以下の文章を岩波書店、雑誌「世界」編集局へ送りました。
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雑誌「世界」安藤直子論文(深刻化・長期化・難治化するアトピー、求められる患者主体の医療、世界、2009年10月号、210-219頁)を読みまして感じたことを書いてみました。ご一読ください。
安藤直子氏の雑誌世界に掲載された論文(深刻化・長期化・難治化するアトピー、求められる患者主体の医療、世界、2009年10月号、210-219頁)が大きな注目を集めることは、アトピー性皮膚炎に関して大変な問題が存在することを意味する。そして、この問題はそのほとんどがアトピー患者により何年も前から発せられている。安藤氏の場合でも、ステロイドを止めることによって、すなわち脱ステロイドをすることによってよくなっており、日本皮膚科学会の治療ガイドラインに大きな問題点のあることを指摘していると私は考える。
日本皮膚科学会は2008年、2009年と2年連続で「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」(以下、ガイドライン)を日本皮膚科学会雑誌に掲載した。上記問題に対して日本皮膚科学会がどのように反応したかを見るに、これを正面からは全く取り上げておらず、唯一、ガイドラインの「はじめに」の中に「アトピー性皮膚炎は‐‐‐患者への十分な説明や治療へのコンプライアンス・アドヒアランスを考慮すべき疾患」と述べているにすぎない。なぜこの表現が皮膚科学会の反応であると言えるかは、「患者への十分な説明や治療へのコンプライアンス・アドヒアランスを考慮すべき」なのはすべての疾患において言えることであり、わざわざこのような表現を取らなければならなかったことは何らかの事情が存することを暗に認めているが故なのである。しかし、「治療へのコンプライアンス・アドヒアランス」とは、私なりに訳してみれば治療の承諾と継続であり、ガイドラインを認める治療を行うかどうかそれを続けるかどうかを問うているだけであり、「はじめに」の終わりに「患者の意向を考慮して」とは述べているが、患者の意見を聞く意思は全くないことを意味している。そのことは、2009年ガイドラインの「図3 アトピー性皮膚炎:治療の手順」の中に「保湿性外用薬、外用法の具体的な説明、適正治療に向けての患者教育」と記されており、ステロイドを使わない治療を希望するかどうかを患者には全く問わず、ガイドラインに沿った治療を推し進める教育のみが考えられている。勿論、この治療の手順の中には脱ステロイド療法は全く含まれていない。そのかわり、ガイドラインの「Ⅴ.治療」の第6項目の「その他の治療法」中に名指しではないが、脱ステロイド療法は「科学的に有効性が証明されていないものが多く‐‐‐むしろ、その健康被害の面に留意すべきである」と述べ、脱ステロイドは排除すべき治療に含まれているのである。
ではステロイド治療が根拠あるものであるかどうかについてガイドラインはどのように述べているであろうか。ガイドラインで治療方法の第一番に述べられている言葉は、「現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に沈静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏である。」と有効でかつ安全であると断言している。しかし、文献はまったく引用されていない。治療における証拠はインターネットに出していると述べてはいるが、上記断言のところには引用文献を示していない。このことは有効性と安全性について自信を持って示しうる根拠を持ち合わせていないということである。
安藤氏の論文は、内容的には、一方で、不確かであるステロイド治療を最大限に持ち上げ、他方で、苦しい中多くの患者が自分の体を張って獲得した脱ステロイドによるアトピーからの解放を不適切治療であるとして排除する日本皮膚科学会への痛烈な批判、アトピー治療に関して患者無視の治療を進める日本皮膚科学会への適切な批判である。雑誌世界が権威ある立場の者の文書だけでなく、権威から排除されている立場の者の文書(安藤氏の論文)を公平に掲載された勇断に感謝するとともに、今後も公平な出版活動に邁進されることを期待してお礼の言葉とさせていただきます。
なお、私は成人型アトピー性皮膚炎患者さんを脱ステロイド脱保湿療法によってその疾患から解放することのお手伝いをさせていただいている皮膚科医で、阪南中央病院に勤めております佐藤健二です。私には著書「患者に学んだ成人型アトピー治療、脱ステロイド・脱保湿療法」(つげ書房新社、2008年)があります。
Author Archives: 佐藤 健二
岩波出版月刊雑誌「世界」10月号に安藤直子さんの論文「深刻化・長期化・難治化するアトピー、求められる患者主体の医療」(210-219頁)が載りました。ご自身の経験と患者調査に基づいた内容で、大変参考になると思います。ご一読をお勧めいたします。そして、感想を編集部へ送りましょう。
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第30回近畿アトピー性皮膚炎談話会(2009.9.26)で国立成育医療センターのアレルギー科医長の大矢幸弘先生(今年の9月5日にNHKでアトピーについて話された先生)が話された内容で、食事アレルギーとアトピー性皮膚炎との関係は、最近の学説ではほとんど関係がないという考え方に変わっていると話されました。この学説は、システマティックレビューという、最近の最も信頼できる分析方法に基づいて述べられました。勿論、アナフィラキシーを起こす食事はあるがこれはほんのごく一部で、すぐわかる症状だということです。
