脱ステ忌避の大きな流れ
2022.12.4
最近目立つ皮膚科関連製薬企業の宣伝は、アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤のオンパレードである。
歴史的に見てみよう。ステロイド外用治療が1954年から始まった。炎症を劇的に軽快させた。更に効果を早めようと作用を強くした製剤が次々と開発された。これでアトピー性皮膚炎の治療は解決すると期待された。しかし、病像が変り、成人期になっても治らない症例が出現増加した。
アトピー性皮膚炎の原因がアレルギーであるとの発想から、外用免疫抑制剤(プロトピック)が開発され、内服免疫抑制剤(ネオーラル)の適応が拡大され、アトピー性皮膚炎でも使用可能となった。しかし、患者の増加は防げず、更に患者が増えた。2007-2008年に実施した日本皮膚科学会の調査では、思春期から壮年にかけて患者が増えている。皮膚科医は、この成人型アトピー性皮膚炎患者の増加が何で起っているかをまず考え無ければならない。そして、その結論に従って、増加を減らすためには何をすべきかについて考えるべきである。
日本皮膚科学会は、患者数増加の原因について、患者が訴える治療薬の副作用原因説(ステロイドが悪化の原因であるとの考え)は全く考慮せず、この考えを聞くことを忌避している。逆に、外用面積に対する外用量をFTU(finger tip unit)に従って外用することと、プロアクチブ治療方法を広めることによってステロイドの外用量を増やすこと勧めている。
ステロイド、免疫抑制剤、保湿剤の外用を中止することによって成人型のアトピー性皮膚炎が消えることは私達が証明している。脱ステロイド・脱保湿療法で成人型アトピー性皮膚炎患者が良くなることを客観的な事実として見ようとせず、忌避し、事実の広まることを妨害している。このようなときに生物学的製剤がアトピー性皮膚炎に対して開発され保険適応となった。
製薬企業は、皮膚科学会の治療方針では今後も患者数が増えることが予想され、新しい発想の治療方針であるため高額商品として販売できると考えており、鎬(しのぎ)を削って開発に邁進している。学会首脳陣は、製薬企業のこの動きに乗り、ステロイド問題を解決できると考え、大々的な宣伝の片棒を担いでいる。ステロイドを止めるために新しい薬を利用することは可能性としてはあり得る。しかし、多くの生物学的製剤の使用にはステロイドや保湿剤との併用が義務づけられている。保険適応になって余り時間は経っていないが、すでに旨く行かないこと(アトピー性皮膚炎患者増加を解決すること)は明らかになり始めている。高額のために治療を続けることが出来ないことや、効果が持続しないことなどである。外用剤については保湿依存の問題を解決することができず、元々効果は余り期待できない。ステロイドや保湿剤の外用を止める治療を含まない治療はステロイド依存の問題と保湿依存の問題に突き当たり旨くいかなくなる。そして、残念だが、今後は重大な副作用の出現が予想される。
世界の皮膚科学会は、脱ステロイド・脱保湿療法を忌避せず直視し、アトピー性皮膚炎の治療を、ステロイドを可能な限り使用しない方法で再構築するべきである。
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