脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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皆様

深谷先生の英語論文がインターネットに掲載されました。題は
「アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用剤依存」
「Topical steroid addiction in atopic dermatitis」
という題で
共著者と雑誌名は
Fukaya M, Sato K, Sato M, Kimata H, Fujisawa S, Dozono H, Yoshizawa J, Minaguchi S
Drug, Healthcare and Patient Safety 2014; 6: 131-138
です。
原文は
http://www.dovepress.com/articles.php?article_id=18757
で見ることができます。
深谷先生が自分で和訳されたものは
「http://steroid-withdrawal.weebly.com/123001245012488125001254024615303823317828814123951236212369124271247312486125251245212489228062999221092203812338412301.html」
で見ることができます。

さらに米国皮膚科学会のガイドライン作成時の内輪話が、
http://steroid-withdrawal.weebly.com/
で読めます。
ステロイド依存について記述するかどうかで相当もめた様子が分かります。やはり、患者団体が意見を言うと相当効果があるようです。
がんばって脱ステロイド運動を続けなければと思いました。

 「大人になっても治らないアトピー性皮膚炎」というアトピーについての恐怖感が世間には蔓延している。しかし、アトピー性皮膚炎は、ステロイドのない時代には、患者の84%が大人になるまでに治癒していた。したがって別に恐れる必要の無い病気である。
 現在、アトピー性皮膚炎で問題になっていることは、発生率の増加ではなくて、アトピー性皮膚炎が治らなくなって、青年や成人で増加していることである。この増加は、ステロイド外用および最近ではプロトピックやネオーラルという免疫抑制剤の使用によるものである。この報道や研究内容には、アトピー性皮膚炎でのステロイドや免疫抑制剤の問題点から人々の目をそらすことが大きな隠れた目的としてあることは間違いない。勿論、企業の営利目的の治療研究であるのは言うまでもないが。
 研究では、生後一週間未満の赤ちゃんに8ヶ月もの間毎日1回以上保湿剤を全身に塗らせている。この時期、赤ちゃんの皮膚は自然環境に慣れる訓練をしている非常に重要な時期である。その時期にまったく人工的な保湿剤を皮膚に外用し、正常でない環境を作らせている。このように考えるのは以下の経験があるからである。
 父親自身がアトピー性皮膚炎で、その父親が自分の子どもにはアトピー性皮膚炎に罹患してほしくない一心で生下時から数ヶ月間毎日ワセリンをわが子に塗っていた。その子どもを私は診察した。その子どもの皮膚は、病的な光沢を持った角化の強い異常な皮膚であった。外用を中止すると正常な皮膚に戻った。赤ちゃんの皮膚に毎日不自然なことをすることの危険性を実感した経験である。
 報道された内容では、皮膚の発育にとって不自然な環境を作る危険性を含むものであることが検討されたかどうか不明である。もし検討されていたなら、このような研究計画は立てられなかったであろう。大変問題のある研究内容であるし、結論についての広報はアトピー性皮膚炎での混乱に拍車をかけるものである。
 なお、予防を行ってもアトピー性皮膚炎は発症している。この研究者たちは、発症した子どもたちをプロアクティブ治療でステロイド漬けにする。そして、現在のアトピー性皮膚炎の問題を再生産させる。根本的な解決から遠のくばかりである。このような研究者たちがいる限り、先は暗い。

アトピー性皮膚炎にリンデロンを塗ると皮膚バリア機能が低下する、という内容の論文が出ています。

Danby SG et al
Br J Dermatol 2014; 170: 914-21
The effect of tacrolimus compared with betamethasone valerate on the skin barrir in volunteers with quiescent atopic dermatitis

【結果の簡単な説明】
6ヶ月間症状の出ていないアトピー性皮膚炎の皮膚に吉草酸ベタメタゾン(リンデロンのこと)を4週間外用したら、皮膚のバリア機能が低下した。タクロリムス(プロトピックのこと)ではバリア機能が改善していた。

【佐藤のコメント】
標準治療を行う医師は、「アトピー性皮膚炎患者にステロイドを塗らないと、皮膚バリア機能が低下してアレルギーマーチが進む」、としばしば患者さんに説明する。しかし、ステロイドを塗ったらバリア機能が低下するならステロイドを塗ってもバリア機能の低下が進むことになり、前述の説明はできなくなる。
 プロトピックについては、皮膚バリア機構の問題よりもっと大きな問題があるので、この結果から安全だから使いなさいと言うわけには行かない。

皆様

毎日新聞に安藤直子さんの体験談や著書の説明などが連載されています。ぜひお読みください。そして、標準治療でこれほど困っている人間がいることを示すために、毎日新聞に対して、安藤さんの記事について意見や感想を送ってくださればありがたいです。
安藤さんの記事は以下で読めます。「生ける物語:届け1000人の声」の欄です。
http://mainichi.jp/search/index.html?q=%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B%E7%89%A9%E8%AA%9E&r=reflink
またご意見感想は下記にお送りください。
「意見や感想、病気にまつわる体験談を募集しています。〒100?8051毎日新聞科学環境部(住所不要)「生きる物語」係。メールtky.science@mainichi.co.jp。ファクス03・3212・0768」