食事とアトピー性皮膚炎に関連する大矢先生のお話の内容の要点を述べます。妊娠中の食物制限はアトピー性皮膚炎の予防効果は無く、アレルギー検査が陽性になるという意味での感作という点でも予防効果はありません。更に、生まれた子供の平均の体重は100g少なかったそうです。授乳中の母親の食物制限もアトピー性皮膚炎発症予防効果はありません。衝撃的だったのは、授乳中の母親の食事制限が子供のアトピー性皮膚炎の予防に有効であると述べられていた有名な論文がねつ造(嘘)だったことでした。牛乳や離乳食を開始する時期や母乳をあげている期間の違いは2歳での抗原感作率に影響がありませんでした。驚きの話のもう一つは、離乳食を開始する時期が遅いほど2歳でのアトピー性皮膚炎が多かったということです。
私は以前よりアトピー性皮膚炎の悪化に食事アレルギーはほとんど関係がないので、アナフィラキシーを示す食事以外は制限する必要がないと訴えてきました。大矢先生は小児科医ですので、今後食事制限をしなくなる小児科医は増えていくでしょう。このことは、アトピー性皮膚炎の治療における大きな転換点になると考えます。保育所や幼稚園、小学校などでの食事制限が早くなくなることを願います。アトピー性皮膚炎治療上の二つの大問題のうちの一つが解決されていくかもしれません。早くこの考え方が拡がることが望まれます。もう一つの問題点はステロイドとプロトピックの外用です。これについても何とかしなければなりません。
NHKテレビが2009年9月5日午後9時にアトピー性皮膚炎について放送しました(すくすく子育て、アトピー性皮膚炎とのつきあい方)。どこかの小児科の先生が解説されてました。原因はアレルギーとバリア機能異常で、食事アレルギーとアトピー性皮膚炎は重複して罹患している患者もいるが一部であると言われてました。ここまでは当たり障りのない話でした。食事アレルギーを強調されなかったのは良かったかな、と思います。治療になると突然変わり、ステロイドを上手に塗れば何ら怖くない、このように、はじめはきっちり良くなるまで塗って、よくなれば間をあけて塗ればよい。怖がって症状が治まらない間に止めるからうまく治療できないのです。そして、体をきれいにするために一日に2-3回石鹸でしっかり洗って、その後でしっかり保湿剤を塗ればよろしい。そうすればここに出ていただいている患者さんのようにこんなにきれいになります、とのことでした。
患者さんの皮膚をよく見ると、かすかに委縮が認められました。また、ステロイドをつけて起こってくるピンク色の白色皮膚描記症が額に見られました。ああ、この子はこの後どうなるのかな、と大変かわいそうに思いました。
脱ステロイドについて皮膚科学会のお偉方はエビデンスがないとしばしば批判されておられますが、先日、2008年に皮膚科学会から出された「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を見ますと、「その他の特殊な治療法については、一部の施設でその有効性が強調されているのみであり、科学的に有効性が証明されていないものが多く、−−−その健康被害の面に留意すべきである」と述べ、直接脱ステロイドとは言わずに婉曲に責任を追及されないように脱ステロイド療法を批判されてます。それではこのNHKで推奨されているステロイド外用剤はどうかと見てみると、「現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に沈静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏である。」と有効でかつ安全であると言いきっています。科学者なら誰でも「ではどのエビデンスで?」と思うでありましょう。私も引用文献を探しました。しかし、まったく引用されていませんでした。ということは有効性と安全性を証明する根拠エビデンスはないということです。自信を持って述べている内容を証明する文献がないのです。私はやはり私が考えていたことが当たっていたと自信を深めるとともに、学者としては「こんな学問的に恥ずかしいガイドラインを皮膚科学会は作らないでほしい」と強く思うとともに、皮膚科学会会員の一員として悲しくなりました。
話を小児科の先生に戻しますが、小児科の先生方は自分たちがステロイドで治療した患者が20年後にどのようになっているかはほとんど知る方法がないと思います。皮膚科医はそれを見ています。小児期に「ごく軽いアトピー性皮膚炎だからステロイドを塗っても将来大丈夫」と太鼓判を押されてステロイドを塗った人が大人になって全身真っ赤なステロイド依存症になって苦しんでおられるのです。子供のアトピー性皮膚炎を治療するお医者さんはまずはステロイドを使わないで治療をするように努めていただければありがたいです。
湿疹のあるお子さんをお持ちの親御さんは、まずステロイドを使わずに治療していただくようにお医者さんにお願いしましょう。その時には、このブログの2009年6月6日の(患者から提出するアトピー性皮膚炎治療のインフォームドコンセント)を利用してください。これをコピーして診察の前に医師と看護師に必ず見せてください。最近、お医者さんには話をしても、処置室へ行くと看護師さんが問答無用でステロイドを塗られているという話をしばしば聞くようになりました。ぜひ自分たちの納得のいく治療をしていただけるようにしましょう。そのためには少しの勇気が必要です。ステロイド外用薬の有効性と安全性は特に長期にわたる外用についての根拠はないのです。短期間できれいになることの誘惑に負けないようにしましょう。
そうそう、NHKテレビすくすく子育て、アトピー性皮膚炎とのつきあい方に出ていた男性俳優ショウエイさんの表情が大変気になっていました。お医者さんのお話に相槌を打っておられましたが、常に何かに遠慮するような何かを気にしているような表情でした。この男性俳優さんは本当のところを御存知なのかもしれません。真実を覆い隠すための放送にはやはり問題を感じておられるのでしょう。私の受け取り方は間違っているでしょうか。
皆様
元国立名古屋病院皮膚科の深谷元継先生が脱ステロイドについて活動を再開されました。下記のサイトでブログを出されてます。少し難しい内容ですが、一度ご覧ください。深谷先生が再び脱ステロイドに関心を持たれたことは、私にとっては大変うれしいことです。
http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/
佐藤健二

