脱ステロイド、脱保湿、脱プロトピック療法 を行っている佐藤健二先生のブログ
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Author Archives: 佐藤 健二

TSWの承認

11月 28th, 2025 | Posted by 佐藤 健二 in 医学論文 - (0 Comments)

アメリカの研究皮膚科学会誌は外用ステロイド離脱(TSW: topical steroid withdrawal)の症状がアトピー性皮膚炎とは独立した病気であることを認めた論文(①)を掲載した。この論文についての要約的コメント(②)も載せた。

  • Shobnam N et al

Topical Steroid Withdrawal Is a Targetable Excess of Mitochondrial NAD+

J Invest Dermatol 2025, 145(8): 1953-1968

(TSWはミトコンドリアNAD+の、治療標的としうる病的上昇である。)

  • Parisut Kimkool & Helen Brough

Topical Steroid Withdrawal: Addressing a Controversial Dermatological Condition

J Invest Dermatol 2025; 45(8):1829-1830

(TSW:異論のある皮膚科学上の病状に答えて)

その内容の重要な点につき簡単に示すとともにその問題点について紹介する。

 

【両論文の意見の対立】

アトピー性皮膚炎患者が長期にわたってステロイド外用治療を行なっている状態で、何らかの理由でステロイド外用を中止した時に生ずる激しい症状、あるいはステロイド外用をそれまでと同じように続けているにもかかわらず外用ステロイドの強度を上げなければならない,外用量を増やさなければならない,外用頻度を上げなければならないと考える悪化状態を、ほとんどの医師は外用ステロイドの副作用ではなくアトピー性皮膚炎の悪化と評価しステロイド治療の増強の必要を主張する。一方、患者は、そのような状態をアトピー性皮膚炎の悪化ではなく外用ステロイド離脱症状(TSW: Topical Steroid Withdrawal)という外用ステロイドの副作用でありステロイド治療を中止する必要があると訴える。このような意見の対立は長く続き、確実な研究による解決が求められていた。この対立に対して一つの答えが出された。TSWがアトピー性皮膚炎とは独立した病的状態であることが①の論文で示された。

 

【重要な点】

最も重要な点は、生化学的、分子生物学的などの色々な研究手法によりTSWがアトピー性皮膚炎とは異なる異常を持っていることを示したことである。TSWは、全身的な脂質調節不全とミトコンドリア複合体Ⅰの機能亢進によるNAD+産生過多という点でアトピー性皮膚炎とは異なっていた。また、治療としてもミトコンドリアの機能亢進はメトホルミン(ビグアナイド系血糖降下剤)とベルベリンで改善させることができる可能性を示した。

 

【調べたのは保湿依存】

ステロイドに関しては、健常人に短時間外用したときの変化を見ているがこれでは不十分である。患者での検査は難しいが、a)長期にわたってステロイドを外用した皮膚、b)ステロイドと保湿剤を中止した一週間後の激しい離脱症状の出現している皮膚、c)外用中止3か月後の症状が安定した皮膚を調べる必要がある。

外用ステロイドが皮膚に残る量は、ネズミでの実験ではあるが、4日で概ね1/10の濃度に低下する。従って、ステロイド離脱後4ヶ月であれば皮膚には外用ステロイドは無いと考えられる。TSWがあると訴え皮膚を研究に提供した患者は、少なくともステロイド外用中止後4か月以上、平均47ヶ月過ぎている。そしておそらく保湿を行なっているであろうから、調べた皮膚はTSWの一症状である保湿依存症の状態を調べたことになると考えられる。TSWの検討は上記a)~c)の3段階につき①論文で行われたのと同じように広範になされるべきだがACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、コルチゾールと外用ステロイドの皮膚内濃度変化が含まれなければならない。人間で行なうのが困難であればネズミで行なうことは可能であろう。

 

【海外でのTSWという言葉の意味】

外用ステロイド離脱という言葉を使うならばそれが表現する現象は、外用ステロイド依存症下でステロイドの中止時に生ずる症状に限定すべきである。言葉を変えるなら、「外用ステロイド依存症」であろう。その内容を以下に述べる。

 

【外用ステロイド依存症とは】

1.離脱症状。外用を中止すると出現する症状で多くは激しい。外用ステロイドにより皮膚でのステロイド合成が減弱~停止によって起こると考えられる。

2.効果減弱反応。継続して同じように外用していても症状が強くなり薬の効果が減弱していく状態。ステロイド外用による皮膚での外用ステロイド代謝亢進により、その効果が弱くなる現象。

3.保湿依存。ステロイドを止めても保湿継続の場合は何時までも炎症が軽減しない状態。メカニズムは不明。

4.無外用部反応。外用中止時、無外用部にも皮疹が新たに出現。メカニズムは不明。

5.自然治癒の機構の阻害。メカニズムは不明。

 