 私は以下のメールを送っておきました。

毎日新聞 大場あい 様

 私は、大阪府松原市にある阪南中央病院皮膚科で働いている皮膚科医です。以前、安藤様の調査に協力させていただきました。その頃も行っておりましたが、現在でも毎日20名を超える脱ステロイド・脱保湿を希望される入院患者さんの治療をしております。最近も、入院されておられたある患者さんが、「何十年間もステロイド外用剤や保湿剤を塗り続けてきたが、すべての外用剤を中止したら一カ月で良くなってしまった。いったいこの何十年間の治療は何だったのか?」と憤りとあきらめの混ざった口調で述べられておられました。
 最近、多くのマスメディアが、「アトピー性皮膚炎に対する標準治療はよく効いて、医師の指示に従っておれば全く問題は起こらない」旨の宣伝ばかりをしています。しかし、現実には、上記のようなことや安藤さんの記事にあることが広範に起こっています。赤ちゃんや子どもに対する、標準治療を超えるような大量のステロイド外用治療を勧める説には大変な危機感さえ感じます。毎日新聞が掲載している安藤さんの記事は、日本皮膚科学会や製薬企業からは好まれない記事ですが、真実を伝えることがマスメディアの倫理規範ではないかという考えからは、全く勇気あるいい記事のように思います。ぜひこのような真実を伝える記事を多く掲載していただくことをお願いいたします。

佐藤健二

妊婦のステロイド外用が胎児に及ぼす影響

 妊娠中のステロイド外用による胎児への影響についての総説論文が出ました。以下の論文です。
「妊娠中の外用ステロイドについての証拠に基づいたガイドライン Evidence-based (S3) guideline on topical corticosteroids in pregnancy Chi CC et al, British Journal of Dermatology 2011; 165: 943-952」
 注意すべき内容をお知らせいたします。イギリスでの調査では、次のことが行われました。最終生理の85日前から出産あるいは胎児死亡までの間中ステロイドが処方された妊婦とステロイドを使用していなかった妊婦の二つのグループの妊婦から生まれた子供について比較しています。結果は次の通りです。強力なステロイドを外用すると胎児の成長抑制が起こるが、弱いステロイドでは起こらなかった。胎児の口唇顔面裂や早産、胎児死亡は起こらなかった。デンマークでの調査では、妊娠前から妊娠初期3ヶ月の間にステロイドを処方された妊婦とステロイドを外用していない妊婦で比較しています。ステロイド外用と口蓋裂単独との間で相関は無かったが、口唇裂単独か口唇裂に口蓋裂を加えたものについては軽い相関が認められた。しかし、容量・反応関係とステロイド強度・反応関係からみるとこの関係は不確かであった。
 イギリスの調査で問題となるステロイドの強さについては次のように弱いものと強いものとに分類されています。日本で発売されているステロイドのみを記します。一覧表の左側の濃度はChiさんが記したもの(外国では、日本と商品名は同じでも濃度が色々違うのが販売されている)で、右側は日本で発売されている濃度です。

ステロイドの強さ  Chi氏の濃度%   日本での市販濃度%
弱いもの
 アルメタ————-0.05——————0.1
 リンデロン———–0.025—————-0.12
 キンダベート——–0.065 ————— 0.05
 フルコート———–0.00625————-0.025
強いもの
 リンデロンDP ——0.05-0.064——— 0.064
 リンデロンV——–0.1-0.12 ————-0.12
 デルモベート——-0.05——————0.05
 ネリゾナ———–0.1-0.3 —————0.1
 フルコート———0.025—————–0.025
 トプシム———–0.05——————0.05
 ロコイド————0.1——————–0.1
 フルメタ———–0.1———————0.1
 ケナコルトA——-0.1——————–0.1
処方された薬の量が増えると胎児の成長抑制が起こる危険が更に高くなることも認められています。

 胎盤でのステロイドの不活化率と胎児への移行率も記されています。胎盤では11β水酸化ステロイド脱水素酵素によってステロイドの作用が不活化されます。研究結果のあるもののみが表示されています。ヒドロコルチゾン(コーチゾール)が生体のステロイドで不活化されてコルチゾンになります。
                不活化率%      胎盤通過率%
プレドニゾロン————————————–10-12
ヒドロコルチゾン————–85——————-15
ベタメタゾン—————————————–28-33
メチルプルドニゾロン——————————-44.6
デキサメタゾン————————————-67
フルチカゾン——————0
      
佐藤のコメント
 弱いステロイドで薄めずに外用して体重増加抑制の認められなかったのはキンダベートだけです。アルメタは2倍、フルコートは4倍、リンデロンは5倍に薄めたもので初めて体重増加抑制が認められなくなっています。弱いと思われているロコイドやケナコルトAでも体重増加抑制が認められています。また、日本では、ロコイドやケナコルトAはキンダベートと同じⅣ群のマイルド群に分類されているので、キンダベートでも起こる可能性はあると考えるべきでしょう。従って、胎児の体重増加抑制を起こさせないためには、やはりステロイドを外用しない方が良いと言うべきでしょう。
 生体のステロイドであるヒドロコルチゾンでも胎盤で85%も不活化されるようになっていることは、胎盤がステロイドが大量に胎児に届くことを阻止し、胎児を保護していると考えられます。ベタメタゾンはリンデロンですが、かなりの率で胎盤を通過しています。合成ステロイドはヒドロコルチゾンよりかなり作用は強いので問題が起こっている可能性があります。デンマークの結果がそれを示していると考えるべきでしょう。喘息予防のステロイド吸入薬であるフルチカゾン(商品名フルタイド)は全身的にも吸収することは分かっていますし胎盤を通過することも分かっています。フルチカゾンが胎盤を通過した後全く不活化されないことは今後大きな問題を起こす可能性があります。要注意です。