロング(強)、Ⅳ:マイルド(中等)、Ⅴ:ウィーク(弱)

皆様
楽しかったですね。60人ほどの参加でしたか?水島様ご苦労様でした。集金係の方ご苦労様でした。私が把握している人で遠方からの参加者は、東は神奈川県、西は鳥取県、高知県でした。ほんとにご苦労様です。
 楽しいことだけではなく、どんどん活動の幅を広げていきましょう。先日の選挙でツイッターが威力を発揮しました。これをどう使いこなすかが重要でしょう。アトピック関東のIさん。どうやればよいかもう一度お教えください。これなどを使ってアトピックの活動の広報を広げましょう。子どもたちにつらい思いをさせないために。
 私は忘年会3連ちゃんでしたのでグロッキーでした。来年もよろしく。

kiriさんの書き込み(mixi脱ステロイド・脱保湿療法、アトピーに関する一般的な記事、2010.11.27)を紹介します。私の脱ステ本の中で同じようなことが記されてあることが紹介されています。以下のkiriさんの紹介文をじっくりお読みください。
 一般的なニュースかどうか分かりませんが、、9年前の2001年に発行された「アトピーはもう難病じゃない」という元慶応義塾大学医学部皮膚科医医局長・医学博士で現在菊池皮膚科医医院長をされている菊池新先生の本です。
H8年から2年間アメリカの国立衛生研究所でアトピーを主に研究をされてきたみたいで、
標準治療をされている先生の本で日本の医療の問題点を書いてるのが面白いなと思って読んでます。
書かれている文章が本当かどうか不明ですが。
気になった部分です。
P.22
③「悪しき日本のシステム」
 日本の国立がんセンターを、10倍にも20倍にもしたような、とんでもなく大きな研究施設の集合体。それがNIH,アメリカの国立衛生研究所である。
 なにしろ研究施設が、皇居の内堀どころじゃなく、外堀の内側ぐらいの広さを持っている。
その中に、例えばガンの研究所とか、免疫の研究所とか、運動機能の研究所とか、数え切れないぐらい建っているのだ。僕はそこに2年近くいて、免疫とか、アトピー中心の研究をしていたんだけど、その研究費用は湯水のように出してくれる。いくらでも研究してくださいという姿勢なのである。初めにも言ったけど、アメリカの底力、凄いところはそんなところにあるのだと痛感した。
 ところが日本の国はそうした費用をケチるから、大学病院はどうするかというと、製薬会社とつるむしかない。つまり新薬を世に出すために、病院の先生に頼んで「治験」というものをおこなうのだ。新薬を使って治療をし、そのデータを一人分につき数十万円で製薬会社に売るのである。僕も医局長をやっていたから、もちろん治験もやっていた。
 ところが問題なのは、
「新しい薬を使って治験をやりたいんですが、どうします?もちろんまだ認可された薬ではないので、副作用が出る可能性もあります。でも、今まで効かなかった薬よりも効く可能性もあるんです。これは決して強制ではありませんから、よく考えてお決めになってください。」
 と、きちんと説明をしていれば問題は少ない。ところが、中には治験をやるとは言わずに勝手に治療をやってたりする医者がいて、これがアトピー患者をさらに苦しめる原因となっている。なぜなら、強いステロイドのような塗り薬を与え続けていると、最初のうちはきれいに治るんだけど、そのままにしてるとだんだんと効かなくなってきて、経験不足の医者はさらに強い薬を使うようになってしまう。しまいには使う薬がなくなってきて、そうした新薬に手を出すようになり、患者さんの方も藁にもすがる思いで、
「お願いします」
 となってしまうのだ。挙句の果てが、皮膚の至る所から体液が滲み出してくるようなグチャグチャな状態になってしまう。
 そうしたアトピー患者の犠牲の上に、治験というものがおこなわれているのだが、それが新薬のために本当に役立っているならまだいい。日本の医療システムが腐っているというのは、そうしたデータまでが改ざんされているケースも少なくないということなのだ。多額の費用をかけて開発された新薬に、副作用が非常に多いとか、これは効果がないなんて結果が出ると大損になってしまうため、都合の悪いデータを握りつぶすなんてことが、信じられないかもしれないけど、大手を振ってまかり通っているのである。日本の医学研究のほとんどは、製薬会社から金を奪い取ってやっているに等しい。医者と製薬会社のギブ・アンド・テイクで、
「先生、たんまりと払いますから、いいデータ作ってくださいよ」
って暗黙の了解があるわけ。だから、日本で開発された新薬は、そのままじゃアメリカやヨーロッパでは薬として売れない。向こうでもういちど治験をやり直してからじゃないと認可されないのである。日本の医療行政が完全に崩壊しているというのを向こうは知っているから、ぜんぜん信用されていない。日本の治験がどんなにいい加減なものか、もうハナから信用されていないのだ。
