Journal of Investigative Dermatology に以下の二つの論文が載りました。
一つ目はこれです。
Cutaneous T-Cell Lymphoma after Dupilumab Use: A Real-World Pharmacovigilance Study of the FDA Adverse Event Reporting System
デュピルマブ使用後に皮膚T細胞リンパ腫:米国食品医薬品局副作用事例報告制度の実社会の薬物警戒研究
Lavin L, Dusza S and Geller S
J Invest Dermatol, 2025; 145:211-214
米国食品医薬品局副作用事例報告制度の報告を利用して研究しました。結論として、アトピー性皮膚炎の症状に対してデュピルマブを使用すると、痒みは減るが皮膚T細胞リンパ腫が増えたとのことです。しかし、喘息の症状や副鼻腔炎の症状に対して使用してもリンパ腫は増えないし、皮膚以外のリンパ腫や基底細胞癌、扁平上皮癌は増えていないとのことです。
この論文を受けてこの雑誌のコメント欄に以下の論文が出ています。
Cutaneous T-Cell Lymphoma and Dupilumab Use: A Multifactorial and Complex Story
皮膚T細胞リンパ腫とデュピルマブ使用:多因子的で複雑な話
Beylot-Barry M and Staumont-Salle D
J Invest Dermatol, 2025; 145: 9-11
このコメントの要旨は臨床的示唆に出ています。
「臨床的示唆
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は、デュピルマブ開始後に生じることがある。
薬物警戒資料は、アトピー性皮膚炎を持つ患者のみがデュピルマブに関連したCTCLを経験していることを示唆している。
もしアトピー性皮膚炎がデュピルマブ開始前に非典型的な像を示したり治療中に悪化すればCTCLの診断を考慮すべきである。」
そして次の考えを示している。
「デュピルマブ関連CTCL発症の奥にある機構は議論のある所だが、おそらく色々な重複する要因が関係しているであろう。
仮説として:
前もって存在する皮膚の炎症が、デュピルマブで治療された患者においてCTCLが発生する必須の段階であり、おそらく腫様発生的慢性炎症とデュピルマブが作った免疫調節変位の両者が関わり、T細胞のクローン出現を促進させているのであろう。」
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