【TSWの治療と予防】

論文①で、ミトコンドリア複合体Ⅰの機能亢進が臨床症状に関連しているとの事実から、TSWと言われている症状の軽減のためには複合体Ⅰの抑制物による治療を提案し、実験し、改善を認めている。この研究活動に異議を挟むものでは無いが、少なくともTSWを生じさせないために何をすべきかは提案すべきである。すなわち、アトピー性皮膚炎の治療に安易にステロイド外用を始めるのではなく、可能な限りステロイドを使わない治療を行う事である。また保湿依存に対しては脱保湿療法も考慮に入れるべきである。

 

【提案された診断基準】

コメント論文②は、今後の研究の発展にはTSWの明確な診断基準の確立が必要であると述べている。論文①で示されている診断基準は次の通りである。

 

Major Criteria                                 主診断基準

 

Burning                                           熱感

Flushing                                          潮紅

Thermodysregulation                     体温調節不良

 

 

Minor Criteria                                副診断基準

 

Bone deep itch                                骨深そう痒

Profuse peeling                               多量落屑

Red sleeves                                     赤袖

Loose skin                                       弛緩皮膚

Hair loss                                          脱毛

Gingers                                           刺しこむような痛み

Lymph nodes                                   リンパ節腫脹

Swelling                                           浮腫

Eye dryness                                     眼の乾燥

 

主診断基準が一つ以上に加えて副診断基準が三つ以上有れば、TSWを持っているといった人々の90%以上が含まれるとのことである。研究対象として登録された人々は全身に皮疹のある人々である。このことが原因で上記の診断基準で90%以上の感度(Sensitivity)で患者を選別できたのであろうが、臨床の場では部分的な皮疹しか持たない人々でもTSWは存在している。又、診断基準による感度は示されているが、特異度(Specificity)は示されていない。臨床症状で区別しようとすると特異度はおそらく低いであろう。従って、検査データでのそれも侵襲の少ない検査で得られるデータで鑑別できるようになるのが望ましい。

 

【今後の検討課題】

・外用ステロイド依存時に外用ステロイドを中止した場合の外用皮膚局所でのコルチゾール産生と副腎でのコルチゾール産生の相互連絡機構の有無。

・外用部位以外にもステロイド離脱症状を起こさせる情報伝達系の解明。

・自然治癒機構。

・外用ステロイドの作用は対象の年代によって違いはあるか

皮疹出現の多い時期(2歳未満):2歳までに概ね治ると言われる湿疹の出現と悪化の時期にステロイドの外用をする場合

皮疹出現が減少していく時期(2歳以降):2歳以降に残る湿疹に対するステロイドの作用

 

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新人研修会での脱ステ講演

5月 21st, 2025 | Posted by 佐藤 健二 in 阪南中央病院 - (0 Comments)
今日、5/21、阪南中央病院の新人研修会で、「当院のステロイドを使用しないアトピー性皮膚炎治療」を話しました。20人ほどの参加です。1時間ぶっ通しの講演でしたが眠っている人はほとんどなく、こまめにノートを取ってくれていました。話の後、質問は無いかなと思っていたのですが、二人も質問がありました。虫刺されの場合、薬局や診療所を訪れると直ぐステロイドを出されるがステロイドの使いすぎではないかとの質問でした。私は全くその通りと思いその意見に賛同しました。もう一つは脱ステロイド後の保湿は本当に危険なのかとの質問でした。ステロイド使用経験者は、脱ステ後、保湿の種類如何にかかわらず保湿をすることは危険を伴うことを伝えました。何かの機会に一日だけ化粧をするのはなんとか安全なようですが、連日となると危険なことを何回も経験していると答えました。
 このように反応があるとうれしく、今後も頑張れと励まされた感じがし、気持ちが引き締まりました。

マスメディアとステロイド軟膏宣伝

12月 30th, 2024 | Posted by 佐藤 健二 in 未分類 - (10 Comments)
昨日(2024.12.03)毎日新聞朝刊の12頁に、一面全体を使って新リビメックス軟膏、クリーム、ローション(医療用のリドメックスと同じ薬剤)が大々的に宣伝された。初めて医療用と同じ濃度のものがドラッグストア、薬局、薬店などで医師の処方箋無しに購入できるようになった、と。そして「患部へのしっかりとした効き目と、安全性の両立を考えて設計」されたものと謳っている。副作用については「体内に吸収された後、低活性体になるため、全身作用がでにくい」と言って副腎機能抑制は出にくいことを言おうとしている。
 現在皮膚科治療で問題になっているステロイド外用剤の副作用は、皮膚から吸収されて全身的に働く作用ではない。ステロイドを作る皮膚の機構が外用ステロイドによって抑制される副作用によって起こっている。外用ステロイドは皮膚の炎症を抑えるが、同時に皮膚でのステロイドホルモン産生を抑制する。長期にわたる後者の働きで皮膚がステロイド産生を止めてしまい、外用ステロイドがなくなると皮膚にはステロイドがなくなり、強いストレスが起こり、皮膚が悪化する。この悪化を防ぐためにステロイド外用が止められなくなる。この副作用、ステロイド依存性皮膚症についてはなにも記載していない。
 最近テレビでもフルコートやリンデロン等のステロイド外用剤の宣伝が多くなっている。医師の処方箋無しに市販薬として自由に購入できるため、副作用の発見が遅れることになる。ステロイド依存性皮膚症の増加が心配である。
すべてのリアクション:

佐藤 みわ、Tokuko Kameda、他50人

化粧とステロイド軟膏

12月 30th, 2024 | Posted by 佐藤 健二 in 新聞・テレビ - (0 Comments)
1970年代の終わり頃に事件がありました。ステロイドを顔に塗ると皮膚の表面がツルツルになり化粧ののりが良いということで、顔にステロイドを塗ることが流行りました。しかし、何かの理由でステロイドを塗らなくなると激しい皮膚の悪化が起こりました。日本皮膚科学会は、このような間違ったステロイドの使用に警鐘を鳴らしました。
 市販のステロイドがマスメディアで頻回に宣伝されると同じことが起こる可能性が出てきます。ステロイドの使用については注意が必要であることを「使用上の注意をよく読んでお使いください」と述べるだけでなく、製薬企業は宣伝と同じ紙面で上記のような事実のあることを注意書きとして記すべきです。
 顔面へのステロイド剤の不適切な使用で悪化した症状を「しゅさ様皮膚炎」と命名して学会も認めています。顔に起こっていることは体でも起こっています。それがステロイド依存性皮膚症です。注意が必要です。

児童相談所の皆様

12月 30th, 2024 | Posted by 佐藤 健二 in 阪南中央病院 - (0 Comments)
児童相談所の皆様
ステロイドを使わない治療(非ステ治療)をして皮膚が悪化しているアトピー性皮膚炎の赤ちゃんを見ても、虐待と思わないでください。非ステ治療を望む親は次のことを知っているのです。現在のアトピー性皮膚炎の患者増は、本来、自然に治るアトピー性皮膚炎をステロイドで治療することによってステロイド依存性皮膚症(酒さ様皮膚炎の全身型ともいえる)を合併するようになり、アトピー性皮膚炎を治らなくすると共にステロイドから逃れられないようにしていることによって起こっていることを。
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」には次の記載がある。①「本ガイドラインに記された医療行為に関する記載は、—、診療の現場での意思決定の際に利用することができる。臨床現場での最終的な判断は、主治医が患者の価値観や治療に対する希望も十分に反映して患者と協働して行わねばならない。」②「本診療ガイドラインは,症例毎の事情を踏まえて行われる医療行為の内容がここに記載されているものと異なることを阻むものではなく、医療者の経験を否定するものでもない。また逆に、本ガイドラインに記載されている内容が実施されないことをもって、実際の診療にあたる医師の責任を追訴する根拠に資するものでもない。本ガイドラインを医事紛争や医療訴訟の資料として用いることは、本来の目的から逸脱するものである。」
 ①の記述は、親が子どもの治療方法を非ステロイドでお願いしたいといったならば医療側はそれに従うことも含まれている。少なくとも一方的に非ステロイド治療を拒否することは正しくないことを表している。問題は、新しくアトピー性皮膚炎の治療を始める医師は、非ステロイド治療や脱ステロイド治療について学生時代に講義で聞かないし、ガイドラインにも記述されていないため、方法や予後について何も知らない状態で患者と向き合うことになる。例えば以下の文献を参考にガイドラインに記述があれば大変参考になるであろう。その文献は、「<新版>患者に学んだ成人型アトピー治療 難治化アトピー性皮膚炎の脱ステロイド・脱保湿療法、つげ書房新社、2015年」や「ステロイドにNo!を 赤ちゃん・子どものアトピー治療、子どもの未来社、第2版 2019年、佐藤健二 佐藤美津子」、「9割の医者が知らない正しいアトピーの治し方、永岡書店、2013年、藤澤重樹」などである。
 ②の記述は、標準治療をしていないことを湿疹のある赤ちゃんへの養育拒否や虐待との評価の根拠とすべきで無いことも意味している。もし赤ちゃんが幾度も医療機関を受診したにもかかわらず、標準治療以外の治療を受入れてもらえずに酷くなっているなら、批判されるべきは、標準治療でない治療を与えない雰囲気や状況を作り出した要因であり、赤ちゃんの親ではないであろう。ステロイドを使わない治療で良くなった例は数多くインターネット上で示されているので、この事実を無視した過失があるからである。