 他の病気でも同じこと。たとえば抗癌剤の治験をやっていて、患者さんが死んじゃったなんてことはよくあることなんだけど、そういうのはみんな握りつぶしちゃう。何か他の原因で死んだことにしてしまうのだ。それで、内部告発なんかされて、時たま社会問題化する場合もあるけれど、その内部告発にしたって威張れるものじゃない。中には正義感に駆られてやる人も少しはいるのかも知れないけど、たいていは自分の上にいる人間の足を引っ張るためにやっている。あいつがいなくなったら、次は俺が助教授になれるなんて。
中略
薬全般に対して、だから医者の側にはバイアスがはいっている。特に大学病院なんて、たとえばステロイドの治験をさせていただいて、研究費を何千万円もいただいている製薬会社の悪口は、絶対に言えないようになっているのだ。厚生労働省のお役人だって同じこと。利権や天下り先のことを考えると、とりあえず自分の任期の間は無難に過ごして何も変えまいとする。
 そうしたら正しいと思うことも言えなくなってしまう。薬害エイズの問題だって、根っこは同じ。あれほどひどい薬害じゃなければ、そんなもの今でもいっぱいある。

 この論文は、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン(日本皮膚科学会雑誌2009;119:1515-1534)の最高責任者が書いた論文です。ガイドラインは「現時点において、アトピー性皮膚炎を十分に鎮静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏である。」と謳っています。その程度がどれほどかご検討ください。まさか、自分の論文は証明できていませんとは言っていないと期待いたします。
 何回かに分けてその論文の概略を報告します。
Furue M et al
Clinical dose and adverse effects of topical steroids in daily management of atopic dermatitis
British Journal of Dermatology 2003; 148: 128-133
アトピー性皮膚炎の日々の治療における外用ステロイドの臨床用量と副作用
要旨
背景:外用ステロイドはアトピー性皮膚炎に対する最重要治療として用いられている。
目的:診療所におけるアトピー性皮膚炎に対する日々の治療のための外用ステロイドの臨床用量を決めることとその副作用を明らかにすることである。
患者と方法:1271人の一連のアトピー性皮膚炎患者(幼児210人、小児546人、青年成人515人)の多施設後向き分析。
結果:6か月の治療期間中に、幼児、小児、青年成人アトピー性皮膚炎各患者グループの90%において、それぞれ89.5g、135g、304g以下の外用ステロイドが全身に塗布された。大部分の患者は旨くコントロールされた;しかし、幼児の7%、小児の10%、青年成人の19%は、より多くの外用ステロイドを塗布したにもかかわらず、最重症か重症状態にとどまったか増悪を経験した。副作用について、頬の毛細血管拡張の発生率は、より長期の罹病期間を持ちかつ6カ月の治療期間中に顔面に20g以上を塗布した患者では増加する傾向があった。肘窩膝窩のステロイドにより作られた皮膚萎縮は、女性より男性により高頻度に観察された。
結論:外用ステロイドはアトピー性皮膚炎治療のためには有益であるが、かなりの率の患者は外用ステロイドで満足のいく治療ができない。このような患者のためには外用ステロイドの量や強さの調節と追加の治療が必要である。
はじめに
 この論文の目的は、アトピー性皮膚炎(AD)患者が多くなっており、外用ステロイド、保湿剤、抗ヒスタミン剤がADの最重要の治療薬として使われているが、外用ステロイド長期使用への恐怖が世界中の多くの患者でステロイド恐怖症を生んでいる。しかし、外来で治療されているAD患者への外用ステロイドの量と副作用についての情報はほとんどない。この点について明らかにすることがこの研究の目的
研究方法
 この論文は、福岡県の日本臨床皮膚科学会に属する皮膚科医(主として開業皮膚科医から構成)77名に診察されている外来患者についてのデータである。1999年に実施。
 少なくとも6ヶ月間の経過を観察した。調査項目は、年齢、性、罹病期間、治療前の全体的な重症度、6ヶ月間の伝統的な外用ステロイド治療後の全体的な重症度、臨床的改善の評価、顔面・被髪頭部・体幹・四肢への6ヶ月間に使用した各ランクのステロイドの合計量、単純ヘルペスやカポジ水痘様発疹症の合併、伝染性軟属腫の合併、副作用(頬の毛細血管拡張、肘窩膝窩の皮膚萎縮、痤瘡と毛嚢炎、多毛、細菌感染、皮膚真菌症、酒皶様皮膚炎、外用ステロイドによる接触皮膚炎、ステロイドによる萎縮線条)である。
 全体的な臨床重症度は「最重症(最)」、「重症(重)」、「中等症(中)」、「軽症(軽)」に分けた。それぞれの定義は以下の通り。(本来言いたいことを記した。括弧内は英語を直訳したもの)。
最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる(炎症皮膚病変が体表面積の30%を超えている時)
重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満にみられる(炎症皮膚病変が10%を超えて30%未満まで見られる時)
中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる(炎症皮膚病変が体表面積の10%未満の時)
軽症:面積に関わらず、軽度の皮疹のみみられる(乾燥皮膚、落屑、かすかな紅斑のような、ほとんどが軽度の皮膚病変)
 臨床的改善は、6ヶ月間の患者の全体的な臨床経過を評価する医師によって、「治癒あるいは著明改善」、「改善」、「軽度改善」、「不変」、「増悪」と評価された。外用ステロイドの強度は「ストロンゲスト」、「ベリーストロング」、「ストロング」、「マイルド」、「ウィーク」に分けられた。
結果(検討内容によって数値が少し変化するが、記入の無いものなどもありしかたがない)
 登録された症例
 幼児   0≦ <2歳 210名(男124、女74)
      平均±標準偏差 1.1±0.5歳 (ピークは1.1歳より少し低い)
 小児   2≦ <13歳 546名(男268、女250)
      平均±標準偏差 5.6±3.3歳 (ピークは5.6歳より少し低い)
 青年成人 13歳≦    515名(男279、女201)
      平均±標準偏差 24.6±10歳 (ピークは24歳より低年齢)
 治療効果(表1にはステロイド6カ月治療の前と後の臨床的重症度の変化を示している。評価の記入の無いものを除いて、表1を分かり易く書き変えた。幼児グループ、小児グループ、青年成人グループ別に記す。各グループは縦に見てください。左に、治療前の重症度と人数、右に、変化した重症度ごとに重症度・人数・その%を記す。表がずれています。正しくは http://8617.teacup.com/atopy/bbs の12月13日の同名の題の表をご覧ください)
幼児           小児          青年成人
 前   後        前   後       前   後
 最2  最        最14  最3(21)   最30  最15(50)
     重            重5(36)        重6(20)
     中2(100)        中5(36)        中7(23)
     軽            軽1(7)        軽2(7)
 前   後        前   後        前   後
     最            最2(2)         最2(1)
 重23  重8(35)    重90  重27(30)    重146 重65(45)
     中9(39)         中44(49)        中58(40)
     軽6(26)         軽17(19)        軽21(14)
 前   後        前   後        前   後
     最            最            最
     重            重3(1)         重6(2)
 中98  中41(42)   中299  中155(52)    中259 中161(62)
     軽57(58)        軽141(47)        軽92(36)
 前   後        前   後        前   後
     最            最            最
     重1(1)         重            重
     中6(7)         中11(9)        中4(6)
 軽83  軽76(92)    軽128  軽117(91)   軽68  軽64(94)
 臨床的重症度についての著者の評価を記します。
 最重症と重症のアトピー性皮膚炎の頻度は青年成人アトピー性皮膚炎(AD)グループの方が他のグループより優位に高い。大部分の患者では、6か月の伝統的な治療の後でADの臨床的重症度は改善か変化なしである(コントロールされたグループ)(有意差あり、p<0.001)。しかし、幼児ADの7%(206人中15人)、小児ADの10%(531人中51人)、青年成人AD患者の19%(503人中98人)は最重症か重症状態あるいは増悪を経験していた(コントロールできていないグループ)。
 (この結果のまとめについていくつかの疑問がわきます。それを列挙します。
1.治癒患者無しということ
   臨床的改善の評価基準に「治癒」が含まれているが、この調査のいずれの症例においても治癒が無かったことである。昔の研究では2歳までにある程度が、成人までに84%が治癒していたにもかかわらず。最近の研究でも20%は治癒するのである。このことはこの治療法の有効性について強い疑いを持つものである。
2.コントロールされているという評価の恣意性
   コントロールされているグループの中には、6か月のステロイド治療前と治療後で重症度に変化がないunchanged症例がコントルールされているという評価になっているcontrolled group。一方で、コントロールされていないグループの中にもuncontrolled group治療前と治療後で重症度に変化のない症例が、小児で、最重症は14人に3人、重症は90人中27人、青年成人で、最重症は30人中15人、重症は146人中65人の人がいる。中等症で変化がなければコントロールされており、重症者や最重症者では変化がなければコントロールされていないという評価になっている。このように異なる評価をする理由は何であろうか、何も説明されていない。治療に対する変化がコントロールされているか否である。ある時期の病状の重い軽いではない。
3.幼児・小児のグループ別に評価すれば、軽症であった症例の増悪例が多い
   軽症の幼児グループでは3例中76例で改善が無く、1例で重症に、6例で中等症に増悪している。小児グループでは、128例中117例で改善が無く、11例で中等症に増悪している。幼児と小児の軽症患者を合わせれば、211人中18人が悪化しており、統計学的には有意差が無いかもしれないが、等閑に付すことのできない問題と考える。
4.青年成人での重症度の増加
   なぜ青年成人でこのように悪化がひどくなるのであろうか。
 比較のために佐藤小児科で行われたステロイドを使わない治療の治癒率を載せておく。佐藤小児科での調査は顔面の湿疹だけの経過を追っているが、調査対象が1歳未満の子供であるため、顔面の皮疹が中心であることを考えると、絶対比較してはならない違いであるとは思えない。なお、ステロイドを使用していてもいなくても、受診後はステロイドを使わない治療をしての結果である。
 441人を対象とした(ステロイド使用者129名、ステロイド不使用者312名)。治癒症例は389名(88%)、治らずに治療を中断した者は52名(ステロイド使用者31名、ステロイド不使用者21名)であった。ステロイド使用者の中で治癒症例は98名(76%)、平均6.4カ月必要であった。ステロイド不使用者の中で治癒症例は291名(93%)、平均4.8カ月必要であった。なお、ステロイド使用者で治療中断までの平均期間は2.5カ月であり、ステロイド不使用者では3.3カ月であった。ステロイドを使っていてもいなくてもステロイドを使用せずに皮疹が消えるまでに5-6カ月しかかからず、治癒率が76-93%とステロイドを6カ月使って治癒が全くないとでは大変な違いであることは明瞭でありましょう。)

2011年最初のアトピックの講演会開催のお知らせ。
第14回アトピー性皮膚炎講演会(静岡)
日時:2011年1月29日(土)13:35-17:15
場所:静岡市清水文化センター、本館棟1F会議室
(定員110名、現地で先着順、予約なし)
静岡県静岡市清水区桜が丘町7-1  TEl:054-354-1311/FAX:054-354-1317
参加費:無料
アクセス:
 ・静岡鉄道電車「桜橋駅」より徒歩約2分 
 ・JR清水駅より、しずてつバス市立病院線「桜橋駅前」バス停下車、徒歩約5分
 ・JR東海道本線「清水駅」よりタクシーにて約5〜10分
内容:
  第1部 講演 第2部 患者体験談 第3部 質疑応答
成人型アトピー性皮膚炎は、ステロイド依存を伴ったアトピー
脱ステロイド・脱保湿療法で治そう
治りにくいアトピー性皮膚炎についてもっと知っていただきたいと、この講演会を企画しました。「アトピー性皮膚炎は怖い病気?アレルギー?」「治療はどうすればいいの?」「小児でのステロイド依存症を減らすために何をすればいいの?」
このようなことを阪南中央病院皮膚科部長 佐藤健二が講演します。また、小児科医の視点で、後援の佐藤小児科(堺市)佐藤美津子も参加しますので、小さいお子様のアトピーでお悩みの方もご参加ください。
懇親会:有料(実費)。講演会終了後、近くで懇親会あり。じっくり話をしたり質問したりしたい方はご参加ください。講師や患者が参加します。
主催:atopic(治らないアトピー性皮膚炎に対する脱ステロイド・脱プロトピック・脱保湿を広げる会:略称 atopic)
責任者:水島郷博  atopic HP http://steroidwithdrawal.web.fc2.com/
お問い合わせ先:steroid_withdrawal@yahoo.co.jp
後援:佐藤小児科 大阪府堺市中区堀上町123 ℡:072-281-0215
今後以下のサイトで情報が得られます。参考にしてください。
http://steroidwithdrawal.web.fc2.com/index.html
http://8617.teacup.com/atopy/bbs
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1758719